『徘徊』第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌の部 / 二十首連作】

善光大正

第1話

呼び鈴の音で目覚める朝八時 荷物受け取りそして寝床へ


水道屋玄関埋めるマグネット 集めて何も得ることは無く


音もなくテレビ流れる暗がりに 迫る気配に家出迫られ


目的もなきまま歩くその先は 会社に向かう最寄り駅まで


守られる駅改札のツバメの巣 足元白く散る鳩の糞


すし詰めの電車の中で目をつぶり ドナドナドナと流れ行くなり


静かなる電車で一人話す婆 緊張感と低音ノイズ


すれ違う道行く人の様々は 誰かと歩む人の多さよ


コンビニのワンオペ店員そして俺 心ゆくまで店を彷徨い


団地建つ辺りはどこか灰色で 公園内にカラスが数羽


遅い朝パンを貪る空の下 足元見ればスズメが一羽


高架下人気のあらぬ暗がりに 探偵事務所ビラが貼られり


バス停の誰かが置いたパイプ椅子 朽ちたクッション誰も座らず


ラーメン屋夢を語りし厨房と ビジネス語るカウンター席


持て余す時間のはざま追いやられ 袋小路に本を読みふけ


会食を済まし散れ散れ帰路に着き いつも手元にあるのはスマホ


黒ずんで涙を流す雲の群れ 心もようは空の果てまで


鳴りやまぬ雨はないなど言うならば 病まぬ人などないと言えよう


風呂上がりコンビニ向う暗い道 買い物がてら外気浴する 


鎮まれよ寝付けぬ夜に日が変わり 今日を思えばいずれ明日へ

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『徘徊』第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌の部 / 二十首連作】 善光大正 @yoshinoh

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