レイン
あたまからから
妹
供養作
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僕は恋なんてしないものだと思っていた。
いや、正確には一度だけしたことがある。それは恋と言っていいものかもわからなかったが。
妹のように思っている人がいた。その人は一つ下の歳で小学校の時からの付き合いだった。プール教室で出会ってから漢検を一緒に受けたり、同じ鍋を囲んだりしているうちにどんどん仲良くなっていた。
『付き合って』
そんな彼女はある日唐突に告白をしてきた。『レイン』というアプリを介していたためそれが本気かどうかわからなかった。小説を読み耽り恋愛に対して何か崇拝するような感情を持っていた僕は浮かれ、気障な返しでOKを出した。出してしまったんだ。
僕は臆病者だ。良くも悪くも、特に悪くも。付き合った妹(だと思っている子。ここでは妹と呼ぶ)との恋愛に対してもそれを遺憾なく発揮した。
『一緒に学校行こうよ!』
『わかった。駄菓子屋の前で別れてもいい?クラスのやつにバレたくないから。』
明らかに返信が遅れた。だが僕は人付き合いがかなり下手だ。そんなこと微塵も気づかない。今思うとそれは彼女の葛藤だったのだろう。それから数分後、
『わかった!じゃ、明日から待ってるね!』
次の日から隠密ミッションが始まった。駄菓子屋の前まで自転車を押す妹と共に当たり障りのない会話をしてから、駄菓子屋で自転車に乗ってもらって僕は一人で歩く。
ただもちろん僕なりに彼女のことを考えてはいた。クリスマスにはイルミネーションを見に行った。そこでは初めて女子と手を繋いだ。帰りには雨が降ったため、相合傘をして帰った。僕はこれ以上なく浮かれ切っていた。
しかし、僕の受験が始まった。ここから僕と妹の関係は冷え切り始める。
しばらくデートには行けず会話をして別れるだけの日々だった。妹はそれでも仕方がないと笑みを浮かべて応援してくれた。それは苦しい日々の助けだった。
だが、畳み掛けるように事は起こる。どこかから僕と妹が付き合っているという事が知られ渡った。
ここで僕は更なるミスを犯した。僕は友達がいた。彼らはいわゆるオタク友達で僕は彼らと過ごす時は何にも変えられないほどには好ましく思っていた。
ここで僕が恐れたのは彼らに知られて糾弾されることだ。彼らはそんな人たちではないと理解していたのにも関わらず恐れ、警戒し、彼女との付き合いがさらに疎遠となった。
『別れよう』
告白は妹だったが離縁も妹から切り出した。
妹は確かに僕のことを好いてくれていたらしい。だけど、僕は妹(のように思っている彼女)を本当の妹のように扱った。手を繋いだし、相合傘だってした。
だけど、ハグ、キスなんてことを出来なかった。そうすると異性として意識してしまう気がしたから。そういったムードは全て誤魔化した。
そこに最近の疎遠だ。一緒に学校へ行こうという誘いも僕の身勝手極まりない恐怖で嘘をついて断り、とうとう別れを切り出してきた。
僕は妹が昔二人好きな人がいると言っていたのを覚えていた。一人は僕で二人目は妹の学年の男の子だった。僕は何一つ勝てていない少年だ。学外サッカーではエースらしく、勉強も推薦を取ろうと頑張っているそうだ。
もし、僕と別れたら妹はその子と付き合うのか?そう考えるとどうにも腹の奥底がムカムカしたが、その時の僕は妹をなにより大事に思っていた。だから大人しく引き下がろうと別れ話を容認した。
彼女は心底愛想を尽かしたのだろうか、レインがブロックされた。
とある情け無い男は失ってから未練が湧き出て数ヶ月はレインを残していたらしい。
僕は失恋からどこか宙をふわふわ浮くような心持ちだった。
勉強も身に付かず、1学期の成績は過去最低だった。結果、去年はAよりのB判定でそのままならば行けていたであろう高校に落ちた。
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