結界魔法は最強です!ー創造神の加護と結界魔法を授かったオレは魔法のある世界をのんびり穏やかに生きていきたいー (旧題:さわるのキライ)

市ノ瀬茂樹

第1話 気がついたら魔法のある世界だった

 あ…、まただ。


 また夢を見ている。


 もう会うことの無い母親エロブタの夢だ…。オレがものごころがつく前から、父親は単身赴任で普段は家にはいなくて、盆休みと年末年始に数日同居してはどこかに行ってしまい、一年のほとんどを母親エロブタと二人で暮らす疑似母子家庭だった。


 毎月生理が近づくと母親エロブタは「身体が熱いのぉ…」とほざきながら、小学生のオレの股間をまさぐる。


 オレは眠ったふりをして朝まで我慢しなくちゃいけない生活にウンザリしていた。

 

 小学を卒業する頃に父親が単身赴任から帰ってきてからは、母親エロブタは何事もなかったように振る舞っていたが、一日も早く家を出たかったオレは、どこでも食っていけるように選んだ工業高校の自動車科に入学した。


 工業高校卒業と同時に「地元にいくらでも就職先があるのに…」としつこく言ってくる母親エロブタを振り切って名古屋の自動車工場に就職した。


 自由になる金と自動車整備士の資格を手に入れてからは、大阪や四国・九州の小さな整備工場を転々としていたが、北九州の解体工場でボロいジャッキで持ち上げたダンプの下で作業をしている時に、ジャッキが外れて車体に胸を押しつぶされて、あっけなく死んだ。


 小さい頃に母親エロブタにオモチャにされたせいで、人から身体を触られるのが大キライだったオレには彼女なんていなかった。


 同級生や工場の同僚からも気安く肩や腕を触られるとあからさまに嫌な顔をしていたので仲間はずれにされたが、そっとしておいてほしかったので気にしなかった。


 あちこちの工場を転々としたのも、そのせいかもしれない。


 胸を押しつぶされて息が止まる寸前に思ったのは、『やっと楽になれる』だった。


 もう人に身体を触られることも無いし、母親エロブタからの「たまには家に帰ってこい」メールを見なくてもいい。


 安堵のため息のような息を吐き出して、オレは意識を失った。




 ーーーーーーーーーー





 ふと気がつくと、白いモヤの中にいた。思わず胸を押さえたが痛くない。


 しばらく胸を押さえてじっとしていたら、声が聴こえてきた。


〚ん~~、キミ何してるのー?、もう身体から離れてるから痛みは無いよ〛


『身体から離れてるって、魂ってことか…』


 ひとりごとのつもりでつぶやくと、声が答えた。


〚そう、キミはもう魂だけの存在になってるんだ〛


〚これからキミは今まで生活していたところとは違う『新しい世界』に生まれ変わるんだよ〛


〚母親から植えつけられた心の傷を抱えて他人とのかかわり合いがうまくできずに幸せではなかったようだから、なにか特典をつけてあげよう、何がいいかな?〛



 母親エロブタにされたことを説明するのは口が腐る思いがしてイヤだったので『他人にむやみに身体を触られなくても生活できるようになれたら嬉しいです』と言ってみた。


〚なるほど………では結界魔法を使えるようにしよう、キミが心を許した人以外はキミの身体にさわれないようにすればいいよね〛


〚私の加護もつけておこう、これを使いこなせば楽しくなると思うよ〛


〚生活魔法も使えるようにしておくけれど、いきなり使いすぎないように注意するんだよ、理由はやってみればわかるからね〛



『結界…生活……、魔法が使えるようになるんですか?、それに加護をつけるって…アナタは神様なんですか?』



〚それはいずれわかるから楽しみにしているといい〛


〚これから行く世界では楽しく良き人生になることを願っておくよ〛





 ーーーーーーーーーー






 それから意識が遠くなり、気がついたら白い天井を見ていた。

 

 身体を動かしてまわりを見ると、木のさくに囲まれた布団に寝かされていた。


 茶髪のメイド服を来た若い女がオレを抱き上げて、お尻を触り、下着を脱がせ始めた。あらわになった下半身を見て、女はオレに笑いかけた。


『お前もエロブタかーー!、触るんじゃねぇーーー!』と叫んだつもりが口から出たのは「ホギャャャァァァ〜〜〜」だった。


 嫌悪感でいっぱいのオレはその若い女の顔にショ◯ベンをひっかけてやった。


 若い女は「キャアーー」と叫んだが、木のさくにかけてあったタオルで顔を拭くと、口の中で何か言いながらオレの下半身に手をかざした。


 やわらかい光がオレの下半身を包み、濡れていたオレの股間が乾燥してさっぱりとした感じがした。


『コレは魔法か…、本当に魔法のある世界に生まれ変わったのか…』


 オレは地球や日本じゃない異世界に転生したらしい。


 それから茶髪のメイドはオレを裸にして、濡れた布で全身を拭きまわしたあとに新しいオシメと肌着を着せてくれた。


 まぁ冷静に考えればセクハラではなくて、赤ん坊のお世話をしていただけだったんだが、人に身体を触られるのが大キライなオレには地獄のような時間だった。


 一日に何度も丁寧に『お世話』をしてくれるお陰で、もう縁の切れた前世の母親エロブタの夢を見るようになり、たびたび大声で泣き叫ぶことにはなったんだけどね。


 早く大きくなって他人に身体を触られない生活を手に入れないとダメだ。そのためには神様…?が使えるようにしてくれた魔法の練習をするしかないな。





ーーーーーーーーーー

拙作をお読みいただいて感謝いたします。


ありがとうございます。


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