自殺しようとしていたJKを助けたら「結婚してください」と言われ、それから毎晩夜這いに来るようになったのだが...〜最高に重くて最高に可愛いJKと結婚することになりました〜

田中又雄

第1話 美少女JKを助けました

「...はぁ」


 激しい雨の中、大きなため息をつく。


 安月給、激務、サビ残...。

現代にもこんな仕事あるんだなーと感心してしまうほどのブラック企業に勤めていた俺こと、髙橋悠人たかはしゆうとは今日も12時を回った頃に帰宅していた。


 視界が歪んでいるのは雨のせいか。

それとも疲労によるものか。


 新卒からこの会社で働いて5年...、いつまでこんな仕事を続けるのだろう。


 そう思いながら何となく携帯を見る。

【6月15日 0:15】


 6月15日...。

あっ、そうだ...。今日、俺の誕生日じゃん。

子供の頃はプレゼントがもらえるのが嬉しくて、早く大人になりたくて、1歳ずつ歳をとることが嬉しかったのに、今ではワクワクした気持ちもなく、むしろ自分が老いて行くように感じるだけの、ただの平日と化していた。


 ...明日から3連休みだし、少しぐらい豪遊するか。


 そんなことを思いながら、近くのコンビニに向かう。


 小さなケーキと缶チューハイを購入しようとしたが、急に尿意を催したため、トイレに入る。


 そうして、小便を終え手を洗い、顔を上げるとそこにはまるで死んでいるような顔をしていた自分が鏡に写っていた。


「はっ...なんて顔してんだよ」と、俺は俺につぶやいた。


 そのまま、買い物を終えてコンビニを後にした。


 現在住んでいる家は元々祖母の家であり、祖母が亡くなったタイミングでこの近くに就職が決まった俺が代わりに住むことになった。


 平屋の古びた家で、最初こそ古臭い匂いとお化けが出るんじゃないかという恐怖感で、なかなか馴染まない感じがあったが、5年ほど経った現在では案外悪くないかもななんて思っていた。住めば都とはよく言ったもんだ。


 1つ、嫌なことがあるとすれば、この家の裏にある森もおばあちゃんの所有地なのだが、ここが心霊スポット扱いされていることだった。


 実際死んだ人なんていないのに、噂が噂を呼びいつの間にか自殺の名所になっていたのだった。


 死のうとしている人は見たことはないが、不良が入り込んだ時には注意したりしており、今も時折見回りなんかもしていたが、最近は仕事に疲れてそういうこともしていなかった。


 今日だって仕事で疲れていたので、そのまま家に入ろうとしたのだが、なんだか妙な胸騒ぎというか嫌な第六感が働いたため、一旦荷物を置いたのち、懐中電灯を片手に裏山をちらっと見に行ったのだった。


 傘を差しながら見回りをする。何もなければすぐに帰ろうと思っていた。

しかし、悪いことにその予感は的中してしまうのだった。


 そこには一人の女子高生がいたのだ。

傘も刺さずにずぶ濡れになっていて、...その右手にはロープが握られていた。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818023213476011368


「お、おい!」と、声をかけるとその子は虚ろな目でこちらを見た。


 そのまま急いで彼女の元に駆けつけ、手に持っていたロープを奪い取る。


「こ、こんなことで何してんの!」


「...死のうとしてました」と、全身びしょ濡れのJKはポツリとつぶやいた。


「死のうって...ちょっと待って。とりあえず警察に連絡するから。それから親御さんにも「やめてください」と、小さくつぶやく。


「やめてくださいって...ここ一応、俺の所有地なんだが」


「...わかりました。別のところならいいんですよね」と、ロープを奪い取り立ち去ろうとする彼女。


「そういうことじゃねっての!死のうとするとか間違ってんだろ!」と、その手を引っ張る。


「間違ってる?何がですか?」


「死ぬって...生きていれば「生きていればきっといいことがあるなんてそんなの今が幸せなやつの妄言です。...今が辛いならこの先はもっと辛いです」


「そんなの...分からないだろ」


「分かりますよ。もう18年生きてきて、地獄の毎日を送ってきたのに何も改善していないこの現状で、この先の60年が幸せになるなんて、そんな能天気な人生ではなかったんです。...私は誰にも必要とされない。...生きている意味も価値もないですから」


 この子はまるで...。

だったら、今必要な言葉は。


「俺が必要としてやる。それでいいだろ!」


 少し驚いた表情をするが、「綺麗事は結構です。私のことなんて誰も必要としませんから」と、冷たく突き放される。


「...そんなことないって」


「...もういいです」と、数歩歩いたところで彼女はぬかるんだ地面に足を取られ、そのまま倒れてしまう。


「ったく...何してんだよ!」と、その腕を引っ張ると...その腕には無数の傷跡...があった。


 リストカットだけじゃない...。


 それだけで彼女の生きてきた壮絶な人生の一端を垣間見ることが出来た。


「はぁっ、はぁ...」


 それに...熱を帯びたその腕...。

おでこに手を当てるとあまりの熱さに思わず手を放してしまう。


 すでに抵抗する力もなくなった彼女をおんぶして、なんとか森の中を歩いて自宅に連れて帰る。


 救急車を呼ぼうか迷ったが、それは恐らくダメなことだと悟る。

だって元気になればきっと彼女は家に帰される...そうしたら...。


 とりあえず、一旦彼女を寝室に連れていく。


 全身がずぶぬれになっている彼女...。

着替えさせないとダメ...だよな。

彼女いない歴=年齢の俺はゆっくりと彼女のYシャツのボタンを一つ一つ外していく。

この時、10連勤後とは思えないほど頭が覚醒していた。


 そのままなんとか、服とスカートと靴下を脱がし、俺のTシャツと短パンを履かせることに成功した。

(流石にパンツとブラジャーはそのままにしておいた)

手術終わりの医者ぐらい疲れた気がした。


 しかし、そこで俺は見てしまった。

彼女の傷は...腕だけでなかった。

全身にありとあらゆる傷ができていた。


 それから、震える彼女に布団を被せ、おでこに冷たいタオルを置いて、俺の布団に寝かせた。


 そうして、俺は風呂に入ることにした。


 あー、どうすんだよ...。

これがバレたら...俺会社クビになるんかな。

未成年誘拐?いや、事情を話せば。

いや、いっそくクビなればそれもありか...ってよくないよくない。

クビっていうか、前科持ちになるし。


 そんなことを考えながら風呂を上がり、一旦あの子の様子を見にいくと、スヤスヤと眠っていた。

もう一度おでこのタオルを変える。


 とりあえず、風邪薬とかは家にあるし、朝イチでお粥食べさせて...。

この後のことは一旦元気になった後に考えよう。と、疲労がピークに達していたこともあり、俺は一度も使ったことのなかった来客用の布団を敷いてそのまま彼女の横で眠るのだった。



 ◇6月15日(土) AM6:15


 何時に寝てもこの時間に起きてしまう。

どうやらいつの間にか社畜の鏡のような体にされてしまっていた。


 目を開けるとそこには知らない女の子が眠っていた。


 あぁ、そうだ。昨日この子をお持ち帰りして...。お持ち帰りしちゃったんだ!!と、冷静に焦り始める。


 すると、彼女もゆっくりと目を覚ます。


「あっ、体調...大丈夫?」と、声をかける。


「...なんで...」


「とりあえず、話はゆっくり聞かせてもらうから。一旦ご飯を食べて薬を飲もう。お粥なら食べれそう?」


「...はい。ありがとう...ございます」


「とりあえず横になってて。あと、水とかお茶も飲まないとな」と、そのまま起き上がり、お粥を作る。

お粥を食べて薬を飲むと彼女はまた眠るのだった。


 さて...どうしたものか。

社会人になって初めての3連休がまさかこんなスタートで迎えるとは微塵も思っていなかった。


 それから家の掃除をし、洗濯物をやり、ボッーとテレビを眺めたのちに、「ちょっと買い物に行ってくるね」とあの子に伝えて家を出た。


 それから、食べ物などを買い込んで帰宅。


「...なんとか購入完了」


 そうして、家に到着する頃には13時を回っていた。

彼女のことだからもしかしたら勝手にどこか行っていないかと不安になったが、寝室を覗くと横になっていたちゃんとそこに彼女はいた。


「お腹減ってるでしょ?」


「...大丈夫です」


「大丈夫ってことはないでしょ?ゼリーとか食べやすいもの買ってきたんだけど...何か食べたいものある?」


「...昨日の...お粥...食べたいです。すごく美味しかったので」


「お、おう。分かった」と、またしてもお粥を作り、一緒にゼリーを持って寝室に向かう。


「...ありがとうございます。お礼は...ちゃんと体で支払います」


「いや、そういうのいいから」


「...でもそれじゃないと...私には返せるものはありませんから...それに...お兄さんにならあげてもいいと思ってるんです...。私の初めて...」


「そもそも俺そういうのしたことないし...、俺はそういうのは好きな人としたいんだよ」


「...じゃあ、私を好きになってください...できれば結婚してください...。そうすればいいですよね?」


「...いや、結婚って...」


「冗談です...。元気になったら...すぐ出ていきますから。今度は迷惑がかからない場所で...」と、あきらめたようにつぶやく。


 彼女を必要だというあの言葉...。

きっと、彼女はそこに救いを求めたはずだ。

だったらその言葉の責任を取るべきだろう。


「わかった」


「...何がですか?」


「じゃあ、俺と結婚してくれ」


「...はい?」


 こうして、俺は出会ったばかりのJKにプロポーズしたのだった。

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