第5章 狙われる貴族令嬢になった編

第100話 人並みに奢れや!

 学園に入り1年が過ぎて2年生になた。2年S組は1年S組のメンバーがそのまま上がった形だった。学術の成績はそんなに良くないし、実技の試験は免除だし、こんなので1番良いクラスにいていいのだろうかと疑問に思う。


「あぁ、それはステータスの合計値とカードバトルの部分の成績で評価を受けるからだよ」

「何それ?」

「ほらこの世界って恋愛SLGとカードバトルのある乙女ゲームの世界でしょ?」

「そういえばそうだったね」


 イケメンが美少女を壁ドンするところを見たこと無いので、乙女ゲームの世界と言われても全然ピンと来ないけどそうらしい。


「そしてゲームでは学校の成績はSLGのステータスとカードバトルの成績で評価されてたんだよ」

「どうやって?」

「えっと恋愛SLGの部分のステータスは学術と武術と魔術という3つで構成されていて、こんな感じで三角形のグラフで表現されてるんだよ」

「なるほど・・・」


 バーニィが紙に正三角形を書き、上の頂点にA.学術、左の頂点にB.魔術、右の頂点にC.武術と書いた。


(参照:https://kakuyomu.jp/users/masuru555/news/16818093089403043452


「そしてこの三角形のグラフの面積がテストの点数で評価されるんだよ。僕は3つとも満点だから一辺の長さを1とすると1/2かける√3になるわけ」

「うん、底辺×高さ÷2だしここは三角定規の角度だからわかる」


 バーニィが正三角形の真ん中に半分になるよう点線を書いてくれたので、正三角形が三角定規を2つくっつけた形なのを思い出した。そして前世で辺の長さが1対2対√3となると教えられた事もなんとなく思い出していた。


「そうそう、そして√3がヒトナミニオゴレヤで1.7320508っていうのは分かる?」

「うん、何かを奢られているくせに図々しい事言やがってと思う語呂だよね」

「プッ!・・・アニーは面白い事考えるんだねぇ!」


 前世で√3の語呂合わせを聞いたとき、「人並みに奢れや!」なんて要求して来られたら、もう二度と奢らないって思うよなって考えてた記憶がある。


 僕のこの√3に対する感想が面白かったのか、バーニィは吹き出したあと、フフっと笑い始めた。

 バーニィは愉快な時はクックックという感じに怪しげに笑うけど、僕の前でマシロになっている時は、こういう可愛い感じの笑い方に修正してくる。


「まぁその話はおいといて・・・計算すると0.8660254・・・これが僕の基本的な成績って事になる、まぁ大体0.866と見れば良いね」

「なるほど・・・」


 バーニィの何かのツボを押してしまったらしく、成績の話題が中断してしまっていたけれど、なんとか抑えて話を再開した。


「そしてアニーの場合は武術と魔術が満点だけど学術試験は丁度50点だったから半分ぐらいだと思う、だから三角形としては高さが半分という感じだね」

「なるほど・・・」


 バーニィは正三角形の中に書いた点線の真ん中の部分に黒点をつけ、そこにA´と書き、そこに左右の辺から点々の斜線を書いた。


「高さが1/2だから面積は1/2かける1/2かける√3で僕の半分の0.433、これがアニーのテストでの成績だね」

「うん・・・」


 「これがアニーのテストでの成績だね」と言われても凄いんだか凄くないんだかよくわからない。


「僕とアニーとフローラとリーナとマギ以外のクラスメイトは、学術も武術と魔術は大体1/2ぐらいが基本で、クリスが武術が2/3ぐらいだったり、ウィッシュが学術が2/3ぐらいだったり得意分野が少し高いぐらいなんだよ」

「なるほど・・・」

「そしてA組のトップは全てが1/2って感じの成績だと思ったらいいよ」


 バーニィは最初に書いた三角形の横に一辺が半分ぐらいの正三角形を書いて頂点にa,b,cと記載した。


「面積は計算出来る?」

「えーっと・・・1/2×√3/2÷2・・・?」

「そうそう」

「あっ・・・僕の半分だ・・・えっと・・・0.2165?」

「そう、正解、一応小数点以下3桁と考えて0.217としようか」


 バーニィは何故か僕の頭を撫でた、子供の教育をしているつもりなのだろうか?


「それにその基本的な成績にカードバトル部分が採点された部分を足した合計が1になった状態が満点なんだよ。要はカードバトル部分の成績の満点は1-1/2かける√3・・・えっと0.1339746だね、これを足したものだね。ゲームではそれに100をかけた数字がステータス画面の横に成績として表記されたんだよ、小数点以下切り捨てでね」

「うん・・・」


 説明が難しいけどバーニィが丁寧に教えてくれるのでなんとかついていてこれていた。


「ちなみに王都のダンジョンの最下層の隠し階層の発見でカードバトル部分の成績は満点になるよ、だから僕の成績は100でアニーの成績は・・・・えっと・・・だいたい0.566だから56だね」

「・・・なるほど・・・」


 56でS組・・・だから何?としか思わない・・・。


「2年生の末になるとA組は、学術と武術と魔術を3/4ぐらいまで伸ばしてくるよ。大体・・・・49点だね。それにダンジョンでの成績も0.1339746の3/4で・・・だいたい10点ぐらい。だから合計59点だね。だから3年生に上がる時に60点以上にしないとA組以下に落ちちゃうかな」

「ふーん・・・という事は今のままだと僕とフローラは3年生でS組になれない?」

「うんそうだね・・・えーっと・・・うん学術試験で54点・・・いや安全を見るなら55点以上欲しいかな」


 僕の頭が限界だと思ったのか、バーニィは後半を全て計算してくれた。こうされなかったら僕は頭から湯気を出して倒れていただろう。


「僕は何とかなりそうだけど、学術試験が39点だったフローラは厳しいかもしれないね」

「そうだねぇ・・・」


 フローラは小さい頃から勉強が苦手のままだ。僕もそうだけど、まだ前世の記憶のおかげで算術の成績が少し良いためフローラを上回っている。


「お兄ちゃんたち勉強してるの?ってなんか難しそう!」


 放課後の帰る前にお手洗いに行っていたフローラが教室に戻ってきたのだけれど、僕とバーニィの前にある紙を見て硬直してしまった。

 成績の事を書いてあるんだけれど、確かに紙を見た感じはフローラが苦手な算術の問題を解いているような内容になっていた。

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