三本の矢

星之瞳

第1話

この星には2つの国がある。メガネ極上主義の男性の王が治める『ソード』コンタクト極上主義の女性の王が治める『ローズ』。二つの国とも公共の場では自分の国の物を使うように定めていた。

罰則が無かった為、民はプライベートでは自分の国に無いものを使い楽しんでいた。

メガネにしろ、コンタクトにしろ、視力矯正については何ら問題はなかった。


しかし国民が長寿になるにしたがって新たな問題が生じてきた。

『白内障』である。白内障は目の老化現象ともいわれ、レンズの働きをする水晶体が白濁することにより見えにくくなり、視力が落ちてしまう。治すには外科手術により水晶体を人工のものに交換するしかないのだが、この星にはその技術は無かった。


若い時は栄華を誇っていた二人の王も、年齢を重ねるに従い白内障になり、メガネでもコンタクトでもよく見えなくなっていた。


変化は突然やってきた。この星に宇宙船が飛来したのだ。異星の使者は二人の王に面会を申し込んだ。

二人の王は国境の建物で使者と会うことにした。


「私は、アムールという星から来ました。この星の二つの国が視力の矯正技術が優れていると知ったからです」

「そうさの、メガネは遠くも近くも見える。乱視も斜視も大丈夫だしな」

「それはコンタクトでも同じですよ。遠近両用も乱視用、斜視用の物もあります」

「そなたの国では我が国のような技術はないのか?」

「はい、目が見えずらくなった場合は水晶体を人工の物に変えて対応しております」

「なんと、人工の物に変えることが出来るのか?」

「はい、手術すれば簡単に。ですが我が国も人口が増えてきまして、手術以外の矯正術を知りたく参上したわけです。お二人とも白内障のようですし」

「そうだな、わが国には白内障を治療する方法がないのだ」

「そうね、いくら矯正しても、もやがかかったみたいで見づらいわね。治せるのなら治したいと思うけど」

「でしたら、まずはお二人がわが星にいらっしゃって、手術を受けてみませんか?その結果お気に召したのであれば、そちらのメガネとコンタクトによる矯正術を教えていただきたい。その代わり、私たちの手術の技術もお教えします」

「そうね、自分が体験するのが一番よね」

「そうだな、そちが言うのももっともだ。しかし国を空けるとなると用意に時間がかかるそれは構わぬか?」

「構いません、用意が出来るまでお待ちいたします」

「なあ、ローズの王よ、一緒に行くか?」

「ソードの王、承知した」

「用意が出来ましたらお知らせください。その間にお二人を迎える準備をいたします」そう言うと使者は礼をして宇宙船へと戻って行った。


二人の王は国を空ける準備を始めた。アムールまで行って手術して戻ってくるのに1ヶ月かかるという話だったからだ。


1週間後、多くの国民に見送られ二人はアムール星へと旅立った。


宇宙船の中はよく整備され快適だったが、二人はすぐに暇を持て余し始めた。

二人は仕方なく、お茶を飲みながら話をしたり、ボードゲームに興じたりするようになった。

その中で一番話題に上ったのが「自分が亡き後、国をどうするか?」お互い結婚していないから後継ぎがいないのだ。国の存亡にかかわる問題。話はいくらしても尽きることはなかった。



1週間ほどかかって、宇宙船はようやくアムール星に着いた。

タラップを降りた二人を一人の男性が出迎えた。

「遠いところよくいらっしゃいました。ソード国の王、ローズ国の女王。私はこの国の統治者です。お疲れになったでしょう。まずは宿に案内しますね。お話は落ち着いた後で」

「統治者?この国には王はいないのか?」

「昔はいました。でも王に子供が出来なかった事がありまして、それで王は能力のある家臣を次の統治者として任命しました。それ以来、統治者が退くときに次の統治者を指名するようになったんです」

「なるほど、そうゆう方法もあるのか」二人は感心した。そして車と言う物に乗り込み宿へと向かった。


夕食の時にこれからの話があり、明日あした検査をして、明後日あさって左目。明々後日しあさって右目の手術を行うこととなった。


手術は無事成功。眼帯を取った二人はメガネとコンタクトを久しぶりにつけた。すると・・・

「すごい!よく見える。視界がくっきりしている」

「もやがかかっているようだったのに、しっかり見えている。嬉しい!」

「お気に召しましたか?」

「もちろんだ、そなたの国の技術は凄いな」

「この技術があれば国民の目を守ることが出来る」2人は口々にそう叫んだ。

「私の国では、メガネとコンタクトによる視力矯正の技術が欲しいんです。お互い協定を結んで、技術を教えあいませんか?そうすれが国民すべての利になると思いますが」

「そうだな、3つの技術があればどんなことにも対応できそうだ」

「私も賛成です。国民の為にもこの技術は必要だわ」


ソード、ローズ、アムールの三国は話し合って協定を結んだ。


国に帰った二人の王は、メガネとコンタクトの使用制限を撤廃した。


3つの技術を行き渡らせるため、国の間の行き来が活発になり、アムールではメガネとコンタクトの技術者の養成が行われ、ソード、ローズでは合同で手術が出来る技術者の育成に力を入れ施設が作られるようになった。



後にソード国とローズ国は統合し、統治者による治世が行われるようになった。

「すべては国民の利益になるように」二人の王の遺言であった。



















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