プロローグ
第1話 諦め 前
朝、目を覚ますのが怖い。
毎日、朝起きると一階のリビングから義父の怒号とともに、食器がガシャンと割れる音が聞こえてくる。
今日は母親が義父のお金を大量にホストに使ってしまったようでお互い理由のわからない言葉を叫びながら喧嘩している。
家に被害が出るので毎回いやいや仲裁に入るが、両親ともども暴力をふってくる。
何もしていないのに、罵詈雑言を浴びせてくる。
イラついて口が滑り「お前たちが悪いんだろが」なんて言おうものなら刃物まで使って恐喝してくる。
実際中学生の時に本当に足に傷を負って1人で涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら足を引きずって病院に行ったこともある。
…もはや2人のことを親として認識するのは不可能だ。人間の形をしたモンスターだ。
普通、家の中は安全な所だが、俺にとっては命の危険がある場所である。
しかし、外は外で何も楽しくない。
高校に一応行かせてもらえているが、近所の底辺の高校だ。
治安も最悪でまともな友達なんていない。
クラスでも俺は空気として扱われている。
そして話しかけられたとしても、俺の体目当てだ。
正直言って気持ち悪い。吐き気がする。
「愛」のないセックスなんてしたくない。
それでも中学生から頑張って強くなったおかげで、喧嘩に勝ち、いじめもなく、番長をしている。部下もいるが全員敬語だし、ものすごく怯えている気がする。
もっと親しげに話しかけてきてもいいのに。
毎回やりたくもないのに、カツアゲやら抗争をしなければならない。それをしないと俺が人間として扱ってもらえない。毎回死と隣り合わせだが、それをしないと生きていけない。親は俺の帰りをまってんでるわけでもないし、料理なんて用意してくれるわけもないしな。何なら死ねとでも思っているだろう。
DVの義父、ホスト狂の母親、、、
俺は一回も両親に愛してもらったことはない。
ちなみに母親は俺がまだお腹の中にいた時に離婚し、生まれた後に今の義父と再婚し、そして俺を放置した。
生まれて、俺を引き取って、名前をつけて、育ててくれたのも、両親ではなく俺のおばあちゃんらしい。
小さい頃の記憶はほとんどないが、お世話になっているときおばあちゃんの顔には笑顔がなかった。
それでもあの2人よりは大切に育ててくれた。
おばあちゃんは俺が4歳のときに死んだ。
俺は両親に引き取られた。
それから13年経ち、「愛」というものを全く持って受け取ってない。
時間が経ちすぎて、もはや「愛」とは何なのかもわからなくなっている気がする。
なんの変哲もない普通の生活がしたかった。
高望みはしないけど、1人でも心を許せる友達が欲しかった。
普通の人間として扱って欲しかった。
一度だけでもいいから両親に愛されたかった…
だけど現実は甘くなかった
俺ってなんか悪いことしたかな
他の人はあんなに幸せそうなのに、
俺はなんでこんな地獄のような環境にいるのだろうか。
ああ、現実から逃げたい。
人に愛されるような場所にいきたい。
寝て起きたら違う世界に行けたらいいのに。
でも起きたらそんな都合の良い現実が来ないことは、わかっている。
…もう諦めている。
現実から逃げるように、俺は開いている目を無理矢理閉じた。
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