ワンナイフ・トラッシュ・キルワールド

異界ラマ教

プロローグ

第0話 死刑執行

「何か言い残すことはあるか」


余計な物の一切がなく、人を殺すためだけの部屋の中央にいる厳重な拘束服に身を包んだ人物にスピーカーから声がかけられる。


その声に対する返答はなく、窮屈そうに身じろぎをすると、にたりと笑みを浮かべた。


「……何が可笑しい」


剣呑な声色がスピーカーから漏れ出し、その後ろからは小さく、よせ、やめろ、と声が聞こえる。


「49人も殺しておいて何が可笑しいと聞いているんだ!!」


怒号が響き渡り部屋が静まり返る。


そして、その怒号を浴びせられた張本人は耐えきれなくなったように噴き出すと、まるで友との語らいの最中であるかのように高らかに笑い出した。


響き渡る笑い声の中、スピーカーから小さく退出しろ、と聞こえた後に先ほどとは違う人物の声が聞こえた。


「……本当に言い残すことはないか」


「あーっはははは!ちょいタンマ!ある!あるよー!思いついた!」


ひとしきり笑い声を振り撒いたその人物は呼吸を整えながら、そしてまだ漏れ出す笑い声を抑えながら、言った。



「これから同類になる気分はどう?地獄でお隣さんになったら仲良くしような!」



その日、一本のニュースが流れた。


『現代のジャックザリッパー』

ついに死刑執行。


49人もの犠牲者を出した殺人鬼が報いを受けたという話であった。


それでこの話は終わりを告げる。


この世界では。

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