第18話 色づく街の片隅で

 彩は最近、父親のカメラを首から掛け、手当たり次第に街の何気ない風景を撮影していた。出かける時にはほぼ必ず、カメラを持って出かける為、友達からは「カメラマンのAya」と呼ばれる様になった。

 撮影したフィルムは現像せず、撮り溜めて一気に処理するつもりで居る。近くに現像を頼めるところがない為、まとめて、D.P.Eショップに送っている。そのため、仕上がって来るまで出来映えが判らない。しかし、それも楽しみの内の一つである。たまに、自分で撮影した写真ですら、どこで撮ったのか忘れてしまって居たりもするが、それはそれで楽しい。今は未だ、カメラに慣れる意味で、手当たり次第に自己流で撮影している。多少、ネットで撮影技術的な情報を漁り、らしい事をして居るが、それで良いと考えている。1年の留学期間の後半で、写真の技術を学べる学校にも行ってみようと考えているが、まだ、その勇気が出ないでいるのも事実だ。

 将来は、フィルムも写真も自分で現像できる様になりたいと考えているので、技術を学ぶ事は必須なのだ。

 街中で彩とマリーに出会ったジェイムスは、一緒に座ってもいい?と聞いてきた。

二人とも顔を見合わせ、いいよ。と返事をすると、ジェイムスとロバートは向かい側の椅子に腰掛け、同じ様にバーガーを注文した。突然、街中のカフェの店先が4人のための空間になり盛り上がった。教室にいる時のジェイムスとロバートとは雰囲気が違い、別の表情を見せる。そんな二人を彩はボーッと眺めていた。

「Aya聞いてる?」とジェイムスの声が降ってきた。「えっ?、ごめん聞いてなかった。何?」「だから、Ayaも写真の勉強をしに学校行くんでしょ?、行き先はもう決めたの?」「ううん、未だ。色々悩んでいるんだけど、決めかねている。」

「そうなんだ、良ければ、僕と同じ学校に行かないか?そこには、僕が教わっている先生がいて、とても良くして貰っているんだ。Ayaさえ良ければ紹介するよ?」と言ってくれた。「うん、考えてみる。」と言い、カップに残ったコーヒーを飲んだ。

 偶然は一度だけではない。4人が話をしている脇を早苗が歩いてきた。「えっ?、早苗さん?」すると他の3人も彩の向く方を見る。颯爽とビジネススーツに身を包んだ田口早苗が微笑みながら、こちらに歩いてくる。「Hi、皆さんご機嫌いかが?」と言いながら、立ち止まった。彩は3人に早苗を紹介した。「今私がお世話になっている早苗さん。ずっとこちらでお仕事をしているんです。」と言い早苗に3人のクラスメートたちを紹介した。「マリーにジェイムス、ロバートよ」と言うと早苗は、一人ずつ握手を交わし、よろしくと言った。ここは早苗のオフィスからそれほど離れて居なく、たまにランチに出かけてくる。仕事は休みだったが、ちょっとした残務処理のためオフィスに立ち寄り、遅めのランチを取ろうかと思って、歩いて居る所だった。

「彩、今度よかったらお友達を家に招待したら?」と早苗が言う。「本当?いいの?」と彩は大喜び、3人に向かって「今度私の家に遊びに来て。」と言った。早苗も「皆さん、是非いらしてね。」と柔かに言うとその場を後にした。

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