【完結】わたくし、悪役令嬢のはずですわ……よね?〜ヒロインが猫!?本能に負けないで攻略してくださいませ!
碧桜 汐香
第1話 悪役令嬢、前世を思い出す
「ーーー公爵令嬢との婚約を破棄して、ーーー男爵令嬢、ルチアと婚約を結び直すとここに宣言する! なお、ーーー公爵令嬢は国外追放とする」
……夢? 夢にしては、やけに生々しい夢でしたわ。……わたくし、五歳なのに、生々しいなんて言葉……。あれ? いえ、わたくしは、二十五歳のしがない社畜……え?
「あら、お嬢様。今朝はお早いお目覚めですね。ばあやとご一緒にお着替えいたしましょうか?」
「……いつもありがとう」
「まぁまぁ! お嬢様。お礼が言えるなんて、素晴らしいですわよ! 奥様に祝砲をあげるようにお願いいたしましょうね??」
夢の中で、変な映像を見ましたわ。
その映像が一気に頭の中に流れ込んできて、頭がぐわんぐわんしながら目が覚めましたわ。
そうです。わたくし、前世では、二十五歳で死にましたわ。どうしても出勤できなくて、歩道橋から飛び降りてしまおうかと見つめておりましたの。そうしたら、かわいい子猫ちゃんが歩道橋から落ちそうになって、思わず助けようと抱きしめたら、わたくしも落ちていって……。死にましたのね。
その前日に徹夜でクリアした“聖女ルチアの恋愛譚”という乙女ゲーム。これが終わったら、全てを終わらせようと思っておりましたので、前世への未練はごさいませんわ。
それがなぜかそのゲームの世界へ……転生致しましたわ!?
「では、お嬢様の美しいお月様のような金色の御髪をとかしますね」
「……お願いするわ」
「お嬢様……。一晩で、こんなにもご成長なさって……さすが成長期。いや、さすがナリアンヌお嬢様。亡き旦那さまの優秀さをお引き継ぎになられて……ばあやは、感動しております!」
「ナリアンヌ……?」
なにがそこまで? と、思いましたが、感動のあまり大号泣しているばあやの耳には、わたくしの小さな呟きは届きませんでしたわ。
「えぇぇぇぇぇぇー!? 悪役令嬢のナリアンヌ・ハーマート!?」
「どうなさいました!? お嬢様! お嬢様!? だれか!! だれかぁぁぁぁ! 我が家の宝石ナリアンヌさまがぁぁぁぁ!!!」
ばあやのそんな叫び声を尻目に、わたくしは気を失いました。
「お嬢様ぁぁぁ! お嬢様になにかあったら、ばあやは、ばあやは、お医者様! お嬢様はご無事なのですか!???」
「落ち着いてください。大丈夫ですから。ナリアンヌ様は、少し気を失われただけです。病み上がりでいらっしゃるから無理はさせぬように」
「わかりました!!! では、ベッドから一歩も出しませんわ!」
「いや、そこまでは……」
過保護すぎないでしょうか? と思いながら、目を閉じたまま話を聞いていたわたくしは、そーっと目を開きました。
お医者様をぶんぶんと振り回していたばあやと目が合いましたわ。
「まぁ! お嬢様! お嬢様、変なところやおかしいところ、痛いところは、どこにもございませんか!?」
少し目を開いた瞬間、ばあやがお医者様をぶっ飛ばして飛び込んで参りました。
「心配かけてごめんなさい。ばあや」
「な、ナリアンヌお嬢様が、ばあやに謝ってくださいましたわ!? ばあや、このお言葉だけで一生おかずなしで生きて参ることができますわぁぁ!」
「ばあや。健康のためにも、おかずもお食べなさい?」
「お、お、お、お、おおお、お嬢様がぁ! わたくしめの心配をしてくださいましたわぁぁぁ! ばあや、幸せすぎて死んでしまいそうです」
「ばあや、死なないで?」
「うぉぉぉぉん」
雄叫びを上げながら泣き叫ぶばあやを横目に、ぶっ飛ばされたお医者様に声をかけます。
「お医者さまも。うちのばあやが申し訳ございません。大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、はい、大丈夫デス」
「なぜカタコト?」
「おっ嬢様ぁぁぁぁ! そんな医者にまでご心配を! まって、今お嬢様が、うちのばあやとおっしゃって!? シェフに伝えてちょうだい! 今夜は、お嬢様の快気祝いと成長祝いにしましょう、と! ばあやは、今すぐにお嬢様の大好物、
「む、無理しないで、ばあや……」
思い出しましたわ。このゲーム、キャラクターの育成も楽しめる、が、売りでしたの。ばあやのステータスって……。
「うわぁ……生ける伝説の……魔女?」
ばあやのステータスは、見なかったことにしましょう。そもそも、他人のステータスって、本当は見えないはずのものですわ。うんうんとわたくしは小さく頷きます。
となると、わたくしのステータスは……? なるほど、悪役令嬢は職業なのですね。でも、さすがライバルキャラ。なかなかの良い数値ですわ。
〈ステータス〉
ナリアンヌ・ハーマート 5歳 女
職業:公爵令嬢、転生した悪役令嬢
Lv.5
HP:50
MP:1500
知能:3500
運:10
スキル:悪役令嬢の微笑み
では、今後の目標を立てることにいたしましょう。
「ばあや、何か書くものを」
「はい、ただいま」
王丸鳥片手に、返り血を一瞬で拭き取ったばあやが、瞬間移動のように書くものを持って現れましたわ。
一体どうなっているのかしら……。
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