第152話 不死鳥と老龍:⑦

 神威で作った前世でよく食べていた料理はグレゴールにも楽しんでもらえたようで、テーブルに出したものはすっかりたいらげられていた。


 オレは土魔法で作った石板とカマドを土に戻して、さてなにをしようかな…、と思っていたら、サリーエス様のミスリル立像からなにか熱い視線と無言の圧力を感じる…。


 んー、オレなにかしたかな?。


 あー、そうか!。


 デザートが無いよ!!って、おねだりかぁ。


 オレはサリーエス様のミスリル立像の前に造った結界テーブルにイチゴのショートケーキ・モンブラン・フルーツタルト・アップルパイ・チョコパイ・豆大福にスイカ・マスクメロン・梨・完熟マンゴー・パイナップル・柿・バナナを山盛りにして、熱い紅茶を添えて出した。


 アンドリューにも同じものを出したが、グレゴールには初めて食べるであろうフワフワのドーナツ・しっかり歯ごたえのあるオールドドーナツをプレーンなモノからチョコクリーム・ストロベリークリー厶・カスタードクリーム・生クリームのついたものを出したが、グレゴールは身体もデカいし口もデカいので、直径五十㌢くらいのサイズで出してみた。


 なんかドーナツというよりは、子どもの浮き輪みたいになっちゃったけど…。


 ついでにバケツ大のカップに氷の塊を入れて、シュワシュワする黒い炭酸飲料も出してやったら、飲んだ途端にむせやがった。


『なんじゃーコレは!、口の中がパチパチするのじゃ!!』


『面白い飲み物だろう、イヤなら他のものを用意するけど?』


『いや、コレはコレでいいのじゃ。それにこの輪っかはサクサクして美味いのじゃ。まことに人族は貪欲にうまいものを考え出すものじゃのう』


『うーん、正確にはこの世界にはまだ無いモノなんだけどね』


『んっ?、何の話しじゃ?』


『グレゴールはまだオレを鑑定していないんだろう?、やってみるとわかるよ』


『アラン、鑑定させるとアレがわかるのであーるぞ』


『まぁ、ここにはサリーエス様とオレたちだけだからいいさ。他の人族に知られると困るけどね。アンドリューもグレゴールもオレ以外に人族に知り合いはいないんだろう?』


『アラン以外だと神狼フェンリルを連れた人族と会ったことがあるのじゃ、たしかあの者はセインという名前だったのじゃ。ずいぶん前に一度会ったことがあるのじゃ。あとはワシの血肉を狙って襲いかかってきた愚か者ばかりじゃな』


『へー、セインさんに会ったことがあるのか、オレもどこかで会えるのを楽しみにしているんだ。それとグレゴールの血肉を狙って襲いかかってきた愚か者たちは…もうんだろう?』


『アランは優しい顔をして恐ろしいことを言うのじゃのう。そやつらは頭や尻にちょいとアイスボールをぶつけたり、凍らせてやったら、逃げていきよったのじゃ』


『その程度で収めたのなら、優しいのはグレゴールじゃないか。まぁそいつらのことはどうでもいいけど、オレを鑑定してみてどうだった』


『そうじゃのう…、うむうむ、アランは違う世界から渡ってきたのじゃな。じゃからこの世界にまだ無いモノが作れるのじゃな』


〚まだアランはこの世界で誰にも教えていないんだから、アンドリューもグレゴールも、それは秘密にしておくようにね〛


 そうなんだよな、いつかはジェームズやオードリーに打ち明けないとダメだなと思ってはいるんだけど、いつがいいんだろうなぁ…。

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