第18話 軍部のおっさん

「変な名前で呼ばれてたし、顔隠す仮面の種類は増やした方がいいな。」


俺は適当に商店街で仮面などの顔を隠せる道具を買い漁ると速攻でファングに跨り壁を駆け上がり外へ脱出しようとしたが足を止める事となった。


「まだ交渉してるのかよ…。」


日の傾きからして少なくとも数時間は経っている筈だ。営業の交渉でもここまで長い時間商談が続くのなんて大手とかと行う大規模取引とかなのに小規模な個人取引でここまで時間食うか?俺は営業が兼務になってから日が浅く、よく分からないから断言は出来ないのがもどかしい。


「あ、レッヒェルンマスケ笑顔の仮面!!」


「だからそのヘンテコな名前で呼ぶのやめろ!!おっさん!!」


「俺らに怪物の言葉は分からん。頼むから翻訳してくれ!!」


「はぁ?俺は国の敵かもしれないのに個人取引とは言え国からそれに近しい街との取引に関わっていい訳ないだろ?お前ら軍部にしても防衛系にしてもこの都市及び国を守る兵士だろ。そんなんで良いのかよ!」


「未来の危機を危惧して今滅ぼされたら意味ないだろ!!」


ふむ、おっさんの癖に理にかなっている。そこら辺の判断はちゃんと出来るらしい。


「報酬は?俺は意地でもタダ働きはしないぞ?」


「良い感じに装備を見繕ってやる。軍部の備品からだがこの鉄壁要塞を守る兵士用だ。当然どれも質はその辺の国より高い。着なくても売れば当分遊んで暮らせる金になる。」


「乗った!!」


金はいくらあっても困らない。住所不定無職な俺的に簡単な依頼で大金を稼げるとなると受けない訳にはいかない。それだけ聞くと闇バイトに手を出した奴の様だが国の軍部からの依頼でそうなれば国の信頼や威厳に関わるためまともな国なら闇バイト的になるのはあり得ないだろう。


「警戒心があるんだか無いんだか…。」


「軍部のお偉いさんがこの場で嘘をつくとは考えられないからねぇ。だって末端ならまだしも治安維持に関わる貴方達が報酬で嘘をつけば国の威厳や信用に関わる。報酬未払いを続けた結果革命や戦争を起こされ滅んだ国なんてザラにあるのに不要なリスクを踏みに行くとは考えられない。そして何より、この人と交渉出来る俺を敵に回す程馬鹿じゃ無いでしょ?」


「犯罪者ですとでも言いたげな胡散臭い格好をしてる割には頭良いんだな。」


「これでも成人してるからな。さて、雑談はここまでにして本題に入ろう。取り敢えず俺が翻訳するから早めに終わらせてくれよ。家族が家で待ってるんだから。」


「子持ちかよ。チキショウ。」


「子供はいねぇーよ。俺の家族はこの子ともう一人だけだ。」


それから数時間の間巨人の言葉を翻訳し続け、取引をまとめ終わると俺は翻訳の報酬を受け取るため軍部の詰所に移動した。

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