第13話 生き餌

「どうしよう。」


半日程で元の場所に戻った俺は悩んでいた。


「想像より技術水準が低い。街に住むのも良いが利点が少ない。間違ってこの子達が駆除されたらたまったもんじゃないしあの規模の街であれなら村や集落規模の場所の方がいい。」


地図によれば近場に人里がある事も分かってるし、そっちに期待か。


「ここに住むなら何より問題は住居だよなぁ。穴掘って屋根つけただけの超簡易住宅だから浸水するわ風で屋根が飛ぶわで超大変。建築基準とか色々知らないし流石にこれ以上の住居を自力で作る事はできない。もう少しちゃんとした材料が集まればちゃんとした竪穴式住居が作れるが、ここ大した材料が無い…。」


正直技術者を呼んで木造で作った方が早いが技術者と交渉出来るだけの話術はない。俺の仕事は案内が主で買わせるのは最近やり始めたばかり、技術者などのプライドが高い奴との商談は専任のやつがやってたもんなぁ。


「はぁー、悩んでも仕方ねぇ。」


「な、なぁ家欲しいんだろ。俺がなんとかしてやるからこの縄解いてくれ。」


「黙れ生き餌八号。お前の役割はこの子らのご飯になる事だ。犯罪者の言葉なんて誰が信用すると思う?」


強盗殺人犯の戯言を信じて殺されたら笑えない。彼らには彼らの相応しい末路を辿る必要がある。


「お前も大差ないと思うが…。俺らから襲ってないんだよな?それって普通に略奪っていうんじゃ…。」


「賞金首共が何を言ってる?手配される程罪を犯した人間に人権があるとでも?」


「犯罪者には更生の余地も人権も無いとでも言いたげだな。」


自嘲するような態度に腹が立つが俺は俺の理屈で捩じ伏せる。


「取り返しがつく罪ならば更生も望めるだろうし人権もあるだろう。だが取り返しのつかない罪を犯したのならそのような期待は必要無い。大人しく死ぬといい。」


「お前は正義の味方のつもりなのか?」


「正義?何言ってるんだお前。俺が正義の味方に見えるのなら目ん玉腐ってるから臭う前に取り除いておこうか?」


実際俺は正義の味方では無い。前世の時点で俺を刺して来たやつの玉と顔潰して警察に突き出す程度には倫理観が欠けている。これが正義だと思えるのならそれは相当なイカれ野郎だ。


「なら何故…。」


「お前らが力の限り好き勝手生きていた通り俺も好き勝手生きているだけだ。お前らとの違いは一般人を標的にするかしないかでしかない。物資が必要になったから溜め込んでそうな強盗殺人犯から奪い取っただけ。今回は偶々お前達だっただけ。それ以上でもそれ以下でもない。」


「俺らよりタチ悪いなお前。」


「褒め言葉として受け取っとく。あぁ、あとお知らせだ。喜べ今日はお前の番だ。ただ、拘束されたまま逃げて街などに助けを呼びに行こうと止めはしない。逃げれば生き餌になることもなく死だがな。じゃあな、俺は寝る。」


「おい!ちょっと待て!!」


「あ、言い忘れていたが三日程飯食えてないから今日は相当雑な食い方になると思うぞ。じゃあ、地獄でまた会おう。」


「あは、あははは。イカれ野郎め。」


血肉が飛び散り狂ったような笑い声を上げ死に逝く犯罪者を背に彼は呟いた。


「どっちがイカれ野郎だよ。この殺人鬼共め。」


その姿はどこか哀愁が漂っていてどこか壊れた人間に見えたと言う。

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