第16話 ヴィヴィアンは負けず嫌い
妹のフランソワはマシュマロのようなプニプニの柔らかいほっぺたとモミジのようにちっちゃな手のひらで、オレばかりではなく家族みんなのハートをわしづかみにした。
これといった用事もないのに、フランソワが寝かされている部屋に来て顔をのぞき込んだり、ちょっとしたしぐさにキャッキャウフフしている。
あまりにしつこいとフランソワが『安眠妨害ー!』と言わんばかりに泣くから、おつきのメイドたちにたしなめられることもしばしばである。
ちなみにフランソワが寝かされているのはオレの部屋。
オレ自体がまだ三歳になったばかりで、まだまだ手のかかる幼児だし、ヘレンとマリアも一人面倒をみるも二人もたいして変わりはないと志願したためそうなった。
もちろんあと一年もすればオレと一緒にこの家を出ていくことになっているから、他のメイドたちに指導しながら面倒をみてくれている。
フランソワのご飯タイムにはオードリーが部屋にやってきて、OPPAIを飲ませている。
あらためてオードリーのOPPAIを見ると四人の子持ちとは思えないほど形のよいOPPAIで、思わずジーッとガン見していると、メイドたちがニヤニヤ笑いながら「オードリー様、アラン様もお飲みになりたそうですよ」と余計なことを言いやがる。
オレはもうおこちゃまじゃないんだぞ…プンプン。
オードリーは「あらあら、アランはもうコレは卒業したと思ったのに……」と微笑みながら言うから、オレはちょっとムキになって言った。
「お・かぁしゃま・ありゃん・はぁ・もぅぉお・おにぃーちゃん・でぇしゅう。もぅぉお・ふちゅー・にょ・おしょくじぃ・でぇ・だぁぃじょぶ・でぇしゅ (お母様アランはもうお兄ちゃんです。もう普通のお食事で大丈夫です)」
オードリーはメイドたちと笑い合いながら頷いて「そうね、アランはお兄ちゃんだものね。フランソワのことをちゃんとお世話してあげてね」
「ふぁい・わかりぃ・ましゅた」
ヤベッ、またオードリーの『お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから…』攻撃にさらされちゃったよ。母親が無意識にかけてくる呪いの呪文をかわすすべは無いものかね……。
それはともかくとして、他の家族に比べるとオレはフランソワの可愛さを堪能する時間がタップリあるということだ。
オレは結界魔法の練習もかねて、結界箱を積み重ねて階段状にして、フランソワのベットの
わざと表面をザラザラにして白くした結界の板をチョウチョの形にして、二匹・三匹・四匹と複数のチョウチョをヒラヒラと飛ばしてやるとフランソワがキャッキャッと喜んで、手を伸ばして触ろうとする。だからカチカチに硬い結界の板ではなくて、フニャフニャの柔らかい結界の板にして、万が一フランソワが
簡単にやってるようだけど、まずオレが上に乗っても大丈夫な硬さの結界箱を六個作って階段を作り、それを維持したままで、今度はフニャフニャの結界板をチョウチョの形で複数作ってフランソワの顔の前でヒラヒラと飛ばすということは、複数の結界魔法を同時に発動して制御しているということだ。
右手で丸を書きながら、同時に左手で三角を書いて、ツーステップを踏んで踊っているのと同じなのかな……よう知らんけど。
硬い結界箱を六個積み重ねるのは簡単、フニャフニャの結界板をチョウチョの形にして複数飛ばすのも簡単。ではそれを同時に発動して、フランソワという動く標的に当たらないようにフワフワと複数飛ばすのはかなり難しかったが『イメージ最強・イメージさえあればなんでもできるーー!』というノリと勢いでなんとかできたが、かなり脳から汗が出たような感じがする。
オレが脳から汗を
オレが遊びでやってるから、簡単だと思っているみたいで「「ボクにも(私にも)できるーー!」」と言って、火魔法と光魔法でチョウチョを飛ばそうとするが、ところがギッチョンそうはイカのキン◯マなのだよ君たち。
チョウチョを作るためには、まず本物の蝶の姿をしっかりイメージして、魔力を制御してそのイメージをそのままに結界の板で複数作り、あたかも本物の蝶が飛んでいるようにフワフワと飛ばさないといけないから、かなり精密な魔力制御と魔力操作が要求されるのだ。
それにクラークよ、室内で火魔法を使うのはいささかマズイのではないかな?。もし魔力制御と魔力操作に失敗したら、屋敷が燃えちゃうし、フランソワも無事ではすまない。
オレとヴィヴィアンにメイドたちはクラークが火魔法を発動しようとした
クラークはビックリして火魔法の発動を止めたが、不満そうだった。
「フランソワに火魔法のチョウチョを見せてあげたいのに…、どうして止めるの?」
「お・にーしゃま・おへぇやぁの・にゃか・でぃゎぁ・ひぃ・まほー・はぁ・あびにゃー・でぇしゅ (お兄様お部屋の中では火魔法は危ないです)」
「フリャン・ぎゃ・お・しょとぉ・にぃ・でぇりゃりぇりゅ・よー・にぃ・にぁぁ・にゃぁたぁりゃぁ・みしぇて・あぎぇちぃくだしゃい (フランがお外に出られるようになったら見せて上げてください)」
「あっ!、そうだね。お部屋の中では火魔法は危ないね。わかった。フランがお外に出られるようになったら、見せてあげられるように練習するよ」
オレはどうせ火魔法でなにか生き物を作るのなら、チョウチョよりも鳥のほうがカッコイイんじゃないかと思った。
火の鳥(フェニックス)って見てみたいよ。威力を上げれば、攻撃魔法としてイケるんじゃないかなぁ。
ヴィヴィアンは光の
夢に出てくるぐらいに光のチョウチョがイメージできさえすれば、それを形にはできる。問題はそれをフワフワと飛ばすことだ。
それからヴィヴィアンはオレのそばに貼りついて、結界のチョウチョが飛んでいるのをジーッと見ていたが、プイッとオレの部屋を出ていくと、自分の部屋に閉じこもってしまった。
食事も部屋で食べ、座学もパスしてひたすら閉じこもっていた。
数日後やっと部屋を出てくると、オレの部屋にやってきて「できたわよ!」と言うと同時に手のひらに光のチョウチョを出してそっとフランソワのベットの上に飛ばした。
フランソワの頭の上で輝く光のチョウチョはとても綺麗だった。
自慢気に薄い胸を張って鼻息を荒くしているヴィヴィアンを見ると、眼の下に立派な黒熊さんを二匹飼っていた。
『姉よ、アンタは頑張った。とても頑張った。アンタがこんなに負けず嫌いとは知らなんだ。しかし眼の下の黒熊さんはどうにかしたほうがいいぞ』
オレはそれは口に出さずに、そっと結界の白いチョウチョを出して、ヴィヴィアンの作った光のチョウチョの動きにあわせて動かした。
頭の上でよりそうように動き回る白いチョウチョと光り輝くチョウチョを見て、フランソワはキャッキャッと歓声を上げていた。
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