第158話 魔法金属は取り扱い注意:①

 オレは不死鳥フェニックスの尾羽根と老龍エルダードラゴンウロコとヒゲにオリハルコンの小片を半透明の結界で包みこんで部屋に持ち帰った。


 メイドのヘレンとマリアがついてきて「「お着替えのお手伝いを〜」」攻撃をしてきたが、柔らか結界でそっと彼女たちの身体を包みこんで足止めしてから、部屋に入って結界でドアを封鎖した。


 赤ん坊の頃から世話をしてくれていて、オレがコーバン侯爵領に行くことが決まった時には泣きながら同行すると訴えた二人に感謝はしているけれど、もう家族以外には言えないことや見せられないモノがあるオレには一人になる時間が必要なのだ。


 それに二人ともどこかの貴族やもしかしたら帝王にオレに関する情報を流しているらしいから、なおさらそばには居てほしくないんだよね。


 神眼で鑑定すれば、二人がどこに情報を流しているのか、どうしてそういうことをしているのかはわかるのだけれども、精神的に二人を裸にしてながめるという行為には気持ちが進まない。


 あきらかな敵意があるわけじゃなし、この世界で意識が戻ったときからそばにいてくれている身内の背信には目をそむけたいんだよ。


 二人の処遇については、父親ジェームズ母親オードリーに相談しないとダメだな。


 オレは持ち帰ったものを部屋に設置してある保管用の結界に収めて、全身にしっかり清浄クリーンをかけてから結界マジックハンドを使って着替えて、机の引き出しから魔法大辞典を取り出して、魔法金属の加工について読み直した。


 創造神サリーエス様の世界にいた時も読んでいたのだが、実際にミスリル・アダマンタイト・オリハルコンが手に入ったし、不死鳥フェニックス老龍エルダードラゴンの素材もあるから、無駄なく使うにはどうすればいいのか調べておかないとね。


 ミスリルを鉱石から取り出して精錬してから成形加工するのは土魔法・風魔法・鑑定魔法で魔力を使ってなんとなくできたのだが、アダマンタイトとオリハルコンはかなり精緻な魔法の使い方をしないと加工はできないらしい。


 アダマンタイトの剣が国宝級なのは、鍛冶師が魔力を込めながら精密な温度管理をして、加工できる状態になったかどうかを慎重に鑑定しながら進めないと、アダマンタイトがもろくなったり、爆発したりするようだ。


 それは鍛冶師が一人でやれる仕事ではなくて、複数の鍛冶師や火魔法・鑑定魔法の使い手がチームを組んで長時間に渡る工程を続けなくてはいけなくて、国家プロジェクトレベルに人員と費用がかかる。


 素材のアダマンタイト自体も入手するのが困難で、ダイヤモンド鉱石と魔素が分子レベルで結合したアダマンタイトを探して採掘できて持ち帰れる強者ツワモノ…高レベルの冒険者や採掘専門の山師が少なくて極稀ごくまれに見つかる程度で、そのほとんどは鉱石のままで珍重されている。


 オリハルコンはさらに加工が難しく、神の力:神威カムイを込めながらの加工になるから、人族がどれだけ頑張ってもできるものではない。


 オリハルコンの剣や武具は『創造神様からのたまわり物』として、伝説のモノになっている。


 あくまでも、そういう魔法金属がありますよという知識としての書き方で、実際にオリハルコンの剣や武具を扱うのにも神威に慣れないとダメらしい。


 神威に慣れた者…オレやセインさんのようにサリーエス様の加護を授かった者や、もしかしたらジェームズやオードリー・クラーク・ヴィヴィアンは使えるようになる可能性がある。


 それはオレの近くにいるからだ。


 オレは神威が身体の外に漏れ出ないように神威反射や神威吸収の結界で身体を包んでいるが、呼吸ができなければ死んでしまうので鼻や口の部分は空いている。


 オレが呼吸するたびに微量の神威が漏れている状態で、家族や使用人たちも少しずつ神威に慣れてきているはずだから、それが進めばオリハルコンの剣や武具を触っても急に体調が悪くなることは無くなるんじゃないかな。


 名刺サイズで切り分けたオリハルコンを家族に見せて、どういう反応になるのか確かめないとダメだな。


 もし平気で触れるようなら、魔法発動の補助具としての杖や剣の部品に加工して渡せはいいかな。


 この世界にオリハルコンの剣や武具がどれだけあるかわからないが、地上で加工できるのは創造神サリーエス様の加護を授かって神威が使えるオレやセインさん…神獣たちもできるのかもしれないが…くらいか。


 いずれにしても、この屋敷ではアダマンタイトやオリハルコンの加工は魔力を込めすぎての爆発や濃密な神威の影響を受けて近くにいる人たちが体調を悪くしそうだから、郊外…ヘブバ男爵領やコーバン侯爵領の山の中でやったほうがいいだろうね。


 オレは老龍エルダードラゴンからもらった金銀や宝石類にウロコを売って、マジックバッグを購入してもらおうと思いついた。


 不死鳥フェニックス老龍エルダードラゴンからもらったお土産の数々は庭の地下深くに埋めてあるが、オレがこの屋敷を長期間留守にしているあいだに誰かが掘り返さない保証は無いから、リンドおじいちゃんがヘブバ男爵領に大量の物資を持ち帰るのに使ったマジックバッグに入れて持ち運びたいのだ。


 老龍エルダードラゴンがオレを訪ねてきたのは帝都には知れ渡っているから、上質の武具に使えるウロコをオークションにかければ、購入したい人が多いだろうから、何枚か売ってマジックバッグを手に入れるか…。


 これもジェームズやオードリーと相談だな。


 アイツらは良かれと思ってくれたのだろうが、魔法金属やアイツらの素材は処分に困るよね。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


カクヨムコン10異世界ライフ部門に応募しました。


お読みいただけているみなさまには感謝の気持ちでいっぱいです。


本当にありがとうございます。


コンテスト期間中は読者様の反応が重要なポイントになるようです。


もし拙作がお気に召しましたら、☆や♥をいただけると、とても嬉しく思います。


レビューやコメントも、書き続けていく意欲が増しますので、お時間のある方は是非一言いただけると嬉しいです。


よろしくお願いいたします。

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