空を映し出す地

Naomippon

第1話 空を映し出す地

 古くからアメリカ大陸に住んでいた人々がいた。彼らはこの世に存在するあらゆるものとの平和と調和を大切にしていた。自分たちは大いなる宇宙の一部族だと思っていた。自分たち以外にもこの大地には、動物たち、植物たち、鉱物たちという部族があると思っていた。そして、空の星々にもまた魂があり、自分たちと同じ宇宙の一部族であると思っていた。山にも、海にも、風にも、水にも、目に映るものすべてに魂が宿っていると感じていた。

 彼らは、自分たちが住んでいる土地を「空を映し出す地」と呼んでいた。泉に空が映るように、土地に空が映っていることを感じていた。空は、すべての部族を統べる「大いなるもの」の象徴だった。空の下に星々があり、太陽があり、月があり、地の上を行く自分たち「ひと」という種族も、すべては、ひとしく空の子供たちなのだ。


 彼らはなにかを決断するときに、自分たちだけの意見では決めなかった。自分たちは言葉を通じて意見を交換することができたが、言葉の通じない部族たちの意見も必ず取り入れていた。動物と親しいものは、動物代表として意見を述べた。植物と親しいものは、植物代表として意見を述べた。太陽の代表、星の代表、魂が宿ると感じるあらゆる代表の意見を取り入れ、「空を映し出す地」が調和を崩すことのないように気を配ってきた。


 海の向こう側から新しい人々がやってきたときも、彼らは別に驚かなかった。言葉が通じないことは大きな問題ではなかった。部族の誰かが新しい人たちと親しくなり、自分たちの会議にはその者が「新しい人たち」の代表として会議をすれば、今までと同じ調和が保てると信じていた。


 海の向こうから最初にやってきたのは男たちばかりで、しかも気が荒い人間が多く含まれていた。しかし、もとから大陸にいる部族の中にも、戦いを好む部族はあった。たまたまそうした部族がやってきたのだと彼らは思った。海の向こうからやってきた人々は、自分たちより色が白かったので、「白い人たち」と呼んでいた。


 内陸部に住んでいた部族の近くに、最初に住み着いた「白い人たち」は、家族を連れてきていた。家族でやったきた「白い人たち」は、戦いを好むわけではなかった。前から住んでいる人々を追い立てるようなこともせず、自分たちで畑を耕し、収穫を取り入れていた。幸いなことに、その土地は非常に豊かな土地であった。古くからいる人々と、新しくやってきた「白い人たち」は、調和して暮らしていた。この大陸をおおう戦争が起きるまでは。

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