だって、春がそう言うから

路地表

第一話 夏の終わり

 天空より愛を込めて




 だって、春がそう言うから。

 だから僕は、夏を消したんだ。


 大体、みんな春に負担をかけすぎたんだ。

 なぜか自然と、って信じている。ただサイクルで回っているだけなのに、誰もそれを疑わない。そんなことを何億年も続けていたから、春に限界が来てしまったんだ。


 ついこの間のことだよ。春が「まだ死にたくない」って、痛みから逃げるように枝を揺らしていたんだ。でも、残念なことに、それはかえって桜を撒き散らすだけだったんだ。僕は春のことが好きだったし、あんまりにも可哀想だったから──

 ……そんな怖い顔されても困るよ。

 均衡が崩れるって言われてもさ、それって、そんな大きな問題なのかな。

 だって、元から崩れてる世の中じゃないか。みんなそれに気が付きながらも、その中で何とか均衡を保つじゃないか。


 人間の強さは、適応力だよ。時期に慣れるさ。










 そうして、世界から夏が消えた。


 代わりと言っては何だけど、新しい季節を追加しておいたので、まあ許してください。

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