小瓶一杯の感動を
takechan
小瓶一杯の感動を
「ほらまた嘘ついた」
「馬鹿みたいだ」
「ここいらでやめときゃ楽だな」
そんな言葉で私の小瓶が埋まっていく。
傷つきたくないから。なりたいものなんてないから。やり残したことばかり散らかして。
でも、まだ……まだ……まだ……
「ほらまた嘘ついた」
「馬鹿ばかりだ」
「ここいらでやめときゃ楽でしょ」
そんな言葉を小瓶から振りまいていた。
傷ついてほしくないから。なりたいものには届かないから。やり残したことばかり忘れ去って。
でも、まだ……まだ……まだ……!
もう一度走りだそうと思って、渇いた喉を潤したくて、私の小瓶を覗いたんだ。
からっからだから、ぐびっといっきにいきたくて、でも濁ってたからやめたんだ。
「ほら」
「また」
「もう」
そんな言葉で始まる会話の何が楽しいんだ!
要らないもので、違うもので埋まった小瓶の何が綺麗なんだ!
やり残したことばかり数えて、過行く日々の中に彷徨って、どうしようもない想いと、取り残されていく体。
この小瓶を割ってしまったら、随分楽にはなるんでしょう?
でもこの小瓶が割れてしまったら、新しい中身をいれられない。
この小瓶を取り換えてしまったら、新しい中身は入るでしょう?
でもこの小瓶でなければきっと、私は私ではいられない。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――!!
ひっくり返るまで吐き出してみたら、いつしか底が抜けていた。
でもひっくり返ってみたことで、新しい小瓶になっていた。
蓋を底にした不格好な姿。けれど不思議と笑えたから。
やり残したことを一つずつ追って。なりたい何者かにいつかなる為に。どれより傷つこうとも!
「苦しくなってからが本番だ」
「馬鹿みたいでしょ私」
「もう嘘はつかない」
そんな言葉で小瓶を飾って。
小瓶一杯の感動を takechan @takechantakechan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます