働かざる者、食うべからず

わたしクラスのシャンプーマンでも生理現象だけはどうしようもない。


 グゥ〜キュ〜とお腹が鳴る。お客様、やっぱり気付いてますよね……お恥ずかしい。


 お昼を食べられないことが多い美容師は、だんだんとお昼を食べなくなるという、言い伝えがあります。


 「食べる暇がないほど忙しい」が「食べなくなる」に変わっていき、最後には「お腹が空かなくなる」らしい。


 わたしは、まだそのレベルに達していないのでお腹が空きます。


 わたしも別に食べなくてもいいんですけど、お腹のほうが、どうしても反応してしまう……ちょうど、お客様の耳元で鳴ってしまうんですよねぇ。


 グゥ〜、あっ!と思って身をかがめると、もっと大きな音が鳴るような……気がする。


 お客様も、こんな時間に来てごめんねぇ、みたいな感じになってしまい、気を遣わせてしまう。


 食べ物の話をしている時に鳴るのも、恥ずかしいんですよね。コイツ、食い意地が張ってんなぁ、ってなるし。


 音の種類によっては、ん?今の音ってオナラじゃないよねぇ?って勘違いされるし、たまに自分でも、これが自分のお腹から鳴っているのか、分からなくなる時もあるし(それはヤバい?どう?)……早く、お昼を食べなくてもいいようにならないとね!


 でも、メンズスタッフの中には、お腹が空くと不機嫌になる人もいる。プロ意識が足らん!と先人たちが言ってたような、言ってなかったような……


 あとチェックお願いしま〜す(可愛らしい声)!……アァ?じゃあこっちの仕上げよろしく……


 ん?なんか「アァ?」の言い方が気になる……


 16時のお客様来られてます、お願いしま〜す(可愛らしい声)!……ハァ?まだ10分前だけど……まぁ、とりあえずお通しして……


 ……いや、言い方!「ハァ?」ってわたしにキレられても……そう、この先輩、お腹が空くとイライラするんです。


 極力、食べてもらいたいが、接客業ではそうも言ってられない。


 わたしは、自分だけ食べるのも申し訳ないので、なるべくこの先輩とともに空腹を過ごします。


 こうやって鍛えられ、いずれお昼を食べずとも過ごせるようになり、1日2食のベテランになるのだろう。


 1日2食って……家畜と一緒じゃね?

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