第18話 成金?
「――着きましたね! ダンジョン村、『シルク』に!」
相変わらず人口数百人とは思えない村の規模。
家はどこも高くて大きくて豪華。
金属製の部品が多く見られる近代的建築物が立ち並ぶ様は何度みても圧巻。
冒険者よりも観光客が多いのは村が裕福なだけじゃなくて安全を証明しているとも言える。
……。もうここを『村』って呼ぶのおかしくない?
リゾートでしょ、これ。
普通の村民がブルジョワ貴族並みの生活とかあり得ないわよ!
「かぁ……。やっぱりダンジョンの近くにある村に住んでるってとびきりのステータスよね」
「だが釣り場がダンジョンと名前もない小池だけだぞ」
「それをマイナス点に挙げてるのなんてあなただけよ。それじゃあダンジョンに向かう前に宿の確保ね。……ってこの感じ、ちゃんと泊まれる場所確保できるかしら?」
「ガリア嬢曰く専用の冒険者プレートであればモンスターでも有効だと聞いていたが……知識としてあるだけで実際その光景に対面すれば大抵この反応なのだろう」
ここに入る前、村の門衛さんですら顔をひきつらせていたから覚悟はできていたけど、そりゃあ怖いわよねこんなデカいドラゴン。
村の敷地が広いからドラミがいても快適!なのかただただ必要以上に避けられてるから快適に感じるのか……うん、絶対後者。
「……であれば俺はずっとダンジョンに籠っていても構わないぞ」
「はっ? そんなの嫌よ! 私お風呂だけは毎日入るって決めてるんだから!」
「……面倒なことだな」
「あの、俺も泊まるところがあると助かります。毎日ここに通うよりも在中したいと思っているので」
「……そうか。そうだな。その方が俺たちも楽だ。仕方ない、ダメもとでドラミごと泊まれる場所を探すか――」
「――お待ちしておりました皆さん! ギルドマスターから聞き伝えております! ダンジョン村『シルク』にようこそ! 私はこの村の長で『フク』と申します!」
……THEギンギラギンの成金親父きたあ!!
金の指輪とネックレス、見たこともないモンスターの毛皮でできた季節外れのファーコート。
贅肉を蓄えたまさに成金の容姿。
私もお金持ちで裕福でそれなりの権力欲しいけど……こうはなりたくないわね。
と、引いてる場合じゃないわよね。折角歓迎されてるのだもの、こっちだってそれなりの対応をするのがマナーだわ。
「初めまして。私はダイヤモンド級冒険者のローズ。こっちはパーティーメンバーのアルク。あと御者のエリオットとドラゴンのドラミですわ」
「これはこれは親切に紹介頂きありがとうございます。この度は我が村のダンジョンを利用されるということでこの私自らご案内をさせて頂きたく思います」
「助かりますわ。でも私たちはまず宿を探さないと……」
「ほっほっほっ! その心配はご無用です! 既に宿は手配済みですから! あ、勿論こちらで勝手に用意したものですので料金は結構です」
「それは随分と気前がいいですわね」
「ダンジョンへ入場される方々なのですからこれくらいのご対応は当然でございます。いやぁ、今度の探索でどのような珍品が手に入るのか……今から楽しみですね!この度もWin-Winな結果を期待しております!」
「は、はぁ、よ、よろしくお願いしますわ」
ベロンと伸ばされた村長の舌は上唇をねっとりと移動。
上がった口角とくすんだ笑い目と相まって不気味さと気持ち悪さ、両方が限界まで上昇する。
この顔だけで私たちをここまで歓迎する理由がわかったわ。
「どいつもこいつも現金なもんだな」
「しょうがないわよ。人間っていうのはどうしようないくらい欲でまみれてるんですもの」
「では早速御案内したいと思いますが、まず宿からに致しますか?それともダンジョンに致しますか?」
「じゃあ宿を――」
「ダンジョンだ。宿は移動中場所だけ教えくれればいい」
「かしこまりました。では早速ダンジョンに参りましょう。実際に見て、触れながらダンジョンの仕組みをお伝え致します」
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