第10話 訓練の成果

ープライトンー


 馬車にガタガタと揺られながら、戦地へと赴く。

 今日はアズミがいないから俺が底辺。それでも俺はあの騎士団団長のドレンさんの弟子(自称)!格で言えば同等だと思うぜ?ダンズ。



「ここが防衛場所か?」

 フランチェスカさんがラサさんに尋ねる。

「そうだ。ここが抜かれたらグランザーは終わりだと思ってくれ。眼光には右翼からの遊撃を任せる。」

 そこは短い時間に最低限の防衛を出来るように改修された街の防壁だった。

 馬車で聞いたけど、この場にはA級のパーティや名も知れてかつ、実力もある人達もいるらしい。試しにどんな人がいるか聞いてみたら、開いた口が塞がらなかったくらいだ。


「持ち場はここらへんか。

 ダンズ、プライトン、寝とけ。」

「ん?お前はどうするんだ?」

「これでもリーダーだ。挨拶してくる。」

 なら俺も…と言おうとしたが、睨まれたので辞めておいた。高位の冒険者を見てみたいという下心がバレたか?

 フランチェスカさんはスタスタと歩いていく。


「ホント、あいつは不器用だよなぁ~。」

 ダンズが苦笑しながら喋る。

「フランチェスカさんのことですか?」

「あぁ。龍種には俺達人間と違って夜が主戦場の奴らもいる。それで俺達を気遣ってくれたのさ。」

「なら後でお礼を…」

「あーあーやめとけ。言ったら逆にキレるから。」

 うーん、難しい………




 十分な睡眠を取ったことで、ダンズと二人で辺りの警備に入る。フランチェスカさんは挨拶周りがとても疲れたのか、帰ってきてすぐに倒れるように眠った。


 そして時刻が次の日を示した頃、戦場が動く。




「おいプライトン。」

「ん?」

 隣にいたダンズが一点を見たまま話しかけてきた。

「あれ………」

 そこには夜の闇しかない。そのはずなのに、何か感じられるという不思議な気分だった。

「なにか……うご………!?」

 そう思った瞬間、俺達二人が見ていた場所から炎が向かってきた。

「「……敵襲ゥゥゥ!!!」」

 俺とダンズ叫びながら持ち場に進む。

 俺達の声に反応した他の冒険者達も次々と状況を把握していく。

 龍に夜襲された、と。



「おし!さっさと退けるぞ!」

 フランチェスカさんと合流した俺達は、隠密からのゲリラ攻撃を決行する。

 フランチェスカさんは寝起きのためか、いつにも増して不機嫌だ。あまり喋りたくないなぁ。


 俺達が担当する右翼には数十人が所属するレッドロードと、B級二人のチームのサイリックがおり、既に戦闘は始まっていた。

「……サイリックを手助けだ、眼光行くぞ!」

「「おう!」」




「スケイルスラッシュ!」

「グラァァァ!!」

 俺の攻撃はちょうど龍の後ろ足に決まり、苦しそうにのたうち回る。前の俺だったらここまでの精度は期待できなかったな。

「何ボサッとしてる!攻撃しろ!」

 フランチェスカさんは槍を振るいながらサイリックの二人に檄を飛ばす。

 それに反応したサイリックは、連携の取れた動きで龍の羽の付け根を切りつける。

「ギャラァァァァア!!!」

 龍は前足の爪を振るうも、翼と後ろ足が不自由なせいでバランスが取れず横に倒れる。

「囲めぇ!!」

 フランチェスカさんの指示に全員が龍に向かって得物を振るう。

 

「次だ!サイリック、ここは任せたぞ!」 

「あぁ!任された!」

 俺達は走ってレッドロードの方へ向かう。

「俺達いりますかねぇ……」

 レッドロードは数による人海戦術と、的確な指示にすぐさま反応する指導をしているため、新人の登竜門とまで言われている冒険者の一大組織だ。


「っ!まずいぞ!囲まれてる!」

 ダンズの言葉を聞いて速度を上げる。

 そこには倒れた仲間を庇うように円形になるレッドロードと、それを囲む龍が三体。


「俺が行きます!」

「あ?やれんのか?」

 フランチェスカさんの視線が俺を貫く。

「はい!」

「っし!ミスったら報酬無しだ!」

「イエッサー!!!」

 ぜってぇ成功させたらぁ!


 俺はさらにギアを上げて二人より早く走る。ちょうど三体の龍を見える位置まで飛び上がり、ドレンさんに教えてもらった技を使う。

「スカイスライサー!!」

 空中で剣を六回振るい、その軌道に沿って空中に留まった斬撃を、三体の龍に飛ばす。

 龍が怯んだ隙にレッドロードが脱出を図る。

 その間に、残しておいた三つの斬撃を背中に宿し、空を飛びながら龍の気を引く。

 …し、レッドロードがフランチェスカさんと合流した。これで報酬は無くならねぇだろ。

 その後はダンズ、フランチェスカさん、レッドロードの近接組の連携に、俺の波状攻撃がしばらく続く。

「魔法、撃ちます!」

 不意に聞こえた声に俺は急上昇する。ちなみに、俺の波状攻撃で龍の翼は使い物にならなくしておいた。

「「「「「ライトスパーク!!!!!」」」」」

 術士五名による圧倒的な光は三体の龍を包み込み、龍達は身体が焼けるように苦しんでいた。元々高密度の光で敵を焼く光魔法だが、今回の敵は夜目が効くナイトドラゴン。そのダメージは尋常じゃないだろうな。


 こうして、今回の夜襲は撃退できた。

 ………俺達の持ち場は……だが。

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