第1話 ちょっと違う日常 side湊翔
1
「みーなーとー、湊翔。起きなさい」
眩しい日差しが部屋に差し込む。
俺は目をこすりながら、ゆっくりとまぶたを開く。
うっ、明るい……!
6月中旬の暖かく爽やかな空気を感じる。とたんに、勢いよく開けられるカーテンの音。
伸びをしながらベットから上半身を起き上がらせると、近くには仁王立ちのお母さんがいた。
「やっと起きた。湊翔、ぜーんぜん起きないんだから。ほら、朝ごはんで来てるから支度して早く降りてきなさーい」
それだけ言って、エプロン姿のお母さんは俺の部屋を出ていく。
壁にかけてある時計は、現在6時30分を差していた。
まだこんな時間なのに、外はお昼みたいに明るい。
この時期はもうだいぶ日が長いんだなあと思う。
5分くらいしてから俺はやっとベッドから降り、ふわあとあくびをした。
部屋をいったん出てからすぐ近くにある洗面所で顔を洗ってから部屋に戻る。
部屋の壁には学ランがかけてあり、俺はシャツに腕を通す。
6月から夏服になったから、シャツは半袖だ。
昨日から教科書が入れっぱなしの鞄を持ち、部屋を出た。
「眠い……」
まだ目が少ししゅわしゅわする。朝はなかなか目が覚めないし苦手だ。
ドアを閉めながらぎゅっと目をつむったとき、突然身体に衝撃が走った。
「うわあっ」
重いものがのしかかった感覚に耐えられず、そのまま床へ後ろから倒れこむ。
「いったあ~」
寝っ転がりながら思わずそう口にし、そろそろと目を開ける。
そしたらまさかの、目の前には人の顔。
それも、ずいぶんと見知った。いや、知らなかったら怖いか。
「うわっ、ごめん湊翔!ぼーっとしてた!」
慌てたように俺から離れて謝るのは、ぼさぼさの頭。
それにパジャマ姿の―――。
「あ、
俺の兄である、
この様子だと、まだ起きたばかりみたい。
「湊翔、けがしてないか?」
「大丈夫だよ。ちょっと痛かったけど。朝陽くんは、けがしてない?」
そういいながら上半身を起こし、勢いで飛んでしまった鞄を手に取る。
朝陽くんは立ち上がって、俺の手を取って立ち上がらせた。
「おれはなんともないよ〜。たぶん、寝ぼけてたんだと思う……」
と言って、ふらりと力がぬけたかと思うと、そのまま壁にガンっと頭をぶつけた。
うっ、痛そう……。
でも、朝陽くんはなんともなさそうに立ち直り、洗面所に向かっていく。
朝陽くんは、俺の2つ上のお兄ちゃん。俺は中1だから、つまりは中学3年生ということになる。
同じ市立中学に通っていて、成績優秀で運動神経も抜群。
朝陽くんは俺と同じサッカーチームに入っていて、すごく上手い。だからか、俺は兄弟としても学校の先輩としても、もちろんサッカーの先輩としても朝陽くんを尊敬している。
……寝起きはとんでもなく悪い……けど。
「早くしないと遅刻するよ~」
試しにそう言ってみるけど、たぶん、というか絶対聞こえていない。
でも朝陽くん、目覚まし時計ぶっ壊れたまま買い換えてないのに、よく自力で起きれたな。
俺は制服を軽く整えながら、1階に通ずる階段を降りて行った。
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