Rebuild:Dungeon~ゲームが現実となる~

深空 秋都

#1 1日目


「?……なんだろう、このアイコン」


会社から帰宅後、部屋着に着替えてパソコンを起動。

サブスクリプション登録している音楽アプリを立ち上げていつものプレイリストをBGMにコンビニで買ったコーヒーを飲む。

いつの間にか出来上がっていた日々のルーティン。


だが、今日はそんな日々の中に異物が紛れ込んでいた。


「アプリ名はりびるど……『Rebuild:Dungeon』か」


怪しい。

そう思った俺はアンインストールを試みる。失敗。

今度は元のファイルの場所を開こうとする。エラー。

その後も様々な手段で削除しようとするもことごとく失敗に終わった。


スッパリと諦めて放置しよう。


……

…………

………………

……………………


「はあ……気になってしょうがない」


諦めることを諦め、アイコンをダブルクリック。

フルスクリーンモードで起動したアプリが暗転から立ち上がると美しいグラフィックの画面が表示された。


「うちのパソコンのスペックで描画できるんだ」


そこそこの3Dゲームを遊ぶことができる程度のパソコン。のはずなのだが、目の前に映っているのはどう見てもそれを凌駕する圧倒的なグラフィックだ。


「お、マニュアルあるのか」


スタート画面の一番下から2番目。EXITの上にマニュアルがあった。

開いてみるととんでもない量の設定やらゲームシステムがズラリ。

こんなものを見たら普通はさっさとゲームを始めたくなる。

でも俺は小心者。規約とかそういうのもしっかり読んでから同意ボタンを押す人間だ。


よく読んでみると目的自体はシンプルだった。

ゲームシステムは多少複雑ではあるものの、そこそこゲームをかじっていれば問題なさそうだった。



・このゲームの目的はタワーと呼ばれる100層から構成されたステージをすべてクリアすること。


・一度死んだらゲームオーバー。作成したアバターは履歴として記録される。


・アバター自体にレベルはなく、レイヤークラスや装備品、スキルによって強化が可能。


・様々な育成を模索し、あなただけの最強のアバターを追求しましょう。



マニュアルを一通り読み込んだところでゲームスタート。

最初はアバター作成からだ。


「すごいな」


昨今のゲームと比較し、自由度が桁違いだ。

あらゆる身体項目を調整でき、簡単な装飾品なら自分で作成も可能。


しばらくアバターをいじくり回していたら3時間が経過していた。

明日は休日。このまま続行だ。








 ********







――1層ターミナルに接続しました。


――アバターの情報を読み込みます。



〈アバター情報〉


レイヤー:なし


生命:健康

筋力:100

精神:100

器用:封印

気力:封印

魔力:封印


スキルスロット1:空き

スキルスロット2:空き

スキルスロット3:空き


装備スロット1:簡素な布服(上下セット)

装備スロット2:藁の靴

装備スロット3:石のナイフ

装備スロット4:空き







 ********







タワー1層】



「アバター情報の編集は各層のターミナルで可能。ってことはターミナル以外で自由に変更できないのか」


戦闘外であっても自由に装備変更できないのは結構考えさせられる。

事前の準備でクリアできるどうかが決まると言っても過言ではない。


「セーフティゾーンでは敵は出現しない……この部屋から出たら戦闘開始ってこと? あ、自由に戻ることは可能なんだ」


であれば部屋から出て様子見。危なそうだったらセーフティゾーンまで逃げる。

これを繰り返せばある程度は安全にいけそうだ。


部屋から出ると青い空に風が吹く草原。

グラフィックが綺麗さも相まって思わず溜息が出る。

が、そんな感動もつかの間。敵が現れた。



〈敵情報〉


小鬼


生命:健康

関係:敵対



「こんな感じの情報なんだ。数値化されてないといまいち分からないな」


ちなみにこのゲームはノンターゲティング方式のアクションゲームだ。

ノンターゲティング方式とは簡単に言うと自分のアバターの行動範囲に入った対象に攻撃がヒットする方式だ。敵をクリックで指定して攻撃する方式ではないため、アクション性が重視される分、臨場感がある。


マニュアルの操作方法に従って攻撃すること十数分。

ようやく倒すことができた。

1層の雑魚敵だと高をくくっていたが、とんだ思い違いだった。

このゲームは敵1体だろうが油断できない。囲まれれば勝機は薄いだろう。


今の生命状態を見ると危険域という表示になっている。

マニュアルによればセーフティゾーンに戻れば全快するとのことなので早速戻ると即時全快した。


ターミナルで先程の戦闘のリプレイ映像を見ながら小鬼からドロップしたアイテムを確認する。



〈アイテム情報〉


小鬼の棍棒


属性:打

補正:筋力5%



「これがドロップ武器か。今持ってる石のナイフより強そうだ」



〈アイテム情報〉


石のナイフ


属性:斬

補正:なし



属性の違いはあれど、断然ドロップ武器のほうが強い。

武器の属性は打撃や斬撃などのほぼ見た目通りの属性がある。

先の戦闘を見ると攻撃距離が短いナイフを使っていたことが苦戦した要因になっていたのは間違いない。

何倍も攻撃距離が伸びる棍棒が今のところいいだろう。


「いやしかし、思ったより疲れたな」


すでに深夜1時。

いくら休日とはいえ徹夜はまずい。

ここは一度寝てから再開しよう。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る