第22話 紅く染まる指輪

「んー?」


俺はザンナの背中の上で目が覚めた。


「え?夢?どこまでが夢?」


頭の中が混乱し何が現実で何が夢なのか分からない。腕がある事から熊が出た所からは夢か?


「取り敢えず、ファング良くやった。」


考えても分からないのでそう言いながら並走するファングを撫でて二人に行き先を聞く。


「ところで今どこに向かってるの?」


二人の話によると今まで使っていた拠点を使うのは危険という事で拠点を大きく移しているらしい。荷物はまとめてファングが咥えているみたい。


「本当だちょっと止まって。背中にくくりつけてあげる。」


ザンナから降りるとロープで荷物を括り付け、再びザンナに乗る。


「拠点の場所に目星ついてるの?」


二人は答えないため場所に目星はついていないのであろう。つまりはそれだけ急がなければならないほどの敵が近くに居たという事。狼は縄張り意識が高い、それが縄張りを捨てる程なのだから相当な脅威だった事は想像が容易い。


「水辺の近くで人間の生息圏の外じゃ無いとダメだし暫く走り込みかもよ。」


分かってるとでも言いたげな二人の反応を見て拠点探しは二人に任せ今できることをする。


「ふーむ。指輪の色変わってね?」


どこまでが夢でどこからが現実か分からないが少なくとも俺がこの指輪を受け取った時は綺麗な銀色だった筈だ。それが今は若干の赤みを帯びている。


「専門家が言うには材質は銀なのは確定なら何で色が変わったんだ?赤錆にしては茶色く無いし…。」


このような現象は前世では見た事がない。そもそも銀の変質は黄色や茶色や黒だった筈。酸素以外の物質がこの世界の空気中に漂いこのような化学反応を起こしてるのならお手上げだがそれしても反応が速すぎる。


「銀は変質しにくい素材じゃなかったのか?」


いくら考えても答えは出ないため違和感を感じつつもそれは置いておく。


「暇だしあの中古屋で買った本でも読むか。」


普通に考えて異国それも異世界の言語なんて読める訳がないのだが、何故か話は出来るし街の看板の文字も読めたし問題ない。並走するファングに括り付けた荷物の中からこの世界の古本を取り出し目を通す。


「うーん。何だこれは。ファンタジー小説の様な宗教本の様なミステリー小説の様な気もする。訳のわからない本だ。何故か目立って見えたから必要な物以外で買ったんだけど、脈絡が謎過ぎる。中古屋に出されるのも納得の内容…。」


読めない訳ではないが、どう考えても本以前に文章としてすら成立していない。文章になる様な法則があるのかもしれないが今の俺の知識では解読出来ない。


「取り敢えず落ち着くまでこの本の解読に挑もう。どうせ時間は山の様にあるし。」


指輪と違って完全に未知な訳ではない。文字自体は読めてる以上解読のしようはある。

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