第678話 覆面パトカーがやってきた?
9月になった。
先日は甲子園で後輩達を応援して、元気を貰った。
昔の仲間にも久しぶりに会えたし、無我夢中で白球を追いかけていた日々が蘇り、改めて僕も頑張ろうと思った。
早いものでシーズンも残り1か月ちょっとだ。
チームはここまで、118試合で58勝57敗の4位であり、首位とは5.0ゲーム差。
今シーズンは混戦となっており、優勝の可能性は残っているが、手近な目標はクライマックスシリーズ進出だろう。
3位の京阪ジャガーズとは1.0ゲーム差。
十分にチャンスはある。
クライマックスシリーズについては、不要論もあるようだが、僕は選手にとってもファンにとっても悪いものではないと感じている。
選手にとっては優勝が難しくても、次の目標になり、モチベーションの維持に繋がるし、ファン目線では、いわゆる消化試合が少なくなるので、シーズン後半まで熱い試合を楽しめるだろう。
今のクライマックスシリーズの仕組みは結構、うまくできていると思う。
もし2位、3位のチームが日本シリーズに勝ち進むには、まずファーストステージで2勝しないといけない。
(しかも3位のチームは、アウェーの中での戦いを強いられる)
そしてファイナルステージは、アウェーの中、6戦中4勝しないと勝ち抜くことはできない。
つまり少なくとも9試合のうち、6勝をしないと日本シリーズに進めないのだ。
しかもファーストステージとファイナルステージの間には、予備日が1日しかないので、最大10日間で9試合を戦うことになる。
一方、リーグ優勝のチームは6戦中3勝で良いので、 2位、3位のチームに比べて圧倒的に有利である。
とまあ、クライマックスシリーズに関する考察はこれくらいにして、本筋に戻ろうと思う。
ただでさえ今シーズンは、話が脱線することが多く、作者の元に苦情が来ているとか、来てないとか。
その後も僕は好調を維持しており、打率は、.324まで上がり、ついに打率ランキングの1位に立った。
シーズン序盤ならまだしも、シーズン終盤で打率ランキングの1位に立つ日が来るとは…。
この話を最初から読んでいただいている日本全国の皆様(日本の人口の約0.001%未満)は、きっと感涙にむせび泣いていることだろう。
ここまでの僕の成績は次の通り。
113試合 432打数 140安打 、打率.324、15本、67打点、29盗塁、出塁率.399
盗塁以外の主な数字は過去最高である。
2年連続の盗塁王はちょっと厳しくなっているが、主軸として素晴らしい数字ではないだろうか。
そう思いませんか?
さて現時点で打率首位に立ったが、首位打者には強力なライバルがいる。
人呼んで、覆面パトカーこと沼沢選手だ。
こっちがほぼ全試合に出場して、シーズン当初からコツコツと安打を積み重ねてきたのに、こやつはシーズン途中から固め打ちをして、まもなく規定打席に到達し、打率1位に立とうとしている。
こんな事が許されて良いのだろうか。
僕は声を大にして訴えたいが、ルールだから仕方がない。
覆面パトカー沼沢選手は、現在打率.331であり、規定打席 まで残り4打席となっている。
今日はホームでの熊本ファイアーズ戦であり、この試合で4打席回ってきたら、規定打席に到達し、打率ランキングの1位に躍り出る。
全くもって忌々しい。
だが僕には名案が浮かんだ。
「本林くん」
今日先発予定の本林投手は、全体練習を前に外野でストレッチをしていたので、近づいて声をかけた。
今シーズン、ローテーション入りした3年目、23歳の右腕で、MAX158km/hのストレートと、スプリット、チェンジアップが武器の投手であり、コントロールにはやや難がある。
「なんですか。隆さん」
「君、今日は調子どう?」
「はい、絶好調ですよ。好投をお見せします」
「うん、期待しているけどさ、君は立ち上がりはあまり良くないだろう」
「いえ、大丈夫です。今日は心技体整っているので、最初から飛ばしていきますよ」
「うん、まあそれは良いことなんだけど、最初は適度に荒れたほうが良いよ。
その方が相手打線は的を絞りづらいし。
ほら、先頭バッターにデッドボール与えるとかさ」
「嫌ですよ。そんなの」
「そりゃ、そうだね。ハハハハハ」
僕はスゴスゴと引き下がった。
チっ、勘の悪い奴め。
優秀な奴なら、僕が言わなくても、わからないようにやってくれるのにな。
気の利かない奴だ。
(僕はこんな奴に、タイトルを取らせないほうが良いと思いますが、皆さんはどう思いますか? 作者より)
シーズン終盤に打率を7厘上げるのは至難の業である。
まあ、自力で頑張るしかないか…。
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