別れの詩

桜の花が夏をあきらめて散るように

枯れ葉のように彼は散る

その命も記憶さえも

だけどブラックホールの奥にある

アーカシャ、虚空に昇るから

病める心も止めるシも

ここで留まれ小鳥たち


水面に映る揺らいだ火

別れ想って幾星霜

紡いだ歴史、愛たちも

最期は輪廻の輪に還る


一人にしないで、嘆いた日

自分でやらなきゃだめなんだ

孤独を想って、泣いた夜

それでもきっと朝が降る


まだ、そこにいる?

欲まみれで、踊ってる

丘の上で待っている

記憶はなくても解ってる


ありがとうの和が一つ

テーゼ、セレーナ、水門が

ラカン・フリーズの門が開く


やっと見つけた、帰る場所

そしたら涙が溢れちゃう

涅槃のような安らぎと

子宮のような安堵感

愛で包まれ目を閉じる

瞳の奥で火が揺らぐ

凪は渚で夢の園

ようやく叶った祈り歌


永遠のような今たちが

原初に起きた波たちが

ようやく止まる、フリーズへ


始まりがあれば終わりがある。生命のそれは死ぬことだ。恐れはある。痛みもある。だけど、体は死んでも意識は還る。天上とか楽園とか、知らないけど、あることだけは知っている。


帰る場所、ようやく見つけた。

よかった。みんなちゃんと。

だから、いつまでもこうしていちゃいけないんだ。

いずれ還る命なのだから。

全て自分で始めたんだ。


目覚めると、涙が頬を伝う。

嗚呼、また死ねなかった。でも、何故かホッとした。

還りたかったのに。あの至福は幻想じゃない。

だけど、もう自分から還ろうとするのはやめよう。

せっかく自分で始めた命なのだから。

リタイアなんて嫌だもの。


外れる音がする。

あの冬の日からずっと私を捕らえていた枷が。

時が動き出す。

フリーズしていた世界が陽に照らされて融け出す。


メメント・モリ

私は死を望む

死の快楽を知っている

死を忘れない

忘れられない

あの幸福の残滓はきっと

私の脳に残り続ける


だから、だけど、きっと


いつか、いつの日か

全ての私の我慢が実を結んで

大団円がやってくる

別れの詩はこんなもん

じゃあさようならまた会う日まで

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