怪物討伐

@waramotchi

第1話【暗闇】

 初夏の夜、月明かりを頼りに山のけもの道を全力で走る1人の少年の姿があった。少年の後ろには見たことのない黒い影が少年を不気味な笑みで追いかけていた。少年はすでに限界を超えていた。息切れた声で

「なんなんだよ、あいつは…。…まさか婆ちゃんが言ってたのって…」


 数時間前


 玄関で靴を履いている少年の背後で1人の老婆が声をかけた

「カイちゃん、何度も言うけどあの山に行くのだけは絶対にやめなさい!」

 どうやら怒っているようだ。

「大丈夫だって、友達と一緒に暗黙山に肝試しに行くだけだから。なんなら婆ちゃんが言ってた『暗闇様』が出てくれば本望だし、それってただの迷信でしょ?」

 老婆はカットなった。

「迷信なんかじゃない!あの山には本当に暗闇様がいるのじゃよ!」

 老婆の凄んだ声に一瞬怯んだ少年だったがそれでも老婆のういことは耳も止めずに玄関を出ようとドアノブに手を近づけた。が、老婆がさっきと同じようなことをもう1回言ってきた。いい加減に苛立った少年は今までにないくらいの威圧的な声で

「もう!うるさいんだよ!くそばばあ!!」

 少年は老婆が怯んでいるうちに外へ出た。

 老婆はしばらくして絶望した表情になりやがて仏壇の前に座った。

「仏様どうかあの子が無事に帰ってこれますように」心からの願いだった。

 そんな老婆のことなど気に留めずに出て行った少年はあの山の前に立っている同年齢くらいの男女二人がいた。少年の友達だ。

「海斗遅いぞ、綾香さんはともかく」そう笑い交じりの声で話した彼は”松下淳也”中学二年生だ。

 少年の名前は”中島海斗”、淳也と同じ中学二年生でクラスメイトだ。

「ごめんごめん、綾香さんはいつ頃来たの?」

「私は五分くらい前に来たとこ。淳也が楽しみすぎて三十分も早く来たって言っててびっくりしたよ」明るい口調で喋っているのが”浅川綾香”。三人は怖いものが好きをいう共通点を持っており、今日も夏休み前から計画していた肝試しに来ていた。もともとそこの地域には海斗の祖父母の家があるため昔から祖父母の家に行っては怖い話を聞くのが大好きだった海斗は、こないだ学校で三人と話しているときにある話を思い出いし、二人は興味津々で今回そこに肝試しに行くことになったのだ。海斗の祖父母が住んでいる地域にある山には”暗闇様”という、狙った獲物を捕まえて死ぬまで引きずりまわす。と言う言い伝えがあったのだ。

 詳しくいうと山にある神社のどこかに人一人分の獣道があり、そこを通っていくと開けた場所にあるはずのない墓地があるらしい。そこの中に自分の名前が刻まれた墓を見つけた場合暗闇様が何処からともなく現れる、とのこと。海斗たちはその話を夜中に子供が興味本位で山に行かないようにするためにつくった話を勝手に結論付けた。それもそうだ、第一よくよく考えるとそんな話など実際にあるはずもない、ただの人間の噂。それをまんまと真に受けて大人しくする子供。怖い話というのは子供のしつけの一つとしては効果的だ。だが、そうでない子もいる。実際に海斗たちもそのうちの人間。そういう者が皆の注目を集めて、エンタメとする。そこから、話を聞きつけた同類が集まり、広まり、また集まっては、世に広まる。連鎖的にだ。

「やっぱ、見つからないよなぁ…」海斗たちは効率よく獣道を見つけ出すため二手に分かれて探していた。海斗が諦めかけていたその時、綾香の声が聞こえてきた

「海くーん!こっちにあったよー!」そのことばを聞きすぐに駆けつけた。

「本当にあった。獣道…」海斗はそうつぶやくとその獣道を通って行った。

 しばらくすると、開けた場所にはでたが想像していた広さよりもずっと狭くおまけに墓地のぼの字すらない六畳ほどの空間だった。

「なだよ、期待して損した…」そう思った海斗だったがあることに気が付いた。

 綾香がいない。さっき声がしてここまで来たはずなのに姿かたちがないのだ。そこで綾香の事を呼ぼうとしたとき、後ろから声がした。

「もう海君。早いよ…」その声の主は綾香だった。

 海斗は困惑した、自分よりも先に行ったと思ってた綾香が自分の後ろにいたからだ。

 そんな様子を見た淳也が口を開いた。

「海斗、大丈夫か?…」そんな問いにうろたえながらも「うん、大丈夫…」と返事をした。

「まったく海斗が見つけたっていうから綾香さんと一緒に急いできたのに先に行きやがってな」その言葉を聞いた海斗は困惑した。海斗は確かに綾香の声を聞いて駆けつけてきたはずなのに、自分が見つけたっと言って淳也を綾香はきたのだ。

「どうした?そんな顔して。もしかして今更ビビってんのか?w」笑い交じりに言う淳也に対して

「いや…。俺は綾香さんが見つけったって言ったから来たんだけど…」その言葉に戸惑う綾香

「いや…。私見つけてないよ…。」三人は顔を見合わせた。嫌な予感がした。

「「「帰ろう」」」そう言った三人は来た道を戻ろうと後ろを向くとそこにはさっきまでなかった墓があった。その墓には"中島海斗"、"松下淳也"、"浅川綾香"の三人の名前が刻まれていた。3人は背筋が凍りつき動けなくなった。今までにない恐怖心が3人を襲った。辛うじて動かせることができるのは目で、墓の先に何かがこっちに来ているのがわかった。それは黒く、不気味でだった。四足歩行で迫ってくる”奴”は三人にとって恐怖でしかなかった。やっとの思いで動かせた目ですら奴をみることに動かせなくなり何も考えることができなくなった。「(やばい…死ぬ…)」奴が三人の目の前に飛びかかろうとしたそのとき、上から折れかかった大きい木の枝がおちて奴に直撃した。その瞬間三人の体が動かせるようになり走り出した。それを追いかけるように奴はすぐさま体制を整えてまた走り出した。逃げるのに必死で二人がいなくなっているのに気が付かなかった海斗は、獣道に入る前の神社にたどり着き後ろを確認した。すると目の前には倒れている綾香の姿があった。その綾香を助けるために綾香の近くに駆け寄っていた淳也は綾香を抱えようとしゃがみこんでいたが、迫ってきていた奴に掴まれてしまった。それを見た海斗は一瞬だけ罪悪感を感じたが、冷静になれなかった海斗はそのまま見捨ててしまった。神社の鳥居をくぐり抜けようとした瞬間、海斗の頭を何かが掴んだ。奴だった。海斗を掴んだ奴はさっきよりも不気味な笑みをうかべてノイズ混じりで「ツカマエタ」。海斗はその言葉をきいて気絶した。


 海斗が目を覚ますとそこはさっきの怪物がうじゃうじゃいる怪物の住処だった。恐怖動かすことのできない体で唯一動かすことのできるのは目だけだった。海斗が当たりを見渡すと淳也と綾香が気を失っていた。海斗はその後ろにある信じられない光景を目にして血の気が引いた。海斗が見たものは人骨や頭蓋骨の山だった。それを見て海斗は自分がどうなるかは想像がついた。海斗が目を見開いていると綾香が目を開き人骨の山を見ると、甲高い悲鳴を上げながら失禁した。すると続々を怪物たちが綾香に群がり耳を覆いたくなるような鈍り音と共に綾香に悲鳴が悲鳴を上げ続けやがて鈍い音だけが辺りに響いた。そうしてぐちゃぐちゃとなった綾香を目にして絶望していると今度は淳也の周りに怪物たちが群がってきた。海斗は心の祈った「(もう…やめてくれ…)」そんな思いは届くこともなく綾香と同じ姿になった淳也をみて海斗は死を悟った。海斗が絶望していると次は海斗の周りに怪物たちが集まってきた。

「もう…終わりだ…」虫の息かのようなか細い声でつぶやき怪物たちに掴まれたと同時に辺りがゆっくりに見えた「これが走馬灯ってやつか…。ばあちゃん、母さん…こんな俺が息子でごめんなさい。」そのとき海斗を掴んでいた怪物の中で一番大きい怪物の頭に一筋の光が高速で横切ったと同時に怪物の頭は吹き飛んだ。怪物の血しぶきが海斗、その他の怪物たちにかかりその光が飛んできた方向をみると誰かが怪物たちの住処の前にたっていた。「やっと見つけた。」その人はそうつぶやくとダッシュで怪物たちの住処に入っていきた。それに続くように後ろから4人がついてきた。怪物たちをそれを見るなり海斗を放り投げて逃げ出した。投げられた衝撃で薄れゆく意識のなか海斗が最後にみた光景は、

「攻撃来客;雷撃狙撃」彼らがそう唱えるとどこからか現れた青白く輝く狙撃銃のような形をしたものを構える姿だった。そして彼が引き金を引くと雷が落ちるような轟音と同時に複数の弾が怪物たちに向かっていくのが見えた。それが終わると「お前らは逃げた怪物たちを追って排除しろ、俺はこいつを本部の医務室に連れていく。いいか?!」「はい!」するとリーダーらしき彼に付いてきていた4人は奥へと進んでいった。そしてゆっくりと彼は海斗に近づいてきて海斗は意識を失った。



 

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