第5話 目指せ高校生アイドル!

ライブをして、親を説得……確かに。高校生アイドルになりたいのなら、いい方法じゃん!


「そうだね、その線で行こう!ナイス、笑夏!」


あたしがそう言うと、笑夏はえへへ……というように笑った。


「んー、でも……練習場所とかどうしよう。曲作りとかもしたことないし……」


そう、そこが問題なのだ。でも、笑夏はにっこり笑って、


「大丈夫、練習場所は学校の教室をどこか借りよう!お母さんには学校で勉強してから帰るって言うわ。嘘をつくのは心苦しいけど、それでもやりたいもの。それに、別の時間にきちんと勉強すれば大丈夫だろうし。あと、作曲の方は私、出来るかも。ほら、私、小さい頃からピアノを習っているでしょう?明日は土曜日だからレッスンがあるし、その時にでも聞いてみるわ!」


と言った。

そっか、学校で練習……どのみち学校にハイドラ出場の許可は貰わないといけないから、ちょうどいいよね。


でも、少し気がかりなことがある。それは、


「笑夏、作曲してくれるの?出来る?そりゃ、あたしは出来ないけどさ」


っていうこと。でも、笑夏は、


「出来るかどうか、じゃないわ。やるかやらないかよ。それに、今までハイドラに出てきた人たちはみんなやってるもの、きっと出来ると思うわ」


と力強く言ってくれた。

ああ、笑夏は本当に、やりたいと思ってくれてるんだな。

そう思ったら何だかとても嬉しくなって、あたしは笑夏をぎゅーって抱きしめてしまった。


「ふふ、どうしたの、幸ったら。それに、まだまだ考えることはいっぱいあるわよ。作詞、衣装、振り付け……衣装代もかかるし…」


と指をおりながら数える笑夏。あ、あたし、作詞と振り付けならいけるかも。


「ね、笑夏。あたし、作詞と振り付けなら出来るかも。衣装は作れないけど……」


あたしの言葉を聞くと、


「ならお願いしてもいい?衣装は私がどうにかするわ!幸には、うん……」


と笑夏は言った。てか、途中から苦い顔してたなぁ。


まあ、大方アレのこと思い出したんだろうな……


あたしは壊滅的に裁縫が出来ない人で、学校の授業では毎度、何を作ったのかわからないものを作りあげていた。


一番酷かったのは中学二年生で作ったナップサックみたいなやつ。小学校で作ったやつより難しくなってたんだけど、みんなはフツーにいい感じだった。

でも、あたしのは……思い出したくもない。なにせ、ナップサックだったはずなのに、布を切ること・縫うこと・出てきた糸を切ることなど、たくさんの工程で失敗しすぎて……結局、一人だけ巾着。しかも重要なのは、どう足掻いてもナップサックにはなれないしあたしの腕じゃ作れないからって、残った布で先生が作った巾着。あたしは布を悲惨な状態にしただけだ。


当然、成績は最低評価の1……と思いきや、どうにか座学と課題で頑張り、お情けで3を貰ったのだ。


先生にも「ここまで酷い生徒は見たことがないわ……」と溜息をつきながら言われる始末。


まーそりゃ、衣装なんて作れっこないよね!だから歌詞と振り付けで頑張ろう!うん、そうだ!


二人して苦い顔を浮かべながら話す。


「とりあえず、今日のところはそれくらいにしておきましょう。あ、幸。幸さえ暇だったら、日曜日、二人で古着屋さんとかに行こう。衣装を一から作るのはさすがにお金がかかるから、そういう所で買ってアレンジすればいいと思うの」


「そっか、なるほど!あたしは暇だからOKだよ!あ、歌詞、とりあえず考えとくね!出来たら送るわ!」


「はーい!なら私、そろそろ帰るね。借りている本の延長手続きをしに図書館に行くって家出てきたから、あんまり遅いとお母さんが心配しちゃう」


そう言いながら、急いで持ってきた本を持ち、立ち上がる笑夏。その姿を見ながら、あたしはいつの間にか笑顔になっていた。

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