僕と女医さん!
崔 梨遙(再)
1話完結:1200字
或る土曜、僕は岐阜へ行った。20代の後半だった。その頃、僕は滋賀にいて、名古屋でナンパしようか? 岐阜でナンパしようか? 迷った結果、あえて岐阜を選んだ。名古屋の女性は既に知っていた。なので、経験の無い岐阜の女性に興味があったからだ。
駅から某繁華街へ。当時、その繁華街が1番さびれていた時で、思ったよりも人通りが少なかった。人通りが少ないということは、ターゲットとなる女性も少ないということだ。だが、妥協は出来ない。僕はハンターのように周囲をチェックした。
探せばいるものだ。20代の半ばか後半か? 1人の僕好みの女性が目の前を通り過ぎた。僕はスグに追いかける。
「どこ行くの?」
隣に並んで話しかける。その女性は僕を無視して歩く。だが、このくらいで諦める僕ではない。ハッキリと拒絶するまでくっついてやる!
僕は絶え間なく隣で話しかけた。足早に歩く僕達は、はたから見れば会話をしているように見えたのだろうか? 実際は、一方的に話していただけだった。だが、やがて女性が言った。
「ちょっと」
「何?」
「そこ、私の実家だから、ついてこられたら困るんだけど」
「ほな、ここで待ってるわ」
「待ってるの?」
「うん、いってらっしゃい」
「今から大阪に戻るけど」
「大阪? 大阪で働いてるの?」
「うん、医者やで。研修医だけど」
その時、僕が思ったのは!
“医者と患者ごっこをしてみたい!”
ということだった。僕のやる気は増した。
不思議なことに、会話をしてくれるようになった。彼女の名前は小夜子というらしい。そして僕は、大阪まで一緒に帰った。大阪に着いたら夜だった。とりあえず一緒に夕食をとった。そこで、翌日の日曜のデートの約束をした。
翌日のデート。まずはレストランでランチ。食後のコーヒーを飲みながら僕が言った。
「この後、どこに行きたい?」
「どうせ、ホテルに行きたいんでしょ?」
「うん、行きたい」
「いいわよ、今日なら。今日は男の人に抱かれたい気分だから」
「獣のように求め合いたい」
という小夜子のリクエストに応えながら僕達は結ばれた。
ベッドの中で、小夜子は言った。
「最近、彼氏と別れたの」
「そうなんや、それは僕にとってはラッキーやったなぁ」
「元彼、元カノの所へ戻って行ったわ。じゃあ、私の存在はなんだったの?」
小夜子の涙を、僕は胸で受け止めた。
要するに、たまたま小夜子の心には隙間があったのだ。心の隙間を埋める恋愛は慣れている。僕は、小夜子と付き合い始めた。
だが、やがて思った。心の隙間を埋めるだけの恋愛が続き、僕は疲れてきた。どうせ僕は一時的に隙間を埋めるパテ。時間が経ち、小夜子の心の傷が癒えたら、僕は用無しになるだろう。しかし、簡単に別れ話は出来ない。僕は今日もデートで小夜子の心の隙間を塞ぐ。
医者と患者ごっこは、楽しかったけれど。
僕と女医さん! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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