第7話 冒険者ギルド、そして現実
「ここが冒険者ギルド」
クリスがそう言う目の前には、剣と杖のマークが描いてあり看板がかけてあった。
3人が冒険者ギルドに入ると、そこは酒場のような雰囲気であった。ガラの悪そうな冒険者がこちらを見て何かを話しているが、そんな事を気にせずユキは受付カウンターにスタスタと歩いていきクリスは少し怯えながらもヒエイと共にユキの後を付いて行った。
3人が受付カウンター前に着くと、ユキを見るなり受付のお姉さんが話しはじめた。
「ユキさんお久しぶりです」「今日はどのような要件で来られたのですか」
「この2人のギルド登録しに来たの」
ユキはクリスとヒエイの方を見ながらそう言うと、再び受付のお姉さんの方を向いた。
「そうですか、ではこちらの水晶に触れてください」
受付のお姉さんがそう言うと、クリスは「異世界によくある鑑定の水晶だ」そう思いながら、わくわくして水晶に触れた。すると水晶にステータスが表示された。
(水晶の表示)
ステータス
クリス
種族 人間族
クラス ?????
Lv1
スキル ?????
鑑定分析
一般常識Lv1
光魔法Lv1
言語理解
アイテムボックスLv1
魔力操作Lv1
称号 なし
罰罪 なし
水晶の台座にギルドカードをセットすると、カードに光が走り、ステータスが書き込まれた。
受付のお姉さんはクリスのステータスを見て不思議そうな顔をした。
「クラスがハテナの人は初めて見ますね」「聞いたことがありません」
受付のお姉さんはそう言うと、テキパキとヒエイのギルドカードを作成した。クリスとヒエイが思った異世界でのテンプレート的な展開は起きなかった。ギルドカード作成が終わると、ギルドカードをクリスとヒエイに渡して、受付のお姉さんは2人にギルドの説明をし始めた。
「冒険者のランクはGからSランクになり、ギルドカードはすべての街の入市税が免除となります」 「魔物を討伐するクエストを受けられるのはFランクになります」「GランクからFランクへのランクアップ試験は今すぐに受けられます」「そのほかの規約はこの手帳を見てください」
そう言って受付のお姉さんから渡された、手帳の中身を見た。
『ネットゲームのルールブックみたいな内容だな』
「うん、そうだね」
クリスはそう言うと手帳を閉じた。
「今からFランクへのランクアップ試験やりたいのですが」
「わかりました」「今、試験官を呼んできます」
受付のお姉さんはそう言うと、カウンターの奥に試験官を呼びに行った。しばらくすると受付のお姉さんはカウンターの奥から困った顔で戻って来た。
「すみません今、試験官をできる者がサボっていなくて」
受付のお姉さんが困った顔でそう言うと、それを聞いたユキが名乗りを上げた。
「私がやりますよ」
すると受付のお姉さんは驚いた。
「でも、ユキさんは引退したんじゃ」「それにブランクもありますし」
受付のお姉さんは心配をして止めたが、ユキは受付のお姉さんを説得した。
「これでも」「毎日鍛錬を欠かしませんし」「ランクの判断は出来ますよ」
ユキがそう言うと、受付のお姉さんはため息をついて諦めた。
そうして受付のお姉さんに連れられて、ギルドの闘技場に向かった。そこは、それほど広くない場所であった。闘技場に着くなりユキは闘技場の備え付けの武器の中からダガーナイフを両手に備えいつもの雰囲気と違うユキに、クリスとヒエイはいつもにない緊張感だった。するとユキが聞いた。
「どっちから始める?」
「私がやります」
クリスがそう言うと、アイテムボックスから聖女の宝剣を取り出し腰に備えた。
クリスとユキは闘技場の階段を上がりステージの上に立ちお互いの顔を見合わせる。
一方ヒエイはその光景を心配そうに闘技場の端で見ていた。
「お二方は準備をしてください」
受付のお姉さんがそう言うと、ユキは
クリスは、腰に付けている剣を抜いて、うる覚えの知識で上段の構え、剣を右斜め上へ振り上げる。
「双方準備はいいですか」「ランクアップ試験」「はじめ」
受付のお姉さんの掛け声とともに始まった。
「ライトスラッシュオーラ」
剣に光が纏い、クリスは剣を斜めに切り下ろした。すると空を切るように光の斬撃が飛ぶ。
ユキは光の斬撃を左右に避けつつ素早く近づいてきた。
「くっ、素早い」
クリスは焦りユキ目掛けて剣を振り、複数の光の斬撃を飛ばした。
しかしユキはいとも簡単に素早い動きで光の斬撃を次々と避け近づいてきた。
ユキはクリスの攻撃を避けつつ、冷静にクリスの動きを分析していた。ユキの経験が、この若き冒険者の潜在能力を見抜くのに役立っていた。そして、彼女はクリスに重要な教訓を与える準備ができていた。
そしてユキはクリスの死角に入り首にダガーを突きつけた。
クリスは突きつけられたダガーに冷や汗をかき。
「そこまで」
受付のお姉さんの掛け声とともに勝負が終わるとクリスはその場に座り込んだ。
するとユキは真剣な顔で言った。
「レベル1でそオリジナル魔法の攻撃は悪くないけど、焦りすぎだよ」「冷静になって落ち着いて判断しないと死ぬよ」「あと、避けられた時の事も考えて技をいくつか用意した方がいいよ」
クリスはユキの言葉に悔しそうな顔をした。
「今のままだと確実にCランク止まりだよ」
ユキはそう言うと、表情をすぐに切り替え笑顔で言った。
「とはいえ、これだけ動ければ合格だよ」
そう言ってユキはクリスに手を差し出し、クリスはその手を握って立つと、小さい声で言った。
「ありがとう」
そしてヒエイと入れ替わるようにステージを降りた。
ヒエイはクリスの事が心配になりながらもステージに立つと、アイテムボックスから銃(M1911―コルト・ガバメント)を取り出して、『弾薬無限』で弾が10発入っているマガジンを作り出し防弾チョッキのポケットに入れた。
その光景をクリスは「頑張れ」と思いながら見ていた。
「お二方は準備をしてください」
受付のお姉さんがそう言うと、ユキは先ほどと同じ構えをした。
ヒエイは両手で銃を握り、銃を構えてユキの肩を狙った。
本来であれば素人の銃は当たりもしないのだがヒエイは日本にいた頃、海外で銃を撃った事のある経験者なのだ。
「双方準備はいいですか」「ランクアップ試験」「はじめ」
受付のお姉さんの掛け声とともに始まり。
ヒエイはユキに弾を3発、音を立てて発射した。
ユキは弾をダガーで軽々しく切って見せてヒエイに素早く近づいた。
残りの弾をユキに狙いを定めて撃つヒエイ、それを避けつつダガーで弾を切るユキ。
『普通、避けられないだろ』
そんなことを言って焦りつつも空のマガジンを床に落とし、防弾チョッキのポケットから新しいマガジンを取り出し、素早い手つきでリロードをしたが、すぐそこまでユキが迫ってきた。
ユキの反応速度は彼の想像を超えていた。ヒエイは焦りながらも、次の一手を迅速に考えた。
『
咄嗟に銃剣のナイフを作り出し、ユキのダガーの攻撃をナイフで防いだ。
しかし力で押し負け、後ろに吹っ飛ばされ倒れた。
すかさずユキはダガーをヒエイの首に突きつけた。
「そ、そこまで」
受付のお姉さんの声で試合が終わると、ユキがダガーをどかすとヒエイは立ち上がった。
ユキは笑顔で行った。
「最後のナイフで攻撃をナイフで防ぐ機転は良かったよ」
しかしすぐに真剣な表情になった。
「魔法付与もされて無い普通の金属の礫が通用するのは精々Cランクまでだよ」「だから魔法付与を覚えたほうがいい」
ユキはそう言うと笑顔で言った。
「試験は合格」
そうしてクリスとヒエイは無事合格した。しかし素直に喜べずに現実を突きつけられる事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます