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『夏祭りに青山くんを誘えばいい』と友達に言われて数日が経った。相変わらず彼は忙しそうで、なかなか誘えずにいる。七月の第二週、私の周りでは友達同士で夏休みの予定や、休み中の課題についての話題で盛り上がっていた。高校生活最後というのがフィルターになって、見える景色全部をキラキラさせている。
「はぁ......」
最近は自分が妙に意識しているせいなのか、会えない日が続いている。もし会えたとして、祭りに一緒に行く相手が私でいいのかも正直よく分からない。
「久しぶり」
考え事をしていると、少し後ろの方から声をかけられる。彼だ。夕日に照らされているせいか、いつもよりキラキラして見える。かっこいい。
「久しぶり、予定とか大丈夫だったの?」
「うん、今は落ち着いてる。最近雉真と話せてないから、ちょっと話したいなって思って」
「そっか」
かなり素っ気ない返事になってしまった。本当はたくさん言いたい言葉があるのに、緊張しているのか上手く出てこない。
「夏休みどうすんの?」
「なんで?」
「だってほら、高校生活最後だしさ」
「そうだね....あのさ....」
今しかない。そう思った。放課後の少しの時間じゃ全然足りない。彼のことをもっともっと知りたい。そのためには、このタイミングを逃してはいけない気がした。
「八月の初めにある夏祭り....一緒に、行きませんか?」
顔が熱い。今の私の顔はきっと真っ赤なんだろう。私は恥ずかしくて下を向く。彼からの返事はまだない。下を向いているから、彼が今どんな顔をしているのかも分からない。
「....いいの?」
彼の声で私は顔を上げる。彼はとても驚いた顔をしていた。
「いいのって、なんで?」
「いや...高校生活最後なのに、俺でいいのかなって」
「...だから、最後だから青山君とがいい。良くなかったら誘ってないし」
「そっか....嬉しいよ。ありがと」
そう言って彼は笑った。今言った言葉は告白っぽかったかもしれない。
「射的とかやりたいかも、雉真は?」
「私はあんまり夏祭りとか行かないから....」
「え?本当に?」
そう言う彼はいつもよりハイテンションで、とても楽しそうだ。でもそりゃあそうか、夏祭りというと陽キャの大好物。夏の一大イベントだからテンションも上がるよね。
「イベント事、好き?」
あまりにも楽しそうなので、聞いてみた。彼は頭を思いっきり縦にふった。
「好きだけど、忙しくてイベント行くのとか久しぶりでさ。ごめん、はしゃぎすぎた....なんか恥ずかしいわ.....」
そう言う彼の頬は少し赤い...ような気がする。彼のこんな表情は初めて見た。可愛い。
「行こう。射的しに」
「いいの?」
「いいよ、久しぶりなんだから楽しまなきゃ。」
こうして私は、夏祭りに彼と一緒に行くことになった。
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