地獄で恋愛!?地獄に落ちたら暇を持て余している悪人達は、恋愛ばかりしていてラブラブな世界だった!!

@amahazinsei

1.地獄までの列車は恐怖でいっぱい

【プロローグ】楽しい地獄のお昼ご飯!


「みんな、せーので、いただきます!!」


「いただきます!!」


地獄の生活にも慣れてきて、今日もお昼ご飯が楽しみだった。

でも、今日のご飯はこれはなんだ!?

でっかい七面鳥に、でっかいフライドポテト。

でっかいオレンジジュースに、でっかいイチゴケーキ。

豪華過ぎるでしょ・・・。


「ねえ、今日ってクリスマス!?」


「いや、私の誕生日」


そう言って、可憐な顔をしながら、二宮はオレンジジュースを一気に飲んだ。


「え!?二宮さんの誕生日だけ、なんでこんな祝われているの!?」


「そりゃ私、この地獄の支配者、佐竹様に好かれているからね」


「おい!お前には俺がいるだろ!!」


二宮の彼氏の竹田が、二宮に一気に怒り出す。


「竹君、佐竹様に奪われないように、思う存分愛してね!!」


二宮はいたずらな顔をして、竹田にウインクする。


「てめえ、じゃあいますぐキスしようぜ!!」


「おうよ!!」


なんで昼間っから、二人のキスの顔を見なくてはいけないのか。

しかも、思いっきり、舌を入れたディープなキスを・・・。

うわあ・・・めちゃくちゃにしてる・・・。


「ねえ、堀越君、羨ましがってるでしょ」


夢木さんも、僕に向かっていたずらな顔をして、ウインクまでしてくる。


「いや、別に!!羨ましくないです!!」


「堀越君も、いつか誰かとキス出来たらいいね。ね!!」


夢木さんは、七面鳥もフライドポテトも目もくれず、いきなりイチゴケーキをむさぼり食っている。

いつも目の前に座ってくれる夢木さん。

その食べる時の表情も可愛くて、僕はそれもあって、ご飯の時間が楽しみなんだ。

地獄の生活も慣れてきて、楽しみが増えてきている。

最初は本当に怖かった。

それは、遡る事、三週間ほど前。

あの時の事を思い出す。

それは、とてもとても、恐ろしかった・・・。



【第一話】地獄までの列車は恐怖でいっぱい


真っ暗闇の中で落ちていく。

何分も、何十分も、何時間も。

いつまでこの落下が続くかわからない中、時々何かが光って見える、

それは、思い出の品。思い出の景色。思い出の人々。

幼稚園で、みんなで遠足に行った時の思い出。

お弁当箱を開けて食べている幼馴染が光って見える。

そして、火によって燃やされ、消えていく。


沢山の思い出、沢山の愛すべき人々、一つづつ燃やされていく。

ここはどこだろう。何をしているのだろう。

僕はぼーっとしながら、真っ暗闇の中、落ち続ける。


そして、着地した。


地面にお尻がぶつかるも、全く痛みは感じない。


「おい!!お前!こっちに来い!!」


そう遠くから呼びかけてきたそいつは、豚の顔をしていた。

小汚いピンク色で、シワだらけ。細くて潰れそうな瞳に、目立つ大きな鼻はまさに豚そのもの。

いや、顔だけじゃない。手足も豚だ。

襟の立っている真っ黒な軍服のような物を着ていて、長袖の先に豚の手が見える。

気持ち悪い。

どうなっているんだ。


「なにぼけっとしてんだ!!はやくこっちに来るんだ!!」


こっちに歩いてきて、俺の頬を叩く。

痛い。

手を掴まれ、引っ張られ、歩いていくと、真っ赤な列車が見えた。


全体的に光沢の強い列車で、車体は真っ赤だが、車輪は金色。とても悪趣味に思えた。

その入り口の扉から中に入ると、足元が泥だらけでぬかるみ、すぐに転びそうになった。


「ここは、どこですか・・・?」


とても怖い中、豚に向かって勇気を出して聞いてみる。


「ここは地獄までの道だ。この列車に乗って、地獄まで突っ走るんだ。お前は永遠の地獄に住むんだ。可哀想にな」


そうか。

思い出した。

僕は死んだんだ。

飛び降りて死んだ。

そう、自殺をした。

そしたら、真っ暗闇の中に入り込み、何時間も落下しつづけ、そして、ここに辿り着いた。


「まあ、そんな悲しい表情をしているのは、気持ちわかる。だがな、お前は罪を犯したんだ。地獄に住むのは仕方ないって訳だな」


僕の罪。

それはおそらく、自殺だろう。

自分を殺害した。

それで、地獄に住む事になった。


「まあ、突っ立ってないで座れ。

今はお前しか乗っていない、お前専用車両だ。

今日はおそらく、他に誰も乗ってこないだろう。

お前一人で、地獄に突っ走るんだ」


普通の電車のように、車両の左右に長い椅子がある。

僕はおそるおそる座り、ふと天井を眺めた。


天井も赤い。

そこに、目つきが鋭く、口がニカっと開いていて白い歯が剥き出しな、角の生えた、怖い顔つきの鬼の顔が沢山描かれている。

僕は怯えた。

なんて怖いんだ。


「ああ、坊ちゃん。あれは絵だと思うだろ?違うんだ。

乗車してきた地獄行きの人が、降りようと暴れた時の為に、鬼が天井の中に入り込んで、見張っているんだ。

いつ暴動が起きても、すぐに出てきて縛り上げる為にな。ちょっと!軽く出てきな!」


すると鬼の顔は目、鼻、口の順番に、ボコッと立体的に飛び出てきて、強烈な目つきの瞳を回して、口から真っ赤な舌を出して、こっちに向けて二カッと笑ってきた。


怖すぎる。卒倒しそうだ。

死にながら卒倒したら、意識はどうなるのだろうか。

既に死んでいるんだ、これ以上気絶は出来るのか。

しかし、当然かのように、その瞬間に意識を失い気絶した。



「おい!もうすぐ着くぞ!」


はっ。そうして気絶していたことに気付き、辺りを見回すと真っ暗だった景色が、光がたまに照らされている姿に変わっていた。


「もうすぐって言ってもあと10分くらいだ。お前は2時間は気絶していたからな」


そんなに時間が経っていたのか。

光はどこから来ているのだろうか。

窓の外を眺め、空の方を見るとたまに小さな電球があり、そこが光源になっているようだ。

小さい電球なのに、物凄い光を放っているように見える。

それほど、目が痛くなる程、眩しい。


そして、光の当たっている所には、どこも得体の知れない形のオブジェが置いてある。

洋服を着ている人間のようだが、体が捻じ曲げられ、口を大きく開けて、両腕がぐねぐねと曲がり、奇妙なポーズをしている。


「うわ、何だあれは」


「なに。気になるのか。あいつらもまた、お前に向けて舌を出し、お前は気絶しちまうぞ」


うっ。こいつらも動くのか。


「なに。冗談だ。動きやしない。

こいつらは、地獄の中でも更に罪を犯した者達だ。

どのオブジェも歪んでいるだろ。こいつらは生きているんだ。

体を変形させられ、歪められて、どいつも全身が激しく痛いまま生きている。

大きな罪を犯した者は、ここで数ヶ月から数年間、歪んだ体のポーズのまま硬直させられ、延々と立たされるんだ。

わざわざこんな場所で立たされているのは、地獄に来る新たな住人への見せしめでもあるな。

まあ、まさにいまお前に見てもらっている。地獄はこんなに怖い所だ。そう思わせているんだな」


「地獄でどんな罪を犯したらこうなるのですか」

「ああ、色々あるが、例えば自殺だ」

「自殺?」

「そうだ。自殺したら体を歪められてここに飾られる。

それがわかっているのに、それでも自殺する困ったやつが結構いるんだ。

それほどキツい世界、一時的でも逃避したくなる世界なんだ。」


僕は今から、そんな所に行くのか。

最悪だ。終わった。

しかし、僕は生前に自殺した。

だから、地獄に行っても仕方ない。


電車に揺られながら、この先どんな未来が待っているか想像してみる。

しかし、実際の地獄は、自分が思ってたのとはずっと違う、とっても、とっても、恋愛が盛んな場所だった。

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