夕焼け空に供養を

文月かんな

夕焼けぞら名を呼ぶだけの供養せむ

○青春

新歓を抜け出すふたり歓楽街まち涼し

夕ひばり明日もシフトが重なる日

告げられず夜明け流星群唸る

宵山のバイト浴衣で見舞い来る

ふたりきりサイダーの泡プクププク

曼珠沙華白い敷布にひとつ咲く

逢引きの釣瓶落しのぼくの部屋

聖夜デミソースふた皿分濾して

春別れる既決事項の口ぶりで

思い出を拭きとる窓に春来り

○秘密

ふと浮かぶ笑顔さくらの実すずなり

アップした花他妻のイイネ来る

他妻の万緑の風入る胸

青あらし夫優しとまがわれる

黙々と別の宿帳なつぼうし

蝉しぐれ再会の日を言い出せず

○永訣

絵葉書に椿三句と病状と

白百合の咲く日ラインで訃報来る

桜桃忌よき友逝くと妻に告ぐ

夕焼けぞら名を呼ぶだけの供養せむ

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夕焼け空に供養を 文月かんな @kuma9674

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