閑話 お出掛け





オークション会場襲撃迄残り二日。奏は指定されていた集合場所まで来ていた



「あ、先輩!こっちです!」



元気よく手を振っているのは会社の後輩にあたる愛子さんだ。先日、一緒にお出掛けしないかと誘いがあったがその日はAWOに忙しかった為次の日、つまり今日この日に出かける予定となっていた



「周るプランは決まってますよ。早速行きましょう!」


「あぁ、案内頼んだぞ」


「任せて下さい、この日のためにしっかりと準備したんですから!」



満遍の笑みを浮かべて胸を張る。それ程までにお出掛けを楽しみにしていたのだろう



「これから行くのは水族館です、しっかり着いてきてくださいね!」


「りょーかい」



集合場所から数分間歩いていくと『aquarium』と書いてある看板が目に入る



「到着!遅いですよ先輩」


「はぁはぁ、若いっていいね。おじさん疲れちゃったよ」


「先輩はまだおじさんって年齢じゃないじゃあないですか」


「おじさんの定義は人によって変わるもんなんだよ」


「なら私にとってはお兄さんですね」



後輩が俺の手を取って歩き出す。耳が赤くなって見えるのは俺の気のせいだろうか



「ほ、ほら行きますよ」


「あ、あぁ」



気まずい沈黙が二人を包み込む。よく考えてみたらこうして女性と出掛けるなんて学生時代でもした事なかったな



「ど、どこから行くんだ?」


「最初はルートに従って進んでみましょう。テキトーにぶらぶらしててもよく分からないですし」



前の客の列に従って歩いて行く。道中様々な生き物が観れた。ジンベエザメやマンボウ、アザラシなどもいた



「先輩、これからシャチのショーがあるみたいですよ。行きましょうよ!」


「だが濡れたら如何する」


「いいんですよ細かいことは!」



そう言ってまた強引に手を引いて連れて行かれた。連れて行かれてしまった



「「「「キャー!」」」」



案の定、後輩はビシャビシャに濡れてしまった。



「あははは!先輩びしょ濡れですよ」


「そう言うお前もびしょびしょだぞ」


「......あ」



下を見て数秒思考した後そっと胸元を隠す



「......見ましたか?見ましたね?責任とってください」


「おぉ早い早い。落ち着け」



そっと自分のコートを被せる。後輩には少し大きかったのか着たらブカブカだ



「先輩の匂い......」


「?」



余程恥ずかしかったのか手で顔を隠してしまった。申し訳ない事をしてしまった



「すまん......代わりにご飯は奢らせて欲しい」


「い、いえそんな!申し訳ないですよ」


「遠慮するな。俺の腹の虫が治らん」



女性になんて事を、この人でなし!ここは男として責任を取らなければ




「水族館のフードコートの魚料理って普通のより美味しく感じますね」


「今かなりやばい事言ってるの自覚してるか?」


「だって美味しいんですもん。イキイキとした魚を見た後の動かなくなった魚料理、対比されてて良くないですか?」


「えぇ......(困惑)」




後輩がやべー奴だと判明した瞬間である。あれぇ?こんなんだっけ?最初はもっと可愛いかったような......とフードコートで駄弁っていたらいつの間にか夕方になり辺りが暗くなり始めてしまった




「この後、どうしましょうか?」


「この後って?もう暗くなってきたし解散じゃないの?」



「......へ?」


「え?」



「う、嘘でしょう?ここまで行ってナニも無かったって、それはないでしょう!」


「だ、だってやる事なんてないじゃん!逆に何やるの!?」


「そ、そりゃあまぁ......ナニですよ」



「ナニって何!?」


「〜ッ!折角勇気出したのに!先輩の意気地なし!」


「ま、まぁまぁ一旦落ち着こうか」


「これが落ち着いてられますか!う〜!」


「何でもするから!」



この言葉にピタッと後輩の体が止まる。まるで時が止まってしまったかの様な錯覚に陥った。その後直ぐ感じたのは寒気、何だか無数の目に上から下まで舐めまわされている様な視線を感じる



「今、何でもするって言いましたか?」



ゆっくりと問う後輩、どうしてか俺はこれ以上は答えてはいけないと考えてしまった



「あ、あぁ何でもだ!さっきみたいに食べ物も何でも奢ってやるぞ」


「ナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモナンデモ?」


「ヒェ」



あまりの恐怖に産毛が逆立つ。本能的に怖がっている証拠である



「じゃあ先輩の家でお酒飲みましょう!」


「はぇ?」



先ほどとは打って変わって明るい表情の後輩に気が抜けてしまった



「そ、そんなのでよかったら」


「よしッ!」


「そんなガッツポーズキメるほどの事なの!?」



まあ友達の家って確かに興奮するよな。俺は友達いなかったから行ったことないけど




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「せんぱぁいちゃんと飲んでますかぁ?もっと飲んだ方がいいですよぉ」


「わかったから引っ付くな」



結局俺たちは宅飲みしている。まぁ何でもするって言ったし、男に二言はない!





「......先輩は私のこと、どう思ってますか?」


「......どうした突然」





いつになく後輩は悲しそうな顔をしていた。今日は何だか様子がおかしい、一体どうしたのだろうか





「どうなんですか?」


「如何って、良い後輩であり大切な友人でもある」


「大切って、どの位?」


「それは......」





考えたこともなかった。人の大切さの度合いなんて言葉にするのはたとえ文豪でも難しいだろう。これを何と表現すれば良いいのだろうか





「ホントに大切に思ってるんですか?」


「それは本当だとも。だが言葉にはできない、すまん」


「じゃあ行動で示して下さいよ」


「行動ってのは」






スッと後輩が取り出したのはたった0.01mmの壁。この壁を越えることが出来なければきっと後輩にとってそれは“大切じゃない”という意思表明になってしまうのだろう。其処でようやく彼女の気持ちに気がついた




「これ、は」


「......言わせないでください」




つまりそういうことなのだろう。いつからここまで俺は情けなくなってしまったのか、女性から先にこんなことをやらせるなんて。据え膳食わぬは男の恥、ここは俺の懐の大きさを示さなくてはいけないらしい





その日俺は年下の女性に屈服した。何せ人生初体験だ、致し方ないだろう。三十後半なのにDTかよだって?何とでもいうが良い、貞操を大切な人に捧げられたのだむしろ誇らしいわ。お互いに体力を使い切り電池が切れたおもちゃの様に意識が暗転した





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翌朝、腰の痛みと筋肉の悲鳴で目を覚ます。時間は既に十時を回っている。横には昨夜を共にした最愛の女性が俺の布団を剥ぎ取って寝ている。健やかな朝だ、まるで九時間程ぐっすりと眠ったあとの満足感




という事で変なルートを辿ったが無事後輩とのデートが幕を閉じたとさ。閑話休題







あとがき

筆者はDTなので恋愛もの書くの苦手だから性癖つめた

やっぱり純愛を......最高やな!


https://kakuyomu.jp/works/16818093085026557681

筆者の書きたいもの書いただけの物

評価しなくても良いからとりあえず読みたい人は読んでもろて

星は欲しい

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