第9話 闇の医療組織の陰謀

星宮アメジストとルナ・シルバームーンは、クララの死因を解明した後、病院内で目撃した怪しい人物についての調査を開始した。彼女たちは夜な夜な病院内を巡回し、その人物を見つけ出す決意を固めていた。


その夜、アメジストはルナと共に病院の廊下を静かに歩いていた。月明かりが窓から差し込み、廊下の影を長く引き伸ばしていた。彼女たちの足音だけが静寂の中に響いていた。


「気を付けて、アメジスト。闇の医療組織は何でも手段を選ばないわ」

ルナが静かに警告した。


「分かってる。絶対に見逃さない」

アメジストの青い瞳には決意の光が宿っていた。


突然、アメジストの目が鋭く光った。廊下の影の中に、一人の黒いフードを被った人物が立っているのを見つけたのだ。


「いた…」

アメジストは囁くように言い、慎重にその人物に近づいていった。


「待て!」

アメジストは魔法の力を使い、一瞬でその人物の周囲に結界を張った。逃げ場を失った人物は驚きの声を上げたが、アメジストはフードを剥ぎ取った。


フードの下から現れたのは、病院で働く若い研修医、ケン・サトウだった。彼の目には恐怖が浮かんでいた。


「ケン、どうしてこんなことを…?」

アメジストは問い詰めた。


「私は…彼らに脅されていたんだ。家族を守るために仕方なく…」

ケンは涙ながらに真実を告白した。


ケンの話によると、彼は闇の医療組織に協力するよう強制されていた。組織は病院内での情報収集や、実験対象となる患者の選定を彼に命じていたという。


「彼らの目的は、病院のリソースを使って新たな医療技術を開発することだった。私が拒否すれば、家族が危険にさらされる…」

ケンは苦しげに語った。


「組織の背後には、軍事企業も関与しているんだ。彼らはその技術を軍事利用しようとしている」

ケンが続けた。


「軍事企業…?」

アメジストとルナは驚きを隠せなかった。


しかし、その瞬間、ケンの体が激しく痙攣し始めた。彼は胸を押さえ、苦しげな表情で倒れ込んだ。


「ケン、どうしたの!?」

アメジストは急いでケンに駆け寄ったが、彼の呼吸は次第に弱まり、やがて止まってしまった。


「これは…」

ルナがケンの体を調べ、驚愕の表情を浮かべた。「急に心停止するなんて…」


「何が起こったの?」

アメジストは涙ぐみながら問いかけた。


「すぐに解剖する必要があるわ。これは普通の死因ではない」

ルナが冷静に指示を出した。


アメジストとルナは、すぐにケンの体を病理解剖室に運び込んだ。彼女たちは慎重にケンの体を調べ始めた。


「まずは心臓を詳しく調べるわ」

ルナが言い、魔法陣を使って心臓の内部を詳細に映し出した。


「見て、ここに微細な金属片が…」

ルナが指し示した箇所には、クララの時と同様にナノマシンの痕跡があった。


「またナノマシン…これが彼の死因だったの?」

アメジストは驚きと怒りを隠せなかった。


「ええ、このナノマシンが心臓に損傷を与え、急激な心停止を引き起こしたのよ」

ルナが冷静に分析結果を伝えた。


「闇の医療組織は、ケンが真実を話すことを恐れて、ナノマシンを使って彼を殺したのね…」

アメジストは悔しさに震えながら言った。

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