FIERCE GOOD -戦国幻夢伝記-

IZMIN

第 壱 話:奥州の鬼神

 時は群雄割拠ぐんゆうかっきょの戦国時代、奥州を治める武将、伊達だて 政宗まさむね


 その従弟にあたる会津を治める若き武将、『鬼龍きりゅう 真斗まさと』は百の軍を引き連れ敵将、上杉 謙信の軍勢、約二千と白河の地で激突していた。


 浅葱色水色の別名が特徴の甲冑と陣笠じんかさを着こなした上杉軍の足軽達は黒と紅が特徴の甲冑と陣笠じんかさを着こなした鬼龍軍の足軽達に圧倒されていた。


「これが!鬼龍の恐ろしさか⁉︎」

「多勢に無勢のはずなのに‼︎我々が押されているのか!」

「これが⁉︎奥州の龍に仕える鬼兵きへいの力か!」


 一方の鬼龍軍の足軽達は和槍や打太刀で鬼の様な形相と気迫で次々と上杉軍の足軽達を討ち取って行った。


 敵の返り血を浴びながら首を切り、さらに斬り落とした首を鬼龍軍の足軽達は砲丸投げの様に投げる。


「「「「「首を置いてけ!首を置いてけ!首を置いてけ!」」」」」


 鬼龍軍の足軽達は猛獣の様な大声で言いながら、その姿は、まさに血肉に飢えた人喰い鬼の様な戦いであった。


 黒い暴馬、“轟鬼ごうき”に乗り合戦の地を見渡す真斗は鬼龍軍の足軽と同じ色で鬼の様な角を付けた兜と勇ましさと美しさを合わせた鎧を身に纏っていた。


「流石は上杉軍!我ら鬼龍の足軽に動じない勇ましさ‼︎あっぱれだ!」

わか!上杉の兵達はあの武田軍と互角に渡り合える猛者達です‼︎油断、されると」


 轟鬼の隣にいる家老の『河上かわかみ 源三郎げんざぶろう』は焦る様な表情で、そう言うと真斗は逆に笑顔になる。


「心配するなじい!上杉の兵士達は我らの兵の気迫に押されておる‼︎今が好機だ!我は先に行くぞ‼︎」


 そう言うと真斗は馬の綱をしならせ轟鬼は大きく前足を高々に上げ、鳴く。


 そして真斗は轟鬼と共に合戦へと走り出す。


「あぁーっ‼︎わか!お待ちを‼︎」


 真斗を止める事が出来なかった源三郎が呆れた表示をするが、すぐにキリッとなり振り向く。


「皆の者!わかに続けぇーーーーーーーっ‼︎」


 源三郎の後ろにいる二百の足軽達が高々に和槍を上げる。


「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」」」」」


 そして源三郎と共に二百の足軽達は和槍を構えて走り出す。


⬛︎


 血や大声、鉄が打ち合う音などが飛び交う合戦の場に走る轟鬼に乗った真斗が鬼の様な表情で颯爽と現れる。


「この地を去れ‼︎上杉ぃーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」


 真斗は大声で言いながら上杉の槍隊へ突っ込み陣形が崩す。


 真斗は槍を使い心臓を射抜き、首を切り飛ばし、さらには轟鬼で倒れた足軽を頭から踏み殺すなど戦う姿は、まさに鬼神で上杉軍の足軽達は恐れ、逃げ出し始める。


「上杉ぃーーーーーーーーーーーっ‼︎貴様は欲深い者かぁーーーーーーーーっ!貴様の領地は広大!なぜ我が地を欲するかぁーーーーーーーーーーーっ‼︎」


 すると逃げ出す上杉軍の足軽達を掻き分ける様に白馬に乗った上杉 謙信が早足で現れる。


「真斗殿!我は越後の国主、上杉 謙信である‼︎今回のいくさには我が国の深い事情がありまする!どうか!お話しをお聞き下さい‼︎」


 それを聞いた真斗は頷き、持っていた槍を地面に刺し轟鬼を降り、近づく。そして上杉も白馬を降りて近づく真斗に近づく。


 そして真斗と上杉はお互いに一礼をする。


「上杉殿!我は会津城城主鬼龍きりゅう 真斗まさとである。今、越後の国はどうなっておる?」

「は!真斗殿!実は我、越後の国は日照りが続き米や作物が取れず民が苦しんでおり、どうしても水源が必要になったのだ」


 上杉が会津の地に攻め行った理由が分かった真斗は頷く。


「なるほど。では何故、兵を進めた?書状を我に送れば水源をお貸しする事が出来ましたのに」


 すると謙信は片膝を着き、身を低くし深く頭を下げる。


「申し訳ない真斗殿。我が上杉家と真斗殿の親族である伊達家は宿敵。もし水源を貸したと伊達家に知られれば真斗殿は裏切り者となってしまう」

「それを避ける為にあえて兵を動かしたと」


 謙信の真斗を思っての武士道に真斗は納得し、笑顔で謙信を立たせる。


「謙信殿、我が伯父である伊達 政宗は苦しむ武士には必ず手を差し伸べる伊達者です。それにいくさをすれば、より多くの人々が苦しむ事になります」


 真斗の悟りに謙信は己の過ちに涙を流すのであった。


「すまぬ!すまぬ真斗殿!」

「いいんですよ謙信殿。では、共にこの戦に幕を下ろしましょう」


 謙信は涙を拭き取り勇ましさを感じる笑顔で頷く。


「ああ。そうだな」


 そして真斗と謙信はお互いの自分の軍に向かって大声で言う。


「皆の者!此度こたびいくさは上杉殿が自身の領で苦しむ民を救うのと我の家名を守る為の戦であった!」

「真斗殿は!我の意を摘み取り水源を貸し与える事となった!よって此度こたびいくさは引き分けとする!」

「「我らの意に不問ある者は前へ出よ‼︎」」


 真斗と謙信の問いに誰一人、前に出る事はなかった。


「「それでは!このいくさ‼︎終わぁーーーーーーーー‼︎りぃーーーーーーーーーーーーーーっ‼︎」」


 そして二つの軍の足軽達は持っている和槍を高々と上げる。


「「「「「えい!えい!おーーーーーーっ‼︎えい!えい!おーーーーーーーっ‼︎」」」」」


 真斗と謙信はそれぞれの馬に乗り、自軍へと戻る。


 自軍に戻った真斗は兜とを脱ぎ源三郎に言う。


「源三郎!此度こたびの件、すぐに仙台の伯父上、伊達 政宗殿に書状を送るのだ」


 真斗からの命に脱いだ兜を脇に抱える源三郎は一礼をする。


「は!しかしわか、よろしいのですか?この乱世は非情。心を許してしまえば再び上杉が攻めて来るかもしれませんぞ」


 源三郎からの警告に真斗はハッと笑う。


「心配するな源三郎。上杉殿はそこまで非道な武士ではない。筋を通せば分かってもらえる武人よ」

わかがそう言うのであればじいは何も言いません」

「うむ。では・・・」


 真斗は左腰に提げている和泉守兼定いずみのかみかねさだ作の愛刀、『赤鬼あかき』を抜き前を指す。


「皆の者!いくさは終わった‼いざ!会津城へ戻るぞぉーーーーーーーーーーーーーっ‼」

「「「「「おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」」」」」


 源三郎を含めた鬼龍の足軽達は高々に和槍を上げる。そして真斗を先頭に隊列を組み会津城への帰路へと着くのであった。



あとがき

新作です。皆様は好きな戦国武将は居ますか?

不定期になるかもしれませんが、テンポよく新規投稿します。応援よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る