第133話 不甲斐ない息子の代わりに
「あっ・・・そこに隠し通路あるっすよ」
「そうなの?」
「キューキュー!」
「ウサたんは無いって言ってる」
「僕の記憶ではそんな通路無かったけど・・・」
「見ててっすよ?」
「ダンジョンの壁が崩れた・・・」
「キューキュー!」
「ウサたんが信じられないって言ってる」
「ダンジョンのオブジェクトは壊れないと思ってたけど・・・」
「ここから先だけ土魔術で壊せる普通の石なんすよ」
「マジかよ・・・」
裏ダンジョンにビリーを4階層のレベリングポイントに向かったのだけれど、ビリーはバーニィも知らない事を知っていた。
「先は長いんでウーレアの大剣使って掘ったほうが良いっすよ」
「分かった」
バーニィが土魔術が使い放題になる大剣を手に持つと壁をどんどん破壊していった。
「壊した壁の石は天河鎮底神珍鉄含んでるんで取っておいた方が良いっすよ」
「テンガチン・・・って何?」
「如意金箍棒作れるんすよ」
「それってどんな棍棒?」
「棍棒じゃないっす・・・一般的には如意棒って言われる奴っすよ」
「あぁ・・・孫悟空が使ってた長さが変えられる棒だっけ?」
「実際は大きさが自由自在になる棒っすね、マッチ棒ぐらいのサイズから大聖堂の柱ぐらいのサイズまで変えられるっす」
「へぇ・・・」
ビリーにそう言われたので収納リングの中にバーニィが土魔術で壊したダンジョンの壁を収納していった。
「長いね・・・」
「うん・・・」
「まだまだ続くっすよ」
「チー・・・(暗い・・・)」
「ナウン?」
「ミャーン・・・」
「あっ・・・チーたんごめん、明るくするね」
「グァ!(眩しいっ!)」
僕やフローラやバーニィは精霊の力で暗いところも見えるし、ウサたんは額の石で見えている。ユキたんやミーたんは夜行性で夜目が効くし、ソラたんは真っ黒だからか暗い所も平気。ビリーは多分闇魔術の暗視で見ている。
ダンジョンにやって来たメンバーで唯一暗い所が苦手なのはチーたんだけだった。
「今半分ぐらいっすかねぇ」
「そうなの?」
「大体1km掘ったら抜けるっす」
「なるほど・・・」
ウサたんの指向性持たせないときの探知範囲は500mぐらいだ。1kmもまっすぐ壁を掘り進めた先なんてさすがに場所を知らなければ見通せない。
「バーニィ交代する?」
「心配ありがとう、でも大丈夫だよ」
「無理はしないでね」
「分かった」
バーニィは巨大な剣を構え続けながら土魔術を使い続けている。いくら使い放題でも、あの重い大剣を構え続けるなんて大変だ。なにせ大剣の力を使うときは、火魔術の身体強化が使えない。普通に自分の力で魔術を使うなら複合した属性の魔術が使えるのだけれど、神話級の武器の力は何故か複合させられないとう欠点がある。だからバーニィは素の力で大剣を持ち上げ続けている。レベルがカンストしてステータスが高くてそれは結構大変じゃないかと思うのだ。
△△△
「わっ・・・眩しいっ!」
「やっと抜けたんだぁ!」
「バーニィさんお疲れっす」
「チー(癒すよー)」
「チーたんお願いね」
バーニィは残り1/3ほどで腕がプルプルし始めて交代しようと思ったけれど、チーたんに「疲労を癒して」と言って疲れを取ってしまい、最後まで掘り続けた。バーニィは無理をする時があるけど何でだろうね。
「キューキュー」
「ウサたんもありがとうね」
ウサたんは抜けた先が見えるようになってから、その先に何があるのか見続けていた。
ビリーからトラップと宝箱があるだけと聞いてはいたけど注意するに越した事は無かった。
「キュー」
「ここを押すんだね?」
「キューキュー」
「わっ・・・カチッて言ったよ」
「キュー」
ウサたんが罠仕掛けを見抜いてフローラに解除させていった。
「すごいっすね、ここの罠って器用さのステータスが高いキャラに任せて、後は運頼みなんすが」
「ウサたんは少し先の未来が見えるからねぇ」
「フローラさんも闇魔術の隠蔽や潜伏も一流なんで、ウサたんさんの索敵も合わせたら超一流のスカウトっすね」
「斥候の技術はガイお爺ちゃん仕込みだからねぇ」
「「静風」さんっすか・・・」
「ん?ガイお爺ちゃんに何か言われた?」
「オルクさんの事で少し」
「そっかぁ・・・」
ビリーは自分の息子の奥さんと付き合ってる男だもんなぁ、ガイお爺ちゃんとしては複雑な気持ちがありそうだ。
「「マリアを不甲斐ない息子の代わりに幸せにしてやってくれ」って・・・」
「僕の母さんでもあるんだからな?」
「そうっすね・・・」
「ビビってばかりでマリア母さんを幸せにするのが無理だって思ったら、マリア母さんに別のいい男充てがっちゃうからな?」
「それは勘弁っす!」
フローラの方を見ると、宝箱の罠の解除が終わり開けようとしているところだった。
「せーの」
「キュー!」
そういえば、宝箱の中に何が入っているんだろう。ウサたんでも見つけられなかった隠し通路の存在に驚いて聞かなかったけど、良いものだろうか。
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