第14話 透明 〝陽炎〟

 千葉 中山競馬場


 両替機の前で、一人の男が叫んでいる。

「おい!払い戻し金でてこないぞ!壊れてるんじゃないか⁈」

 係の人が騒ぎに気付き、近寄る。

暫く、払い戻し機を調べて「お客様、何かの勘違いではないですか?履歴で、ほら3万5210円払い戻しとでていますよ」と係の者は伝える。

「だから、出て来てないんだよ!札も小銭も!」と男の怒りは収まらない。

 少し離れた売店で「生ビール、2杯くれ」と一人の背の小さい、坊主頭の30代の男が手に持った〝3万5210円〟から、一万円札を売り子に渡す。

お釣りを受け取ろうとした手を掴まれた!

坊主頭が振り返ると黒のコートの男が不敵な笑みを浮かべ「吉宗?またくだらない事で〝陽炎かげろう〟を使っているのか?」と握った手に力を込める!

吉宗は、「旦那!いえちょっと遊んでいるだけですよ!ビールお一つ如何ですか?」と黒のコートの男の気をそらした瞬間、吉宗は、〝陽炎〟を使い消えた!

黒のコートの男は、辺りを見渡す。

辺りの人だかりに向け、指を3本立てる。


 〝吉宗は現れ、俺に近寄る〟


すると、人だかりの中から、ぼんやりと徐々に吉宗が姿を現した!

吉宗は、キョロキョロと辺りを見渡し、振り向き引っ張られる用に黒のコートの男の所に戻る。

吉宗は、「〝仕事〟ですか?旦那?」と観念したかのように聞く。

黒のコートの男〝執行人〟は、「仕事以外にお前に用事があると思うか?ついてこい!途中で消えたら、本気でお前の首を折ってやる」と吉宗に伝え、

二人は中山競馬場を後にした。

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