第50話 土地は時代により価格変動するものだ
「「森の蹂躙」の方たちじゃないですか!」
「おー! 「紅孔雀」じゃないか、ギルドの調査隊ってお前らだったのか」
「最近「堅土」殿と「静風」殿が王都の教官を辞めて、その後の噂を聞かないと思ったら、こんな辺境で「森の蹂躙」を再結成してるなんて」
「「火炎」と「鎮火」は元々この村にいたんだよ、俺と「堅土」は森を切り拓いて道路を作る仕事を受けてやって来たんだ」
「その途中でダンジョンの発見したんですか?」
「いや、孫のアニーとその婚約者のフローラが発見したんだ」
エメロン王国の冒険者ギルド本部から派遣された調査隊はガイお爺ちゃんの顔見知りらしく仲良く話を始めた。
「アニー、挨拶をしなさい」
「始めまして、アニーといいます」
「おー! 聡明そうな坊ちゃんだな、俺はジェイクだ、宜しくな」
「あはは・・・坊ちゃんか・・・・」
「坊ちゃんで良いんだよ」
「俺?何か変な事を言ったか?」
「まぁ良いか・・・」
最近女の子としか思われなくなったから、男の子と見られて嬉しいな。うん、ジェイクさんはいい人だと覚えておこう。
「こいつはオリハルコン級冒険者チーム「紅孔雀」のリーダーをしてるんだ、個人でも「紅嵐」という二つ名もあるぞ」
「火炎嵐の魔術を使うんですか?」
「俺は風魔術が得意だが火は不得意だなぁ」
「こいつの得意な風魔術は範囲が広くて強くてな、ゴブリンの軍勢の討伐で竜巻魔術で殲滅した際に、ゴブリンの血飛沫が渦を巻いて見えたそうなんだよ」
「それで二つ名が「暴風」から「紅嵐」に変えられちまったのさ」
二つ名って変わることもあるんだ・・・。
「調査には俺たちと「粉砕」が同行するからな」
「「粉砕」?・・・って騎士になったザックじゃねーか?」
「久しぶり「紅嵐」」
「「粉砕」は騎士を引退してこの村にいるんだ」
「偉く痩せちまってるじゃねぇか、大丈夫なのか?」
「毎晩嫁に絞られてこうなったんだ」
「体が締まって前よりも動きが良くなったぐらいだよ」
「体が締まる程絞られるってどこの淫魔だよ」
「嫁は「雷轟」で隊長格だった奴だな」
「今は妊娠中で大人しいですけどね」
キャンディは現在2人目を妊娠中だ。結婚して1年も経たず第1子を出産し、その1年後である今は臨月となっている。
△△△
「このダンジョンはやべぇな」
「あぁ・・・第一層のフロアボスでも無い雑魚がプラチナ級クラスだ、ゴールド級が10人はいても全滅だな」
「通路の広さからいって、戦闘は5人までが限界だ、プラチナ級では荷が重い・・・最低限ミスリル級だな」
「荷物持ちでもシルバー級以上だろうな、それ以外は魔術の余波だけで死にかねん」
「こりゃ、近隣の有名どころが一気にやってくるぞ」
「あぁ・・・雑魚のエンカウントが多いし、そのドロップがこのレベルのポーションだ・・・強ければ稼げ、弱ければ死ぬ・・・そういうダンジョンだなココは」
「お前、半月前に位階あがったばかりなのに今日位階上がってたよな?」
「あぁ・・・多分位階が上がりやすい魔物だな・・・まぁそれだけ魔物は強いんだが効率は良いな」
「拠点を移すよな?」
「当たり前だ!」
「よし、王都に戻ってギルドに報告したらすぐに引っ越すぞ」
「「「おう!」」」
調査が終わったらしい「紅孔雀」の人達は興奮していた。彼らには美味しいダンジョンらしく、王都のダンジョン近くからこっちに拠点を移すらしい。
「どこまで潜ったの?」
「第一層のフロアボスを倒して第二層に入った所で引き返してきたの」
「そこまでで調査は終わりなの?」
「今の儂らじゃその先は無理じゃよ、第一層でも普通のオークに見える個体の一体一体がオークキング級の強さを持っているんじゃぞ?そして第二層はリザードマンに見えるリザードキング級の個体がいるのじゃ。そんな奴が群れで徘徊するフロアなんて不用意に進んだら、命がいくつあっても足りんわい」
「そうなんだ・・・」
バーニィはそのへんをうまく躱すルート知ってたもんなぁ。フロアボスも行動パターンを読んで撃破し第四層まで行って、そこで経験値の多いメタル系の敵をハメ技で狩り続けてレベルカンストにしたもんな。
「紅孔雀」の人達はナザーラの区画の説明と賃貸価格を聞き、住宅街の一区画と、メインの大通り沿いの一区画の土地を押さえたあと王都に帰還していった。
ちなみにナザーラの街はバーニィが制度も設計していて、土地は全て領主家のものとなっている。住民は領主家と賃貸契約する事で期限付きで土地を占有出来る事にしている。売ってしまうと、将来区画変更する際に買い戻すのに色々面倒だからなんだそうだ。
今は価格を決めているけれど、10年ごとの更新で、その際は領主の提示する額に納得できない時は賃貸価格の入札を行うという仕組みにしていた。
土地は時代により価格変動するものなので。領主館と建設中の役所と教会ぐらいしかない今は安く設定しているけれど、10年後はかなり発展していて価格も上昇しているし、街の維持費も上がるので価格をあげる必要があるそうだ。
領主側から提示する賃貸価格は街の維持が出来れば良い程度に抑えるつもりらしいけれど。それでも賃貸価格の安さを既得権だと思われ、価格を上げる際は不満を持たれる可能性があるそうだ。
それにこういう制度にすれば、街に害悪となっている入居者に高い賃貸料を提示して立ち退かせる事も出来るらしい。だから賃貸価格の更新と入札という制度を取り入れたと説明を受けた。
「べヘム村はどうするの?」
「べヘム村からエルムの街までの街道周辺の土地は売って開発させても良いと思う。ただ魔の森の領域は勝手に開発させたくないし入会地として残す必要があるかな。だから現在のべヘム村のある場所より奥地はナザーラの街の周囲以外は開発させないつもり、特にトレントと森の妖精の領域は、彼らの平穏と、泉を守る意味でも聖域として立入禁止に指定しようと思う」
「なるほど・・・」
ごちゃごちゃと雑然と開発させてスラムみたいなものを作りたくは無いしな。それにせっかくの魔の森の恵みを無くしてしまうのは勿体ない。黄金樹や赤桃やコカトリスやノーホーンバイソンなど、人口栽培や家畜化できないと言われているようだしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます