第156話 不死鳥と老龍:⑪

 オレはオリハルコンのかたまりを名刺サイズで厚みは二㍉で十枚切り取ると、残りは荷馬車に積み込んで、また土をかぶせてガッチリ固めてから鑑定反射・鑑定切断・物理攻撃無効を付与した半透明の結界で包みこんだ。


 もう一台の荷馬車には宝石類やアダマンタイト鉱石・ミスリル・金銀・とグレゴールのウロコにマウンテンギガベアーとオークキングの素材も積み込んで土をかぶせてガッチリ固めてから半透明の結界で包みこんだ。


 さてそろそろお開きだなと思っていると、グレゴールがオレに言った。


『アラン、今度はいつ会えるかわからんのじゃから、ワシのヒゲも持っていくといいのじゃ』


『ヒゲ…?、ウロコをたくさんもらったから、いらないよ』


ウロコは武具や剣を造るのに使えばよいのじゃが、ヒゲは魔法を発動する時に使う杖にすればよいのじゃ。どうやら魔法を使うのがうまくなるらしいのじゃ』


『あー、そういう使い方はあるね、でも持っていくってヒゲを切っていいってことなのか』


『かまわんのじゃ、いずれは生え変わりで抜け落ちるものじゃからな』


『そうか、そういうものか。じゃあもらうね』


 オレは結界ナイフで長さ二㍍くらいの太いヒゲを切った。


 手に持って感触を確かめると、なんだか魔法の発動がスムーズにいく感覚がある。


 グレゴールのヒゲを芯材にして、ミスリルで杖を造ってウロコを巻き付けて補強すればかなり強力な杖ができそうだし、魔法を使わなくてもその杖でぶん殴れば大抵の魔物は撃退できそうだ。


 オレがグレゴールのヒゲをしげしげ眺めていると、アンドリューが言った。


『アラン、われの尾羽根も持っていくのであーる。火魔法がうまく使えるようになるのであーる』


『うーん。それは嬉しいけど、尾羽根を抜くのは痛いんじゃないか?』


『いいのであーる。友誼ゆうぎを結んだ印として持っていて欲しいのであーる』


『んーッと、オレのこの世界の父親ジェームズ兄貴クラークも火魔法を使えるから、その二人にも渡していいかな?』


『いいのであーる。遠慮しなくてもいいのであーるよ』


 オレはアンドリューの尾羽根を抜こうと思ったが、切り取ったほうが痛くないかなと思って、結界ナイフで尾羽根を三本切り取った。


 試しにコレをアダマンタイトの剣の芯材にすると、火の斬撃を飛ばせる剣が造れるかな、出来上がりが楽しみだな。


〚どうやらアランとアンドリューとグレゴールは仲良くなれたようだね。私も加護を授けたモノ同士が仲良くなるのは嬉しいよ。さてそろそろお開きにしようかな。みな息災でいてくれよ。私はお前たちのことを見ているからね。では私は行くよ〛


 オレたちは頭を下げて、サリーエス様のミスリル立像から光が消えるのを待った。


 オレはミスリル立像を半透明の柔らか結界で包みこんだ。


『グレゴール、ここからお前が住んでいる断崖絶壁の地層の割れ目まで、人族の時間でどれくらいで行けるんだ?』


『そうじゃのう…、七〜八時間で行けるのじゃな』


『そうか…、じゃあ十時間で結界が解除されるように念を込めておくよ』


 オレは柔らか結界が十時間で解除されるように念を込めた。


『じゃあ、そろそろオレも帰るよ。またどこかで会おうな。ただし、今回みたいにいきなり来るんじゃなくて『念話』で連絡してから来てくれよ。じゃないと人族たちが大騒ぎするからな』


『わかっているのであーる』


『ホントかな?』


『信用して欲しいのであーる。我もまたサリーエス様のお叱りを受けるのはイヤなのであーる』


『とにかく、しばらくはおとなしくしておいてくれよ。オレがこの街を離れて山とか海の近くで暮らすようになったら、また遊びに来ればいいさ』


『そうであーるな。我も街に近い場所よりは山がいいであーるな』


『グレゴールもその時は遊びに来いよ』


『うーん、ワシはねぐらで眠っているのが好きじゃから、わからんのじゃ』


『まぁ、どうしても来いとは言わないからその気になったら『念話』で教えてくれ』


『わかったのじゃ』


『じゃあ結界の上の部分を解除するから、そこから飛んでいくといいよ』


 オレはドーム型に張った結界の上半分を解除した。


 グレゴールはオレが柔らかい結界で包みこんだミスリル立像をそっと鉤爪かぎづめでつかむと、上空高く飛んでいった。


 アンドリューはいつものように甲高くギョェェェェェェェーーと大きな声で鳴くと、グレゴールの後を追って飛んでいった。


 ヤレヤレ、アイツらやっと飛び去ってくれたか…、なんだかいろんなモノをもらって、嬉しさ半分迷惑半分でとても疲れたよ。


 グレゴールが付与してくれた水魔法と氷結魔法も練習しないといけないし、ヒゲとウロコも加工したいし…、やることが増えちゃったなぁ。


 ヘブバ男爵領には、いつになったら行けるんだろうか…。


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