第138話 周囲を道路で囲われている(エカテリーナ視点)
「そう・・・ルーベンス家が・・・」
エメロン王国によるヤハイエ聖国への侵略戦争が終わった。そして聖教派閥の筆頭だったルーベンス辺境伯がヤハイエ聖国のスパイだったとして改易させられた。学園で同じS組のビクトリアも退学させられたそうだ。
「ポット家のように身内に引き込めないかしら?」
「なるほど・・・、ちょっと接触してみよう」
マクレガー領内にダンジョンが出来るようだけど、その街を管理できる人材を作らなければいけないと思っていた。しかしそうなると不足するのが家臣だ。
マギ君を通じてポット家の関係者を身内に引き込めたけれど、現在飛ぶ鳥を落とすような勢いで発展しているナザーラ領に残った人達も多く、優秀な人材はまだまだ欲しかった。
「それにしてもカールの親征はあまり評判良くないね」
「えぇ、目的のダンジョンが既に枯れてた訳だものね」
実際には枯れたのではなくエメロン王国北部に入り口が移動したのだけれど、この情報は今のところエバンスお兄ちゃんにも話さない事にしている。
エバンスお兄ちゃんは慎重で頭の良い人ではあるけれど、実直で素直であるため、顔に出てしまうからだ。
「恩賞は期待出来ないだろうね」
「貰わないほうがいいかもしれないわ」
旧ヤハイエ聖国はヤハー様から加護を教えて貰える部屋を作る技術の独占と、裏ダンジョン程では無いけれど、質の高いポーションが出てくるダンジョンの占有と、水魔法の治癒を得意とする魔術士や、光魔術の浄化を得意とする魔術士を多く抱えて、治療行為を行う事で信者を増やし、集金をおこない、その方針に逆らう人を邪教徒呼ばわりして神殿騎士団により排除する事で成り立ってきた。
そのポーションが出てくるダンジョンは既に無く、多くの治癒士は戦死するか国外に脱出している。逃亡中の治癒士を追跡していた兵士の多くは割れた海に飲まれて死ぬか、禁足の森に入り出て来なかった。
残されたのは、力は無いがエメロン王国に恨みを持つ旧ヤハイエ聖国の民と水資源が少なく痩せた土地だけだ。領地を貰うことは罰ゲームみたいなものになるだろう。
「現金化出来そうなもの以外は断った方が良いわね」
「領地を持つ旨味は無さそう?」
「旧聖都や貿易港のある街は価値があるわよ。だけどそこは王家の直轄地になるでしょうね」
マクレガー領は、物資の供出に協力はしたので恩賞を受け取る権利はある。兵は出していないので戦功は高く評価はされない筈だけど全くゼロということは無い。
「それなら禁足の森はどう?」
「あっ! 良いかも知れないわねっ!」
禁足の森は、旧ヤハイエ聖国のダンジョンを作ったトレントの長老がいる森だ。入ってすぐにトレントによる迷いの結界の範囲内となるため、私達のように森の妖精と契約している人以外は、少し踏み入れるだけで危険地帯になってしまうという特徴があった。
旧ヤハイエ聖国は、森そのものを魔物だと認識していて、その土地を重罪人を追いやる流刑地にしていた。
「じゃあ褒美の希望を聞かれたら禁足の森を要求するよ」
「理由を聞かれたら、マクレガー領は材木資源が無いから禁足の地の開発に挑戦したいと言ったら良いと思うわ。王家も使えない土地を使える場所にするためと聞けば認めたくなると思うの」
「あぁ、いい考えだね」
「森を囲む道路も欲しいわね、拠点となる建物も必要でしょ?森だけ貰っても建てられないわ、本当に木を切ったらトレントと険悪な関係になるもの」
「道路の警備も請け負うと言えば周囲の土地ぐらいなら貰えるんじゃないかな。禁足の森からは魔物が出てくる事があるそうだからね」
禁足の森は立ち入ると人が出てこないため、森を迂回するように、ラウンドアバウト的に周囲を道路で囲われている。また森から魔物が出てくる事があるため道の森側が低い土塁になっている。
森を囲う道には4つの道が繋がっている。その三叉路的な場所は交通の要衝となり得る場所だけれど街があったりはしない、禁足の森から少し離れた道路沿いに、旅人相手に商売をする宿屋と食堂があるだけだ。旅人は魔物が出てくる事もある禁足の森を通う道は足早に通過しようとして留まろうとはしないようだ。
「褒美として貰えたら誰に管理して貰う?」
「マギ君はどうかしら?卒業後の働き口として良いと思うの」
「良いんじゃ無いか?マギなら森から湧いた程度の魔物なら後れを取らないだろう」
私達は最終学年で学園卒業後の進路を決めなくてはならない。マギ君は元々宮廷魔術師を目指していたけれど、カールの決闘の替え玉の件でポット家を尻尾切りした王家に幻滅しており、そこを目指す気は失せている。
マクレガー侯爵家の家臣になりたいという希望をマギ君は文官というより、魔術師として戦闘づる才能が高いため、武官の方が能力を発揮できる。
マクレガー侯爵領は魔物の発生が殆どなく、の家臣として迎えようと思っているけれど、陸側は私とエバンスお兄ちゃん、海側はスイたんだけで戦力が足りてしまっている。
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