イセカイジュウ

素良碧

第1話 襲来

1 襲来

その町が急変したのは、10分前であった。


人が溢れかえり、皆様々な生活をしていた。

喧嘩などはあるけれど、些細なもので。

いずれにせよ人々の笑顔は溢れかえっていた。


だがしかし。


《グギャアーー!》


建物は壊され。


「だ、誰か助け…」


《イタダキマス》



人々は次々と喰われていた。


《ギャハハハ》

《ゴチソウイッパイ》


町を襲ったのは。

鋭い牙と爪を持ち

有翼で空を飛び

口からは時々火粉を出す

紅い鱗に覆われた


「な、なんで…」

「ドラゴンがこんな所に!」


小型のドラゴン集団だった。

少なくとも10匹以上はいる。

中には人に向けて、炎を吐き。

火だるまになって苦しんでいるのを

楽しむドラゴンもいた。


《ミテミロ、ニンゲンオドッテイルゾ》

《シュミガワルイナア、オレハクウホウガイイ》


空を飛ぶ2匹のドラゴン。

そのうちの1匹が。


《オ、マタクイモノデテキタ》


「ママー!」


泣き叫ぶ少年が駆け出した先に居るのは

ドラゴンによって壊された建物の下敷きに

なっている少年の母親。


それを狙いすましたドラゴンは

親子の元へと向かってくる。


「助けてー!」


「うおおおー!!」


少年が叫んだ時、ドラゴンは倒れた。


「だ、大丈夫か?」


その声は男性だった。

ドラゴンを強く睨みつけていた。

剣を構えてはいる

がその剣先はボロボロ

ろくな装備はしておらず

全身ガタガタ震えている


恐らくいきなりの攻撃だったため

油断していたドラゴンにたまたま当たり

さらには当たった箇所が喉元だったことから

ただ運が良かっただけのことだった


《ガタガタフルエテイルゾ》


ドラゴンは男を心底バカにしたように笑う

男は少年と瓦礫に埋もれている母親を見て

大きく息を吸い込むと


「うるさーい、いいからかかってこいやあ!!」

と大声で怒鳴り返すのであった



町が混沌としている中


「ふああー…」


場違いなほどの呑気な声がしたのだが

まわりの阿鼻叫喚によって簡単に打ち消された


「ずいぶん寝たなあ…。あれなんか暗いしうるさいなあ、祭りでもしているのかなあ…」


ぐううとお腹の音が


「ああお腹すいたなあ、ずっと寝ていたから全然食べていな………………。いい匂いがする」


瓦礫の山が震えたかと思った瞬間


ドーン


と爆発したのかと思うくらいの大きな音が

鳴り響く。


そこにいたのは


「あー、久しぶりに動いたから余計に腹へったわー」


頭に大きな茶色の片角の

所々茶色の鱗がある

年端もいかない少年がいた。


大きな音に惹き寄せられ

たくさんのドラゴンがやってくる。


それを見て少年は


「……ご馳走の山た」

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