僕のナンパ⑥

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 もう20年くらい前の話。その時、僕には彼女がいなかった。なんとか彼女をつくりたい。ということで、僕は知人とテレクラに行った。2人組をターゲットにすることにした。2対2が理想だ。


 ところが、アポイントがとれたのは1人の女性。仕方ないので、僕達はその女性と会いに待ち合わせ場所へと向かった。その女性は、電話で“Hしたくて仕方がない”と言っていた。これは、合流したら即ホテルか?


 待ち合わせ場所まで歩く間に、知人と話が盛り上がる。


「相手は1人やで、どないすんねん?」

「お互いが気に入ってしまったら、ジャンケンやろ」

「このジャンケンは、負けられへんなぁ」

「素敵な女性やったら、僕に譲ってくれや。僕は彼女がほしいんや」

「アホ、そういうわけにはいかんわ。俺も今は彼女募集中や」


 待ち合わせ場所に着いた。目印の白いジャケットに白いTシャツ。スレンダーな……半魚人?


「なんや、あの女か? 魚みたいな顔してるやんけ」


 知人が興味無さそうに呟いた。ここで、“半魚人”などと書いたら、女性の読者様が不快に思うかもしれない。だが、あえて書こう。あれは半魚人だった。本当に、魚みたいな顔をしていたのだ。


 だが! 僕はその半魚人を見て、“あり”だと思っていた。その時、知人に言われた。


「崔君も、あれはやめとくやろ?」


 そうだ、知人の目の前ではカッコつけたい。


「え! あ、ああ、当たり前やんか。あんな女性は好みとちゃうわ。さあ、テレクラに戻って他を探そうや」


 知人に、“僕はありやで”とは言えなかった。知人が“あれは無い”というのに、そこで半魚人に声をかけるのは恥ずかしかった。



 翌日、今度は僕1人でテレクラに行った。アポイントをとった。待ち合わせ場所に行った。昨日の半魚人だった。今度は、知人の目を気にしなくてもいいので、僕は半魚人に声をかけた。


「沖田さんですよね?」

「あ、永倉さん?」

「はい、まず食事でも行きますか?」

「ううん、お腹は空いてへん。なあ、もうホテル行こうや」


 あまりにもトントン拍子だったので、美人局なのかと思ったが、ホテルに行った。


 結ばれた後、情が湧いてきた。半魚人でもいいのではないか? とさえ思い始めていた。


 その時、半魚人が言った。


「今日は助かったわ。欲求不満やねん。旦那が全然してくれへんから」



「旦那がおるんかーい!」







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僕のナンパ⑥ 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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