魔少年ルル ~ 異世界攻略はコミュニケーション(体)で

朽木桜斎

00 最終的にはこうなりました

「よく来たな、勇者ルルよ。さあ、かかってくるがいい」


 魔王は戦闘態勢を取ったが、いっぽうの勇者ルルはクスッと笑った。


「そんなことより、魔王さま」


 彼はゆっくりと魔王のほうへ歩みよる。


「な、なんだ……?」


 両腕を魔王に絡ませる。


 体に吸いついてくるようなそれは、彼を戦慄させ、心をかき乱した。


「僕はね、魔王さま。あなたに悪いことをするのを、もうやめてほしいんです」


 指先が魔王の皮膚をなでる。


 その動き、その感触は妖艶で、彼の心を骨抜きにした。


「魔王さまの体、素敵だなあ。ほんと、僕好みだ」


 ルルの態度に魔王は困惑している。


「勇者よ、おまえはいったい、何を考えている?」


 クスリ。


 ルルはまたほほえんだ。


「ねえ、魔王さま。これからどうするか、ゆっくりと話し合いませんか? ベッドの中でね……」


「……」


 ほどなくして、魔王は人間に不可侵の協定を提案した。


 異なるさまざまな種族どうしが、互いに歩みよりを見せ、異世界にはついに平和がおとずれた。


 なぜこんなことが起こったのか?


 なぜ彼が、たかがひとりの少年に過ぎないルルが、そんなことを成し遂げられたのか?


 それは誰でも知っているのだが、誰も口に出したりはしない。


 これは肉体によるコミュニケーションによって、異世界をひとつにまとめ上げた、ひとりの少年のストーリーである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る