第5話 少しずつ
「じゃあ早速、創部届出しに行こー!!」
私が言うと、実莉は呆れたように「ダメ」なんて言ってきた。
「えー!なんでダメなのー!」
四人しかいない教室に、私の声が響く。
私の発言に呆れた顔をしながら、実莉が言った。
「あのね。うちの学校では、部活を作るのに五人以上いなきゃいけないの!だから四人しかいない今、生徒会室に行ったところで創部出来るわけないじゃない!」
うぐ、流石は元生徒会長。よく知ってるなぁ…ていうか、創部に五人も必要ってこと知ってる人なんて、いるのかな?
むー、という顔をしていると、颯姫がパン!と手を叩いて言った。
「瑠奈はさっさと機嫌なおして。だったらどうにかして部員を集めればいいじゃん」
えー、颯姫に機嫌なおせとか言われた……まあいいけどさー。
すると、花蓮ちゃんがそうっと手を挙げて言った。
「あの、それなら、ポスターを作ったりするのはどうでしょうか。手当り次第声かけるより効率がいいでしょうし」
あー、なるほど!それは確かにいいアイデアだ!
他の二人も思ったらしく、うんうんと頷いている。
ていうかさ。
「花蓮ちゃん。別に敬語じゃなくていいよ?」
そう、それが気になったのだ!他の二人はどうか知らないけど、私は敬語じゃなくていいと思う。の方が仲良くなれる気がするし、ガチのアイドルならともかく、高校生アイドルをするのに上下関係とか必要ないと思うんだよね!
でも、花蓮ちゃんは困った顔で言う。
「えっ……でも、先輩たちは先輩ですし……」
別に気にしなくていいよー!
と私が言おうとしたら。実莉が立ち上がって花蓮ちゃんのところに行き、笑顔で言った。
「花蓮ちゃん。確かに私たちの方が先に産まれたし、先にこの学校に入学したわ。…でも、これからアイドルを始めるっていうところは一緒でしょ?だから、敬語じゃなくていいし、なんなら呼び捨てとかで呼んでもらっていいのよ」
わー、実莉、いいこと言うー!やっぱり、頭がいい人は違うねー!
実莉の言葉を聞き、花蓮ちゃんはんー、と言いながら、
「わかりまし……わかった、実莉ちゃん」
と言った。
むむむ……
これは、なんというか……
羨ましい!
「わー、羨ましい!ねぇねぇ私も呼んでー!」
花蓮ちゃんに抱きつき、オネダリする。と……
「花蓮を困らせないの!」
颯姫にひっぺがされました。くそう……
まあ、それはいいとして。
ひっぺがされた私は床に座り込み、手を高くあげて言いました。颯姫にひっぺがされた可哀想な私は。
え、根に持ってなんかないよ?ぜーんぜん!颯姫にひっぺがされたことなんて全然気にしてないよ!
「だったらさー、二手にわかれよ!顧問探し部隊と、ポスター作り部隊と!さっさと顧問見つけてた方が効率いいでしょ?」
私の言葉に確かにね、と頷く三人。ほら、いいこと言った!
「で、誰が何をする?」
颯姫が問うと、実莉が口を開いた。
「瑠奈と颯姫が顧問の先生を探しに行って、私と花蓮ちゃんがポスター作りをすればいいんじゃないかしら。花蓮ちゃんは今日入学したばかりだから、先生とあまり話してないだろうし。あと、二人にポスター作りを任せるのは心もとないもの」
なるほど、確かに花蓮ちゃんはポスター作りの方が良さそう。でもさ、いっこ言わせて。
「私たちはなんでダメなの!」
「そーだそーだ!なんであたし達はダメなのさ!」
颯姫と二人、実莉に対してぶーぶー文句を言う。おかしいじゃん!別にポスターくらい誰が書いてもいいじゃん!
すると、実莉はとっても冷たい目をして言った。
「だって、二人に任せたら……特に絵なんて描かせたら……どんな悲惨なものが生まれるかわからないもの」
え、そんなに私たち、絵下手かなぁ?颯姫はともかく(失礼)、私はそんなに下手じゃないと思うけどな!
と反論したい気持ちは山々だけど、とにかく早く創部したい、という気持ちに負けて、私は颯姫を引っ張って顧問になってくれる先生を探しに行くのでした。
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