ブッタ転生す

@kuwagatasann

第1話 2度目の目覚め

ブッダ目覚めし者

そんな彼にも死は訪れる。

教団は今も膨張を続け、その数は万に迫ろうとしていた。ある山を越えるため民家に宿を求めたブッタ一行だったが、托鉢した食物にあたりブッタは命を落とした。

きのこであったと言われている。いわゆる涅槃である。

伝承や仏典では、解脱し天上に帰ったとされるが、


実はそうではなかった。


それを、よく思わない存在がいた。

悟りを得たばかりのブッタに、その悟りを広めるように説いた梵天ブラフマンである。


それは、あまりにも突然の別れであった。


カンチェンジュンガの山麓の、さびれた農村には招かれ奇妙なきのこを食べてた

そう、それは神のよって決められた定である。


死自体はないも恐れるものはない。

悲しいのだ


皆が悲しむのが見てわかる。

それが悲しかった。


気がつくと、随分と周りが静かになっていた。

暖かく、心地よい


「ブッタよ。起きなさい」

どうやら眠っていたようだった。

目の前には、見覚えのある老人が1人いた。

いや、奥にもう1人随分豪奢な服装の若者がいる。


「ここは? ブラフマンよ」


「私がわかるか」老人は目を見開く。

「ええ、私に悟りを解くように仕向けた大宇宙です。」


奥の若者がブラフマンの声を心配するようにこちらを伺っている。


「大宇宙か、それは面白い。そこまでわかっているなら話は早いな」

「その大宇宙が、またお前にお願いに来たわけだ」


「また、悟りを説けというのですか』ブッタは少し呆れた。もうそれはできないのだ。

「そうだ」


「私は、死に解脱しました。それは悲しいことでした。」ブッタは悲痛な泣きそうな顔をしていた。


「ああ、悲しいことだ。ただ、お前は解脱していない。」ブラフマンは当たり前のことのように言った。


「それでは、また弟子達のもとへ行ける日がくるのでしょうか?」ブッタは解脱の成らなかった後悔などないかののように朗らかであった。


「いや、もうあの星は大丈夫だろう。お前がいなくてもあれだけの弟子がいるし、まだまだ、優秀なものも生まれるだろうからな。お前はまた別のところで働いてもらう。」


「後ろのアイツのところだよ、いい奴すぎてちょっと問題があってな。」

ブラフマンは心配そうに見つめる貴族の若者を指差す。


「問題?」


「まあ、そうゆうことは行ってのお楽しみだよ」ブラフマンは笑う。


「私はまだ行くとは言っていませんが」


「おいおい、お前は解脱してないんだから、そんなこと言っていいのか?畜生道に堕ちるぞ」


「いまだに信じられない。もはや、未練なぞ」ブッタは困惑していった。


「お前、きのこで死ぬなんてなんて後悔しただろ?」ブラフマンはブッタの顔を覗き込むようにしていった。


「!?まさかあなたが...」ブッタは目を見開く


「焦ったよ、お前の年齢であんな冬山に篭ろうとなんて、死んじまったらこっちの計画が総崩れだ。だから少し細工した」

ブラフマンはまるで、子供が悪戯を打ち明けるように笑った。


「それが、神と呼ばれるものの所業ですか」ブッタは真剣である。


「何言ってる。そんなことは俺たちの勝手だ。なんとか上手くいてお前は、めでたく輪廻の輪に取り込まれたままだ」


「それでどうすればいいのですか?」ブッタの目にはもはや困惑は無くなっていた。


「さすがは目覚めたもの(ブッタ)だ。話が早いのは助かる。」


ブッタにしても、これ以上問いただしたところで結果は変わらない。死んだ上に解脱も成らなかった。ブラフマンは宇宙の意思であり、私は一魂でしかない。


「熱さは燃える火です。怒りは燃料 もはや私には燃料はありません。」


「お前は、まさかここまで行くとは俺も思っていなかった。だから、お前のその悟りで俺たち天界も救ってほしいのさ」


「神に説法でもすれば良いのでしょうか?」ブッタは冗談とも真面目ともつかない口調である。


「ははっ それもいいが、そうじゃない。神も色々いて、治める星も色々ある。後ろのアイツも神だが困った状況になってな。」


後ろの若者は貴族ではなく神らしいが、その威光は感じることはできない。服装自体は豪華であるが、存在感がない。


「神同士でそのような繋がりがあるとは」


「なに、俺は出世していろんなやつを面倒見なくちゃいけないのさ。お前のおかげで、ラニアケア大銀河団神に就任したのさ。」


「ラニア毛あだい...」ブッタはポカンとしている


「なにはともあれだ、お前はアイツのところで、その持ち前の悟り力で、民を救うんだ」


急に眠気がおとづれる。


「いくらなんでも強引すぎますよ」ブッタはほとんど言うこともできづに眠りについた。


ブッタ気がつくと森にいた。見たこともない黒い森であった。

先が目ないほど高い木々であった。

下草はほとんどなく、絨毯のように柔らかい。


しーっ寝静まったように静かで、インドの虫や獣でうるさい森とは違う。

そして何より、肌寒い。

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