春の終わりの日【第二回短歌・俳句コンテスト短歌ニ十首】

朔こまこ

春の終わりの日【短歌二十首連作】

影の色恐ろしく濃い境界の向こうの側で散り果てた花


切り揃えられたチューリップたち光のもとで顔が見えない


制服の折り目正しいスカートが重たげに揺れ丸っこい膝


まだ慣れない新品の服似合わない 育てた個人ここで死んでく


ねえ見てよ花があったと思えない 初々しい葉の元桜よ


目の奥でなにかを燃やすきみの熱 季節をひとつ終わらすちから


こんなにも春は終わってゆくけれどまぶたの裏の吹雪は消えない


出会い終えこれからみんなどうなるの教室の隅秩序を見てる


木漏れ日が揺れるのを見るいつの間にあなたの髪はこんなに長い


暑いねとあなたがつまむスカートはたしか春用の小花柄で


季節の変わり目は気分悪いから 五月の真夏日きみは泣いた


暖かくカーテンが揺れてたあの日きみが落としたカップの破片


晩春のあまりの夏にもう二度と春に会えない気がしてしまう


春植えの球根五つ埋めたけど埋葬と違いがわからない


なんでかな 春の終わりは生命のにおいとともに死の気配する


水をまく土のにおいが立ち昇るあの世と同じような気がする


「子雀が死んでいたの」ときみが指すお墓の場所はすでに草むら


春の夜どうしてそんなに生きてるの世界が風がわたしに懐く


夏前のそわそわとした明るさとあの子の見せる土葬の瞳


なにもかも失くしてしまう、火の中で。真っ白な服大好きなのに

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春の終わりの日【第二回短歌・俳句コンテスト短歌ニ十首】 朔こまこ @komako-saku

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