第6話 第一階第四号室~鏡~
「・・・こんにちは~。」
沙月はゆっくりと様子を伺いながら、第四号室の中へと入る。するとそこには左右に大きな鏡が掛かっている部屋が広がっていた。そう、合わせ鏡の事だ。
「うわっ、私の苦手なやつ!!さっきのおじいさんの部屋とは全然違って殺意に満ちてそうで怖い・・・。」
すると突然左右の鏡いっぱいに女の顔がずらりと浮き出てきた。何百もの生首に監視されている光景はどうみても恐怖しか感じない。怖がりな沙月は叫ぶ。
「き、気持ち悪い!!蜘蛛よりも気持ち悪いよ!!どうすればこの部屋を抜けられるの!?」
鏡の女は特になにも言わない。ただ無言でこちらの様子を見ているだけだった。
「喋ってよ!!怖いから!!何故そんなにいるの!」
沙月はしゃがみ込み、目線を合わせないでいた。すると突然全員が一斉に同じ言葉を発した。
『助けて・・・助けて・・・私の体はどこにいったの・・・。』と。
どうやら数百いる鏡の女はそれぞれ自身の体を探しているらしい。生前収容所で首を斬られて体と別れてしまったのだろう。悲しい現実だ。しかしそんな言葉を聞いていた沙月はあまりの恐怖に胃に入っていた物を吐いた。
『汚い、汚らわしい、探せ、探せ!!!』
その様子を見た女達は突然殺意を沙月に向け、目から赤い光線を沙月に浴びせる。
「うわっ!・・・って攻撃は当たらないんだった。どうして皆体を欲しているの?」
沙月は大声で女達の耳に届くように叫んだ。すると女達は泣き始めた。
『憎い、憎いよ・・・。何故私達が敵国のスパイなんかしなきゃいけないの?結局なにも手掛かりを見つけられずに、斬り殺されて・・・。恨んでいる、今でも!!!だから五体満足のお前が憎い!!殺してやる!!!』
女達は次々に赤い閃光を沙月に浴びせる。その攻撃に当たる沙月はなにも痛みを感じなかったが、女達の無念の叫びが脳内に直接響いてきた。
「うっ、母さんの言いつけを守らなきゃ・・・。でも涙が出てくる!!皆話が重いよ!!今楽にしてあげるから!!!」
沙月は女達の無念の心に涙を流しながら、霊鎮の術の構えをする。
「少し痛いけど・・・ごめんね!霊鎮の術その3・朧破の滅光!!」
沙月は鏡に向かって赤い閃光を浴びせた。それを喰らった女達は燃え上がり、苦しみながら消滅していく。そしてその閃光は鏡で跳ね返り、部屋にいる霊全てを焼き倒した。
「ハァハァ、この術を使うと体力が削られるよ。筋トレやっておいて良かった・・・。」
沙月は恐怖と術発動による疲れでその場にへたり込む。すこし休憩してから次の部屋へと進もう。
すると突然母親から電話がかかってきた。
「うわっ!驚かせないでよ!!どうしたの?」
『いや、沙月が今どこまで進んでいるか聞きたくて。』
「あーそういう事だったのか・・・。今第四号室をクリアしたところだよ。霊鎮の術を6回も使ってへとへとだよ・・・。」
『っ・・・!!分かったわ、ありがとう。また連絡するね。』
「はーい。」
・・・
「あり得ない・・・。沙月にとって霊を浄化するのは天職なのかもね。」
母・早苗は電話を切った。しかしその手は震えていた。何故なら霊鎮の術は神条家の血筋であっても一日1回しか使えないほど体力が削られる技だからだ。20年前最強だった早苗も無理しても2回までしか繰り出せなかった。それほどこの術は生身の人間にとって命に関わるものであるのに、それを既に六回も使って普通に話している沙月はあり得ない才能を持っていたが、早苗はその事に関して言及する事なく次の行き先へと向かっていった。
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