ブロンズドラゴン探してます!
麝香連理
第1話 どうにかなる……か?
「ん?どこだ?………夢の中か?……これは。」
見渡しても真っ白い空間が地平線の先まで続いている。
「こんにちは。」
「うお!?」
声をかけられたことに驚いて瞬きをした時、目の前に綺麗な女性が現れた。
「大丈夫ですか?」
その女性はこちらを一瞥もせずに尋ねてきた。
「あ、あぁ……あんたは?」
「私は輪廻を見るもの。」
リンネ………?あの?
「え……?それって、俺は死んだのか?」
「まぁ、ここにいるのならそうなるでしょう。」
そ…んな……せっかく汗水垂らして働いて、やっとの思いで独立出来たのに……!
待てよ………?
「えっと、あなたは神様…ですか?」
ここで、よくある転生チャンスを!!
…あ、でも出来れば元の世界が良いな………
「……?すみません。神様という言葉に馴染みはありません。私は輪廻を見るもの。それ以上でもそれ以下でもありません。」
「…………」
おい!どういうことだよ!俺だけこのまま死ぬのか!?せっかくこれから好きなことが出来ると思ったのに!
「あなた、まだ生きたいですか?」
「うえぇ!?出来るのか!?」
「まぁ、あなたの魂を押し戻すだけですし。話し相手にもなってくれました。少し色もつけますよ。」
「何!?なら…………そのボーナスはブロンズドラゴンに関するもので頼む!」
「ブロンズドラゴン………?
………………なるほど、そう言うことですね?ならば少し頑張るとしましょう。」
これで俺も夢の………
そうして、俺の意識はここから消えた。
「まさか、元の世界ではなく別の世界を望むとは……押し戻すよりもかなり疲れますが………人はやはり、変わっていますね。」
また一人、表情を変えずに淡々と呟くのだった。
「うお!?」
気が付くとそよ風が吹く森の中だった。
「…………あれ?ここ……どこ?」
ちょちょちょ!待てよ!……あれ?元の世界に戻るって話だったよな?どういうこったい!?
「ていうか……」
服装も違うなぁ……もしかして現地の人に憑依した感じかぁ?
「む……日記?……この身体のか。」
読んでみると、どうやら成人して村を出たばかりのヒヨッコで、旅の途中、近道をしようとしたところを毒を持った、魔物と呼ばれる通常の生物よりも獰猛で身体の大きい、所謂進化した動物に襲われてしまい、死の間際にこの日記を書いたようだ。見つけたら両親に謝罪を頼む、と………。
「…………名前は……アズミ…?俺と同じか。」
何かしら運命めいた物を感じつつ、見たことの無い植物に興奮しながら街に向かって歩くのだった。
「むぅ~この気温とこの湿度ならあると思ったのだが………」
探したが俺の探し求めるブロンズドラゴンは無かった。……いやいや、弱気になるな!きっと見つかる!
カキィィン!
「おや?」
遠くから金属がぶつかる音が聞こえ、怖がりつつも一目みようと近付いていく。
そこには男女それぞれ二人ずつの、所謂冒険者と呼ばれる魔物討伐のプロらしき人達が巨大なドラゴンと戦っている。そのドラゴンは鱗や全身が全て銅色で、鈍い光を放っていた。
なんで冒険者なんて知ってるかって?実はこの身体の持ち主であったアズミくんがその冒険者を目指して村を出たとも書かれていたからだ。
「うわぁ……」
戦いから無縁の生活をしていた俺にとって、こんな光景を見せられてもこんな感想しか出てこない。
「…ん?」
ふと、足下を見るとブロンズドラゴンに似た植物を見つけた。
「……とりあえず、観察のためにとっちまうか。」
腰に差してあったナイフを取り出して、しゃがむ。
その時、興奮で自分の手が微かに光っていることに気付くことはなかった。
ーアメスー
「ぐっ!?フリーク!まだなの!?」
「すみません!魔法はもう少しかかりそうです!」
「クソッ!鱗固すぎんだろ!?エナメ!強化はもう無理か!?」
「うぅ!私もしたいけど、もう魔力が!」
「チッ!どうするよアメス。このままじゃ幻滅だぜ?」
うちの攻撃の要であるボーレンが疲労の溜まった目で私を見つめる。
依頼によりアシドバイソンを倒した帰りに、ブロンズドラゴンに襲われた。普通ならさっさと逃げるべきだけど、こいつは……
「かっかっか!いつまで続くのやら。」
喋る。つまり、上位の存在。龍種がヒューマンに宣戦布告をしてから一年程。喋るドラゴンなんて生で見たことがない。それに、ブロンズドラゴンは龍種の中でも最強にもっとも近い種族とも言われている。このままじゃ私達の街が灰と化すのも遠くない。だからこそ、今すぐにでも救援を呼びに行くべきだけど……
「アメス!もう無理ですよ!私達が時間を稼ぐから早く皆に知らせて!」
「そうです!なぁに、私の魔法で多少は怯んでくれるでしょう!」
「アメス!お前が一番速ぇんだ。分かってんだろ?」
仲間の声が胸に刺さる。街の皆も大切だけど、パーティーの仲間も見捨てたくない!
「ごめん。最後まで、私は一緒にいたいよ。」
私は短剣をしまい、矢をつがえる。
「全くあなたは……しょうがないですね!
フレイムノヴァ!」
フリークの火属性魔法が直撃し、私はそこに矢を引く。
「いけっ!ラストショット!」
私の全力を込めた一撃は黒い煙を切り裂くように進む。
「くはっ!くはっはっはっはっは!脆弱なり!」
私達の顔が絶望に沈む。
私とフリークの最大火力は痒み程度しかなかったようね。
「…皆、ごめ……」
「ゴハッ!?」
私が謝ろうとしたその時、あのブロンズドラゴンが苦しそうに呻いた後、倒れてしまった。
「え……?」
四人で恐る恐る近付いてからよく見ると、ブロンズドラゴンの首に切り傷がついていて、凝視していると突然、首と胴体が綺麗に離れた。
「きゃ!?」
「これは……」
「一体何が…?」
私達が口々に驚く中、ボーレンだけが神妙な顔で言葉を紡ぐ。
「すげぇ……こんな切り口、俺の師匠でも出来ねぇぞ。それにあのブロンズドラゴンで……」
「誰か、助けてくれたんでしょうか?」
エナメがホッとした様子で呟く。
「いや、だったら名乗り出るはずだ。ここで出ないってことは、このブロンズドラゴンが独断でここに来たから、処分した、とかな。」
「ピッ!」
「こらこら、エナメを怖がらせないでください。」
「いや、でもよ……」
「うん、ボーレンの意見は最もね。皆、なるべく早く街に戻って、この事を伝えましょう。」
そうして、私達は街に戻った。
何にせよ、自分達が助かったことに感謝しながら。
ーアズミー
「これは……キョウチクトウか?……あれ?」
先程までの音が無くなったことで我に返り、立ち上がる。
「うお!?あのでかいドラゴン倒されてるなぁ。やっぱ俺は冒険者に向いてないかもな。」
にしても、ドラゴンの肉とか鱗とか取らないんだろうか?龍種に宣戦布告されて、戦う頻度が上がってから素材が安くなったとか?
そこら辺も調べないとなぁ。……まぁ、でも……
「もうちょっと観察を続けるか!」
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何だこれ……… by作者
まだ把握してない人のために
主人公が言っているブロンズドラゴンとは金魚草のブロンズドラゴンという品種です。
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