第3話「いきなり遭遇しました、押忍!」

隣町までは2日間ぐらい歩くとのことだからのんびりと歩いていくおれたち。周りを見渡すと谷や渓谷があるから日本の雰囲気とはやはり違う。この世界について知る必要がありそうだ。


「そういえばなんでアンナさんは冒険者になったんですか?」


まずはアンナさんについて知ろうと思った。しばらく同行をしてくれる仲間についてはやはり知る必要があると思ったからだ。どんな人物や性格などの情報を知れば戦いの時のスタイルなど見えてくるものだ。


「いやシンプルにお金稼ぎたかったんだよねw」


冒険者は子供などの未成年や身分関係なしになれるがやはりリスクが高いことから報酬などにも力を入れている。いろんな所へ冒険をしてモンスター退治などをする英雄になれるため、子供がなりたい職業ランキングでは常に1位を獲得している。親からするとさせたくない職業の間違いじゃないのかとは思うが。


もちろん理由も人によって千差万別だ。お金稼ぎのためにする人もいれば自分の名誉を高めるために冒険者になる人もいる。アンナさんは前者のタイプだったようだ。


「まぁせっかくならアンナさんの活躍見てみたいよなーw」


正俊はワクワクしながらアンナさんの方を向いて煽っている。


「何言ってんのよスライムにすら勝てないくせにーw」


アンナさんはベーっと舌を出しながら煽り返してきた。アンナさんにとっては確かに足手まといになるのかもしれないがいずれおれたちにも倒せるモンスターだって現れるはずだ。それこそゼリー状以外のモンスターなら。


そう思ったのも束の間、目の前に橋がかかってありそこを抜けると街に辿り着くとのこと。ここまでモンスターは1匹も出現していないことからなんだか拍子抜けな感じがしたが


「おい、なんか橋の上になんか飛んでないか?」


正俊が何かが上空に飛んでいることに気づいた。すっごく大きいモンスターが口を開けながら羽を動かして飛んでいる。横を向くとアンナさんがまるで恐怖に支配された青ざめた顔で身震いしている。


「う、うそでしょ...どうしてあいつがこんな場所に」


何やらとんでもないモンスターのようだ。気をつけながら橋を渡ろうとした瞬間にそのモンスターはおれたちに気づき、炎を吐いてきた。咄嗟におれたちはアンナさんを抱き抱えて回避していった。


「大丈夫ですか!?」


「う、うん。でもなんでA級モンスターのスザクが...」


「「スザク?」」


「貴様ら、なぜこの橋を渡ろうとする...」


「うわ!?あのモンスター喋ったぞ!!」



まさかモンスターが人の言葉を話せるとは思っていなかったから言葉を発したことに驚きと恐怖を感じてしまった。


そのモンスターは鳥のモンスターで正におれたちの世界での四聖獣と呼ばれる『朱雀』とほぼ瓜二つの存在だ。羽一つ一つが太陽の光により輝き反射している。


少なくても相当な知恵がそのモンスターにあるのだから。なら交渉の余地もきっとあるのかもしれない。そう思ったおれはなんとか言葉を振り絞った。


「おれたちは橋の向こうの街に荷物を届けに来たんだ。何もしないのならこっちも何もしない!」


「黙れ、人間など信用に値しない生物にそんなことを受け入れる道理などない。」


どうやら話し合いは通じないようなモンスターだ。この橋を住処にしているのかなにか特別な理由があるのかわからないがこのままだと荷物を届けることができない。


「アンナさん何かこのモンスターは何か効果的な攻撃とかあるんですか?」


「無理よ...私たちじゃ倒せないわ...」


さっきまでの威勢が一気になくなってしまった。まるで小さい子供が親に叱られて泣きべそをかいているように半泣き状態になっている。アンナさんは戦えない。ならやることはひとつだけ。


「正俊、いけるか?」


「あぁ!準備は万端だ!」


おれたちは拳を付き合わせ、空手の帯をそれぞれ締めていく。やはり戦う時には気合いを入れて集中させていかないといけないためだ。


「え、ちょっと待って!スザクは物理の攻撃でしか通じないのよ!剣も魔法も兵器も無効化されてしまうの、あなたたちのレベルじゃ勝ち目なんてないわよ!!」


なるほど、いいことを聞いてしまった。


「つまり、格闘術は通用するってことですよね。」


「え?」


「ならいける!ついに初めておれたちの戦いが始まったな!」


「あぁ!いくぜ!」


「何かしようとしているみたいだが無駄だ。貴様ら冒険者がどんな攻撃をしようが我が無効化させてやる。」


ついにおれたちの正式な戦いが始まった。スザクはさっそくおれたちに向かって飛んできた。その機動性と反射する羽を利用して目眩しをしながらおれたちを撹乱していく。距離を取りつつまずはスザクの胴体に対して裏拳をぶつけた。


「ぐっ、なに!?」


「ぐっぐわぁ!」


スザクにダメージを与えられた。やはり体術は効果があるようだ。だが反動がでかい、おれの拳がまるで焼きを入れられたようにやけどを負ってしまった。さらに見た目に反して羽はとてつもなく固い。手の甲はたった一撃で血だらけになってしまった。


「大丈夫か勝利!?」


「あぁ、なんとかな。けどさすがに直接拳や蹴りは厳禁なのかもしんないな。」


「なるほどな、貴様らは武闘家か。

確かにそれなら我に攻撃を加えられるだろうが果たして我を倒すまでに貴様らの体は持ってくれるかな?


そうら、身を焦がされるような思いをするんだな!」


スザクは翼を何回か羽ばたかせて羽をいくつか舞い散らせた。そしてその羽に口から火を付与させて羽ばたきによる風でまるでミサイルのように飛ばせてきた。おれは片手を庇いながら避けるのが精一杯だった。辺りに羽に付与されていた火が野原に移り少しずつ燃やしていく。


少しずつ周りの気温が高まっていき、汗が止まらないくらいの猛暑を感じる。おそらくスザクの狙いははなからこの燃えるフィールドを作ろうとしたんだろう。どんどん一酸化炭素を含んだ煙がおれたちを蝕んでいく。呼吸がしずらくなったため集中力が切れそうだ。


「このやろう!」


正俊は飛び膝蹴りを翼に向けて放ったがそれを交わしなおかつ正俊を足でつかみ、なんと自ら太陽の光を浴びて羽を反射させる。その反射光を正俊の目に浴びせていった。


「ぐわっ目が!」


「今だ!燃え尽きろ!」


そして翼を正俊に被せた瞬間、正俊に火が燃え移ってしまった!そして正俊を振り落とした。


「ぐわぁぁー!暑い!あついぃー!!」


「正俊ー!!」


すぐにおれはアンナさんが持っていた水を正俊にぶっかけて消火した。よかった、とりあえずなんとか致命傷は免れたが傷が思ったより深い、そして何より目を塞がれたためしばらくは見えない状態になっている。


「正俊、正俊!しっかりしろ!!」


「うぐっ、勝利...見えねぇ、暑い...」


「休んでろ正俊、あとはなんとかする。」


「すまねぇ...」


「人間ごときが、我を倒すなど不可能なのだよ。体術しか効かない我が何も対策をしていないとでも思ったか?やはり浅ましい。」


一体どうすればスザクに一矢報いることができるんだ?この状況を何か打開することは...


急いでメニューを開き何かできるか確認してみた。すると女神様から付与された何かが表示された。


これは...まさか...





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